歯科医から見たBLW(赤ちゃん主導の離乳)への考え方

荒川大輔

荒川大輔

テーマ:口腔機能発育・筋機能療法

こんにちわ。
名古屋市港区にありますオリーブ歯科こども歯科クリニックです。


今日はちょっと踏み込んだ話をさせていただきます。


最近よく耳にする「BLW(Baby-Led Weaning)」という言葉。
赤ちゃん自身が手づかみで食事に取り組むスタイルで、「食べる意欲を育てる」「食事を楽しむ力を養う」などのメリットが語られています。
育児スタイルの一つとして注目される一方で、歯科医の立場からは、いくつかの点に注意が必要だと感じています。

 

食べ物を自分でつかみ、自分のペースで口に運ぶ――その姿は、確かに子ども自身の自発性や好奇心を育てる素晴らしい場面に見えるかもしれません。
しかし、乳幼児期というのは、まだ口腔機能や消化機能が未熟な時期です。
そのため、専門家の評価や観察がないまま、調理を極力控えて大人と同じような食材を与えることには、私たちは慎重な立場を取っています。

 

調理とは、単に「味をつけること」ではありません。
本来の調理の意義は、食材をそのままの形ではなく、
【噛みやすく】【飲み込みやすく】【消化しやすく】整えることにあります。

硬すぎる食材は、まだ十分に育っていないあごの力や歯の数では処理できず、かえって丸飲みや誤嚥のリスクを高めます。
また、繊維質が強かったり、脂質やタンパク質が未加工のままの食材は、発達途中の消化器官にとって大きな負担になります。

 

実際、BLWを取り入れた家庭の中には「むせやすくなった」「食後に吐くことがある」といった声も見られます。
これらは単なる慣れの問題ではなく、【まだ未成熟な身体に対して無理に食べさせているサイン】である場合があります。

赤ちゃんの口は、食べる練習を通じて少しずつ育っていくものです。
「何をどのように与えるか」には、子どもが今どこまで育っていて、何にまだ不安があるのかを見極める視点が欠かせません。


私たちは、食べることを学ぶ時期において【安全性と段階性】を大切にしています。
それは、子どもたちの口腔機能や発達に日々向き合っている歯科医院としての経験でもあります。

もちろん、食べる楽しさや自立の芽を尊重する姿勢そのものには、大きな価値があります。
だからこそ、焦らず、発達に合わせてできることを見極めながら、食の経験を積み重ねていくことが、最も自然で安全な育ち方ではないでしょうか。

 

離乳期は、お子さんの“生きる力”の基礎が育まれるとても大切な時期です。
BLWというスタイルそのものを否定するつもりはありませんが、歯科医として、そして日々赤ちゃんと接する医療の現場として、
その安全性と確実性には丁寧な指導が必要だと感じています。

お子さんの食べ方や発達に不安があるときは、どうぞお気軽にご相談ください。
歯科からできる食育支援で、お子さんの「食べる力」をしっかりサポートいたします。

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荒川大輔
専門家

荒川大輔(歯科医師)

オリーブ歯科こども歯科クリニック

保険診療から先進的な自由診療まで幅広く対応、家族全員で通える地域のかかりつけ歯科医院です。全身の健康に悪影響を及ぼすお子さんの口腔機能発達不全症の治療に県内外から多くの患者様が通院しております。

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