面接官は本音を見抜いている──2万人を面接した人事のプロが解説する、評価される人の"3つの基準"

細川晃男

細川晃男

テーマ:採用・人事

「志望動機が、うまく言えた気がしない」──面接のあとに、そう感じた経験を持つ方は少なくありません。本当は「年収を上げたい」「もっと良い環境で働きたい」という気持ちがあるのに、それを口にするのは憚られて、取り繕った志望動機をつくってしまう。けれど面接官は、その取り繕いをなぜか見抜いているように感じる──。結論から申し上げると、その感覚は正しいものです。面接官は、候補者の本音をかなりの精度で見抜いています。ただし、それは「だから落ちる」という話ではありません。私たちUnitas(ユニタス)は、元リクルート人事責任者として2万人超の面接に携わった経験をもとに、求職者と企業の双方を支援しています。本コラムでは、採用する側が面接で本当に評価しているポイントを、人事コンサルタントの視点から3つの基準に整理して解説します。
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なぜ面接官は「本音」を見抜けるのか──評価者側の視点

採用面接において、面接官は候補者を「落とそう」として向き合っているわけではありません。ただ、何千人・何万人と面接を重ねてきた目には、候補者が「準備してきた言葉」と「本当に感じている言葉」の違いが、自然と見えるようになっていきます。視線の動き、語尾の置き方、言葉を選ぶときの一瞬の間。そうした小さなサインの積み重ねで、本人が意図せずとも本音が滲んでしまうのです。これは裏を返せば、どれほど志望動機をきれいに取り繕っても、本音は伝わってしまうということでもあります。であれば、隠すための努力にエネルギーを割くより、本音を筋道立てて語る準備に振り向けたほうが、結果として評価されやすくなります。

評価される人の基準①|本音に「筋道」を乗せられるか

たとえば「年収を上げたい」という本音。これをそのまま口にすれば、たしかに評価は厳しくなります。しかし、同じ本音でも次のように語られると、受け取り方は大きく変わります。「自分の成長は、誰かへの価値になり、それが売上となって、最終的に給与として返ってくる。だから年収にこだわることは、自分の価値を磨き続けることと同じだと考えています」本音そのものは何も変わっていません。変わったのは、その本音に、自分なりの解釈と筋道が乗っているかどうかだけです。面接官が求めているのは、きれいに整えられた志望動機ではなく、本音を自分の言葉で説明できる力です。これは小手先のテクニックではなく、「自分は本当は何を大切にしているのか」を言語化する作業に他なりません。

評価される人の基準②|「なぜ?」の深掘りに耐えられるか

面接で「なぜ?」「それはどうして?」と何度も掘り下げられ、詰められているように感じた経験を持つ方は多いはずです。しかし、面接官側の意図は詰問ではなく、「候補者本人の言葉」が出てくるまで待っている時間です。最初に返ってくる志望動機の多くは、準備してきた模範解答です。二度目の答えも、まだ想定の範囲内にあることが少なくありません。ところが三度、四度と掘り下げていくと、準備が尽きて、その人自身の経験に紐づいた言葉が立ち上がる瞬間があります。面接官が待っているのは、まさにこの瞬間です。ですから「なぜ?」を重ねられたとき、慌てて別の用意した答えを出すよりも、少し沈黙してでも自分の言葉を探すほうが、評価につながります。

評価される人の基準③|過去・現在・未来が1本の軸で繋がっているか

採用する側が最も神経を使って見ているのが、過去・現在・未来が1本の軸で繋がっているかという点です。これは「入社後に定着し、活躍してくれるか」を見極めるうえで、最大のチェックポイントになります。注意したいのは、これは職種や肩書きの一貫性を指すのではない、ということです。たとえば、営業事務として顧客サポートを担当していた方が、「自分で直接提案したほうが、もっと価値を届けられる」と感じて営業職へ転身したとします。職種は変わっていますが、「顧客に価値を届けたい」という軸が原体験に紐づいて通っています。面接官が評価するのは、こうした転機ごとの「自分なりの理由」です。逆に「なんとなく良さそうだったから」という受動的な動機が並ぶ経歴は、原体験が見えないため、評価が難しくなります。

採用する企業側は、ここで「相性」を測っている

ここまでは求職者の視点で解説してきましたが、採用支援の現場に立つと、企業側の事情も見えてきます。企業が抱える採用課題は「良い人を採れない」だけではありません。「採用できても、すぐに辞めてしまう」という定着の問題に悩む企業は数多くあります。だからこそ採用側は、スキルや経歴の華やかさ以上に、「この人の軸は、自社で働き続けられるものか」という相性を慎重に見極めようとします。求職者にとって面接は「選ばれる場」に感じられますが、本質的には候補者と企業がお互いの相性を確かめ合う場です。取り繕った言葉より、自分の言葉で語られた本音のほうが、この相性の確認には役立ちます。本音を語ることは、入社後のミスマッチを防ぐ、あなた自身のための行為でもあるのです。

一人で軸を言葉にするのが難しい理由

ここまで読んで、「では自分の軸とは何だろう」「うまく言語化できる自信がない」と感じた方もいるかもしれません。それは自然なことです。自分のキャリアの軸を一人で言葉にするのは、想像以上に難しい作業です。自分の履歴書が転職マーケットで強みと見られるのか弱みと見られるのか、比較対象がなければ判断できません。原体験もまた、日常に埋もれていて、自分では気づきにくいものです。私たちが転職相談を受けていて実感するのは、相談に来られる方の多くが、まだ転職するかどうかを決めていない段階で来られるということです。「なんとなくこのままでいいのか分からない」という状態で構いません。むしろその段階で一度、自分の市場価値を客観的に知っておくことが、後の選択を大きく助けます。一人で考え込むと、どうしても堂々巡りになります。客観的に見てくれる相手と30分でも話してみるだけで、霧が晴れることは少なくありません。もし今、自分の本音や軸の言語化に迷いがあるなら、一人で抱え込まずに、まずは話してみるところから始めてみてください。
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細川晃男
専門家

細川晃男(人事コンサルタント)

株式会社Unitas

離職歴やブランクなど、転職に不安を抱える人の軸づくりを支援。元リクルート人事部責任者として2万人超と面接してきた経験を生かし、企業の採用課題にも対応。求職者と企業の双方に寄り添います。

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