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機能改善を目指し、リハビリに特化した施設を運営

障害者、高齢者の姿勢と動作をサポートするプロ

長坂和樹

長坂和樹 ながさかかずき
長坂和樹 ながさかかずき

#chapter1

パーキンソン病を患った母親を助けるためにリハビリ事業をスタート

 「当施設の利用者の半数は、脳梗塞やパーキンソン病などの後遺症や障害をお持ちの高齢者です。パーキンソン病のリハビリに用いられるプログラムを高齢者用にアレンジし、一人一人に合わせた運動を提供することで症状の緩和を目指しています」

 そう話すのは、リハビリテーションに特化したデイサービス施設「若彦の郷」を運営する「晃秀の和」代表の長坂和樹さん。施設には約100人が登録し、週2〜3回のペースで通所しています。

 「大学生の時に母がパーキンソン病を発症したことが、介護業界に入ったきっかけです。身体のこわばりや手足の震えなど、病を患う母親を支えるため、卒業後は病院の介護職として勤務し、経験を積みました。さらに専門性を高めるために病院を辞め、医療福祉関係の専門学校で勉強し、理学療法士の資格を取得しました」

 その後3年間、介護施設に勤務しながら独立準備を進め、2013年に創業。実務の中で、現場での取り組みを科学的に分析・評価する必要性を感じ、施設運営の傍ら大学院に進みました。リハビリと自律神経をテーマに5年間かけて修士課程を修了し、学びと実践を重ねてきました。

 「歩行や立ち上がりがスムーズになったことは感覚的に分かりますが、それらが自律神経症状にどのような影響を及ぼすか、体温や心拍などを測定して解析することも重要です。というのも、利用者さんはそれぞれ症状が異なります。情報や知識が多ければ多いほど、適切な助言や提案ができるようになるので、日々の研鑽は欠かせません」

#chapter2

転びにくい身体づくりをコンセプトに、運動プログラム「若彦の郷コアストレッチ®」を構築

 長坂さんの施設では、当初1日滞在型のリハビリサービスを提供していましたが、2015年から半日型に変更しました。

 「農繁期などにおじいちゃん、おばあちゃんを1日中預かり、食事や入浴も済ませてほしいという家族のニーズはあります。お気持ちはよく分りますが、それは別の事業者にお任せして、弊社はリハビリだけに集中しようと決めたからです」

 2期目に黒字となっていた事業は、半日型のリハビリ施設に転換後3、4期目は赤字に転落。売り上げが3分の1に減り、職場を去るスタッフもいたといいます。

 「とても厳しい時期でした。でも、リハビリの大切さを知ってほしいし、症状を和らげて、ご自宅での生活を安全に、安心して過ごしてほしいという思いはどうしても譲れませんでした。私どもの真価を問われた時だったと思います」

 自身の方針を貫いた長坂さんは、「高齢者を転びにくくする専門施設」をコンセプトに、体づくりにも尽力。体幹部分を大きくひねりながら伸ばしたり、浴槽をまたぐ動作をイメージして左右、前後にステップを踏んだり、13種類の動きを取り入れた独自の運動プログラム「若彦の郷コアストレッチ®」を構築しました。

 「立ち上がるのが楽になった」「安定して歩けるようになった」といった評判が広がり、利用者が増加。PR活動やコミュニティーづくりも行った結果、5期目から黒字に回復したそうです。

 「経営が大変だった時も離れず支援してくれた方々や、『ここがいいよ』と他の人に紹介してくれた方々のおかげです」と感謝を語ります。

長坂和樹 ながさかかずき

#chapter3

「リハビリ難民」をサポートするため、自費によるリハビリも実施

 「若彦の郷」では、保険を使わない自費によるリハビリも実施。20代から80代が利用しています。

 「脳梗塞などで入院しても、身体機能の回復訓練が不十分なまま自宅に戻らなくてはいけない、いわゆる『リハビリ難民』と呼ばれる方が大勢います。1人でも多くの方に希望を持っていただけるよう、お力になりたいですね」

 長坂さんの施設では、転倒が心配で温泉に行くことを我慢している人と一緒に入湯したり、ゴルフ好きの人のラウンドに同行するなど、やりたいことをサポートしています。あきらめることを減らし、生活に楽しみを取り戻してほしいという願いからです。

 「私は、母親と一緒にリハビリの現場を見てきた中で、皆さんと心の距離を縮めることが大切だと痛感しました。しかしそれは、慣れ慣れしいこととは違います。節度ある振る舞いを忘れず、お相手を尊重することを心掛けています」

 利用者と家族に満足してもらえるよう設備を整えたり、コミュニケーションの質を高めたり。ハード面とソフト面の充実に力を注いできた長坂さんですが、リハビリ事業が抱える課題が多く、一個人、一企業でどこまでできるか考えてしまうことも。

 「悩ましい時は、理学療法士、研究者として、またパーキンソン病の母親を介護した者だからこそ『分かることがある』と自らを鼓舞しています」

 2021年、施設利用者1号であった母が他界。母親の口癖だった「人の役に立てるような人間になりなさい」という言葉を胸に、リハビリの可能性に挑み続けます。

(取材年月:2022年4月)

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専門家プロフィール

長坂和樹

障害者、高齢者の姿勢と動作をサポートするプロ

長坂和樹プロ

理学療法士

株式会社晃秀の和

理学療法士の資格を持ち、パーキンソン病を患った母親を介護した経験や、大学院で学んだ知識を活用して、一人一人に合わせた運動療法・物理療法などのリハビリメニューを提供。

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