呼吸が救う炎症と痛みのサイクル

荒川大輔

荒川大輔

テーマ:口腔機能発育・筋機能療法

こんにちわ。
名古屋市港区にあります、オリーブ歯科こども歯科クリニックです。


私たちの体は、表面からは見えにくい「炎」を抱えていることがあります。
それが「慢性炎症」です。
炎症と聞くと、風邪の熱やケガの腫れを思い浮かべる方が多いかもしれません。
そうした炎症は数日で収まる一時的な反応で、体を守るための大切な仕組みです。
しかし、慢性炎症は違います。
目に見える症状が乏しいまま、体の奥で小さな炎がくすぶり続け、長い年月をかけて健康をむしばんでいきます。


歯科医院における慢性炎症の代表は「歯周病」です。
歯ぐきの炎症が進行すると、炎症性物質が血液に乗って全身を巡り、糖尿病や高血圧、動脈硬化、心筋梗塞などと密接に関連することが分かっています。
肥満とも深く関わり、脂肪細胞から炎症性サイトカインが放出されることで、血糖コントロールの乱れや血管へのダメージが進みます。
つまり、歯周病と生活習慣病は「別々の病気」ではなく、どちらも慢性炎症を共通の根に持つ“同じ木の枝”だといえるのです。

一方で、呼吸もまた慢性炎症や痛みとつながっています。
口呼吸や浅い呼吸が続くと、自律神経のバランスが崩れ、体内の炎症反応を促すことが知られています。
呼吸が乱れると睡眠の質が低下し、回復力が落ち、炎症が慢性化しやすくなるのです。
その結果、体は痛みを過剰に感じ、慢性的な不調が悪循環のように広がっていきます。

近年の研究で、呼吸を整えることが炎症や痛みを和らげることが脳科学の研究でわかってきました。
2023年に発表された論文では、瞑想によって脳の「痛みを自分ごととして強める回路」が静まり、痛みを客観的にとらえ直せることが報告されました。
呼吸に意識を向けるだけで、痛みを過剰に増幅する脳の働きを抑えることができるというのです。
これは単なるリラックス効果ではなく、「慢性炎症と痛みのサイクルを断ち切る」科学的に裏づけられた方法といえます。

呼吸を意識することは、誰にでもすぐに実践できる健康法です。
背筋を伸ばして鼻から深く吸い、ゆっくりと鼻から吐く。
それだけのシンプルな習慣でも、自律神経が整い、体内の炎症を静める助けとなります。
こうした呼吸習慣は、子どもにとっては歯並びや口腔機能の発達に直結し、大人にとっては生活習慣病や慢性的な痛みの予防に役立ちます。

このように「呼吸」「歯周病」「生活習慣病」という一見異なるテーマも、実は慢性炎症という一本の糸で結ばれています。
そしてその炎症を抑えるために大切なのは、日々の小さな習慣の積み重ねです。
正しい歯磨きや定期検診、生活習慣の見直しに加え、呼吸や姿勢を意識することが、健康を長く保つための鍵になります。

当院では、お子さんの口腔育成や筋機能療法、予防歯科に力を入れています。それは歯並びを整えるためだけでなく、「呼吸の質」を育て、慢性炎症を防ぎ、全身の健康を守るためでもあります。
歯周病の早期治療や定期メンテナンスも、糖尿病や高血圧といった生活習慣病を遠ざける重要な一歩です。

「呼吸を整え、歯を守ることは、人生を守ること」。
目に見えない炎を抑えることこそ、これからの健康づくりの基本です。私たちはそのために、歯科からできることを全力でサポートしてまいります。

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荒川大輔
専門家

荒川大輔(歯科医師)

オリーブ歯科こども歯科クリニック

保険診療から先進的な自由診療まで幅広く対応、家族全員で通える地域のかかりつけ歯科医院です。全身の健康に悪影響を及ぼすお子さんの口腔機能発達不全症の治療に県内外から多くの患者様が通院しております。

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