親子や夫婦など人間関係に関わるカウンセリングのプロ
伊東真理子
Mybestpro Interview
親子や夫婦など人間関係に関わるカウンセリングのプロ
伊東真理子
#chapter1
富山市にある「こころの相談室とやま」は、臨床心理士である伊東真理子さんがカウンセラーを務める私設のカウンセリングルーム。
伊東さんは乳幼児健診での心理相談、小児科では母子合同面接など数多くの現場で、さまざまな悩みを抱えた親子と向き合ってきたカウンセリングのプロです。また、大学の看護学科では「看護と臨床心理学」の非常勤講師を、自治体やPTAが主催する「子育て講座」で講師を務めるなど多方面で活躍しています。
「初回のカウンセリングでは、じっくりと相談者のお話に耳を傾けることを心がけています。『どんなことで悩んでいるのか』『どんな育ちの背景を持っておられるのか』など、まず相談者と周囲との具体的な関り合いをお尋ねしながら、悩みの由来を探っていきます。このとき相談者の気持ちを断定せず、必ず『こう思っていらしたのかもしれませんね』と、相手の気持ちを推し量りながら声掛けをするようにしています」
特に、伊東さんは不登校や発達障碍に関する悩み相談の経験が豊富。そのほか、意外に多いのが夫婦問題だそうです。
「例えば、『子どもが言うことを聞かない』と子育ての相談に来られた方の話を聴いていくうちに、実はパートナーにイライラしていて、つい子どもに八つ当たりしている現実が浮かび上がってくることがあります。このように、悩みの原因が別のところで見つかることもあるのです。私の役目は、当事者だと気づきにくい悩みの背景や要因をお話の中から一緒に探しだしていくこと。時には、第三者の視点からアドバイスして、問題解決のお手伝いをさせていただくこともあります」
#chapter2
伊東さんは教員だった父の影響で、「他者のために、少しでも役に立てる自分になりたい」と教育の道を目指すことに。教育学部で小学校、中・高校の社会科、養護教諭の教員免許を取りましたが、「このままでは力不足かもしれない」と思い悩み、日本女子大学大学院へ進学しました。この大学院生時代は、伊東さんの後の人生を大きく変える契機となります。
「大学院で出会った『児童発達研究会』は、子どもの生涯発達について縦断的研究に取り組んでいる日本でも数少ないグループでした。恩師の古澤頼雄先生は『人にはその人なりの人生があるという長期的な視点を持ちながら、目の前にいる相手を誠実に理解しよう』とおっしゃる臨床家のような発達心理学者でしたね」
また古澤氏は「大人の心的展開なくして、子どもの心の成長はない」と言い、関わるときに、常に子どもだけをみるのではなく、自分自身を含めた周囲との関係性を観察するようにと教わったそうです。
「研究会では本や講義から知識を得るだけではなく、毎年開催されるキャンプで、自分と他者との関わりを体験します。子どもたちやスタッフと『共にある』時間を過ごす中で体験したことは、今のカウンセリングスタイルの基礎になっています」
教育と臨床心理学の分野に明るい伊東さんは歴史も好きで、相談者のこれまでの「行き来し方」について、一緒に振り返りながら、当時の社会情勢や環境なども交えてアドバイスをします。
また、「乳幼児から60代まで幅広い年代の方と関わってきたので、人生という長いスパンを頭のすみに置いて相談に乗ることができるのは、私の強みの一つだと思います」と伊東さん。
#chapter3
長年、大人や子どものカウンセリングに携わってきた伊東さんは、小学校や中学校のスクールカウンセラーの仕事にも従事しています。
「人々が過去を振り返るとき、学校の先生とは違い、カウンセラーはあまり記憶に留められない存在かもしれません。相談に来ていた生徒さんでも、それを乗り越えてしまうと、自分には悩んでいた負の部分があったことを、すっかり忘れてしまうものです。それこそが健全さの証しですから。日陰に咲く花がカウンセラーだとしても、目の前に悩んでいる方々がいる限り、その人の人生の、黒子としての役目を果たしていきたいですね」
伊東さんのカウンセリングルームは、神通川を臨む静かな部屋。3カ所の相談室にはゆったりと話ができるソファ席や、おもちゃを用意したキッズスペースもあり、小さな子ども連れでも安心して来談できます。
「年の功ではありませんが、これまでさまざまな人生経験を積んできましたので、お役に立てることも多少あるかと思います。どうぞ、お気軽に足を運んでください」と柔和な笑みをみせる伊東さん。
「このカウンセリングルームは、自分の培ってきたことを生かして『少しでも誰かのお力になりたい』と開室した、私の集大成の場所です。相談にいらっしゃった方に丁寧に向き合って、『心が軽くなりました。ありがとうございます』と言ってもらえるようなお付き合いを、これからも続けていけたらうれしいですね」
(取材年月:2021年4月)
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Profile
親子や夫婦など人間関係に関わるカウンセリングのプロ
伊東真理子プロ
臨床心理士
こころの相談室とやま
臨床心理士歴30年以上。乳幼児健診の子育て相談、小児科の親子面接による発達相談、精神科での大人の心理療法など多様な現場で培ったこれまでの経験を生かし、「今・ここで」出会っている来談者に寄り添います。
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