コロナ融資との付き合い方
銀行は融資先企業に対して「信用格付」を行い、その評価を基に融資の方針を決めています。
この格付の主な基準は、毎年提出される決算書の内容です。特に貸借対照表(BS)の評価は、365日あるうちの決算日の1日分のデータによって決まるため、早めの対策が重要です。
本記事では、銀行が決算書のどこを見て融資判断をしているのか、そして決算日前にやっておくべき具体的な対策について解説します。
1. 銀行が特に注目する指標とは?
銀行は決算書の中でも特にBSを重視し、企業の財務健全性を分析します。
中でも、以下の3つの指標が特に評価のポイントとなります。
(1) 当座比率(短期の支払い能力)
計算式:
(流動資産 - 棚卸資産) ÷ 流動負債 × 100
ポイント:
100%以上が望ましい。
売掛金や現預金の割合が高いほど良い評価につながる。
(2) 自己資本比率(財務の安定性)
計算式:
自己資本 ÷ 総資本 × 100
ポイント:
30%以上が理想的。
借入金に頼らず、自己資本をしっかり確保しているかが判断基準。
(3) 経常収支比率(安定的な利益創出能力)
計算式:
経常利益 ÷ 売上高 × 100
ポイント:
安定して黒字を確保できているかが評価される。
利益を適切に確保し、キャッシュフローを良好にすることが重要。
これらの数値が悪化すると、融資条件の引き締めや金利の引き上げなどの影響を受ける可能性があります。
2. 決算前にやっておくべき具体的な対策
決算書の評価を良くするためには、以下のような具体的な対策を実行することが有効です。
(1) 棚卸資産を減らす
棚卸資産(在庫)は、決算書上では資産として計上されますが、過剰な在庫はキャッシュフローを圧迫し、評価を下げる要因になります。
対策:
決算日前に不良在庫を処分し、滞留在庫を減らす。
仕入れは決算日の翌日以降に調整し、在庫が膨らまないようにする。
指標:
棚卸資産回転率(売上原価 ÷ 棚卸資産)を高める。
棚卸資産回転日数(棚卸資産 ÷ 1日あたりの売上原価)を短縮する。
(2) 売掛金を極力回収し、現金化する
売掛金が多いと、キャッシュフローが悪化していると見なされるため、決算日前にできるだけ回収を進めましょう。
対策:
取引先に対し、決算前の回収を促進する。
可能であれば、早期回収の割引制度を活用する。
メリット:
現金資産が増え、当座比率が向上する。
銀行からの評価が高まり、資金調達が有利になる。
(3) 買掛金・未払金の支払いを決算後に調整
決算日前に買掛金や未払金を先行して支払ってしまうと、流動負債が減り、BSの見栄えが悪くなります。
できるだけ決算日以降に支払うよう調整しましょう。
対策:
取引先との支払いスケジュールを見直し、決算日以降の支払いに変更する。
メリット:
流動負債が増加し、財務バランスが安定する。
(4) 代表者貸付金を減らす
代表者貸付金(オーナーが会社から借りたお金)は、銀行にとって大きな懸念材料です。
特に信用保証協会はこの項目を非常に嫌うため、決算日だけでも減少させておくことが重要です。
対策:
代表者が他の個人資産を活用し、一時的にでも返済する。
役員報酬の適正化や配当を利用して、貸付金を減少させる。
メリット:
銀行からの信用が向上し、融資審査で有利になる。
3. 早めの対策が未来の融資に影響を与える
銀行は、毎年の決算書を基に信用格付を行い、その結果を翌年度の融資判断に反映させます。
したがって、決算直前になって対策を考えるのではなく、年間を通じて財務管理を意識することが重要です。
特に資金繰りの改善や借入金の適正化は、長期的な視点での計画が必要です。決算書の評価が悪化すると、翌年以降の融資が厳しくなり、金利の引き上げや融資枠の縮小などの影響を受ける可能性があります。
まとめ
銀行の信用格付は、決算書の中でもBSを中心に行われ、特に当座比率・自己資本比率・経常収支比率が評価のポイントになります。
決算日前には、棚卸資産の整理、売掛金の回収、買掛金の調整、代表者貸付金の削減といった対策を講じることで、財務の見栄えを改善できます。
毎期安定して利益計上することは重要ではありますが、1期程度の赤字計上であればさほど気にしなくても大丈夫です。
また、期中に月次試算表などを定期的に提出をしますが、これをもって信用格付区分が変わるということはありません。
それくらい決算書というものは重要なのです。
資金調達を有利に進めるためには、決算日だけでなく、年間を通じた財務管理が不可欠です。
企業の財務体質を強化し、銀行との信頼関係を築くために、早めの準備を心がけましょう。