リセマム「ミツカル教育通信」にて取り上げられました。

豊田毅

豊田毅

テーマ:不登校

以下は記事の要約となります。
全文はこちらからどうぞ。

フリースクール滝野川高等学院が紡ぎ出す「一生の居場所」と教育の未来

子どもが不登校になった際、保護者が抱く将来への不安に対し、既存の教育環境ではカバーしきれない細やかなサポートを実践しているのが「フリースクール滝野川高等学院」です。同学院の代表であり元高校教員である豊田毅先生へのインタビューから、卒業後まで続く支援のあり方、異年齢交流の意義、保護者へのケア、そして現代教育への提言が語られています。

1. 設立の背景:「一生の居場所」としての役割

豊田先生がフリースクールを設立した原点は、高校教員時代の葛藤にあります。当時、小学校・中学校から不登校だった生徒を受け入れていましたが、生徒が成長し伸び始めたタイミングで「3年間」という区切りが来て卒業となってしまうことに、支援の時間が足りないという歯がゆさを感じていました。
また、通信制高校などに進学した生徒が、大学進学の準備不足から不本意な進路を選ばざるを得なかったり、進学先で中退してしまったりする現状を目の当たりにします。しかし、教員という立場上、卒業生にかかりきりになることは許されませんでした。

この経験から、「小学生や中学生のもっと早い段階から関わりたい」「卒業後もいつでも相談に戻ってこられる場所を作りたい」と決意し、フリースクールを立ち上げました。同学院では、卒業後も生徒をサポートし続けることを正規の業務として位置づけており、生徒にとっての「一生の居場所」となることを理念としています。

2. 生徒の「やりたい・困った」から生まれる柔軟な支援体制

滝野川高等学院の多彩なコースや支援体制は、あらかじめ大人が用意したものではなく、すべて「生徒のニーズや困りごと」から自然発生的に生まれたものです。

子どもたちの声から生まれたコミュニティ

高校生から始まり、中学生、小学生と受け入れを拡大する中で、「野球がしたい」という一人の生徒の願いから野球チームが結成されました。SNSでの呼びかけで集まったチームは8年目を迎え、現在も存続しています。また、学校へ復帰した生徒が「放課後なら通える」という声に応えて学習塾を開設したり、2026年には放課後等デイサービスを開設するなど、不登校の枠を超えた支援へと拡大しています。

「大学生支援コース」の誕生

開校当初、豊田先生がテナント代を稼ぐためにしていた警備員のアルバイト中、偶然出会った大学生の悩み(優秀な大学にいるがレポートが書けず留年している)を聞いたことがきっかけで新設されました。5教科の学力と、スケジュールを管理し単位を取得する事務能力は別物であるという気づきから生まれたこのコースは、これまでに多くの大学生を卒業へと導く駆け込み寺となっています。

毎日30〜40人が集まる「東京で一番明るいフリースクール」という活気ある環境は、多様な生徒がいるからこそ、自分と気の合う仲間を見つけやすいという大きなメリットを生み出しています。

3. 異年齢集団がもたらす「奇跡」と自己肯定感の育成

同学院の最大の特徴の一つが、学年や年齢の枠を取り払った「異年齢集団」での関わりです。大人がどれだけ手を尽くしても解決しなかった問題が、子ども同士の関わりによって劇的に好転する「奇跡」が日常的に起きています。

【印象的なエピソード:パニックを鎮めた一言】
激しい癇癪(かんしゃく)を起こし、大人では全く手がつけられなかった小学生の男の子に対し、年上の小学6年生の男の子が「明日、ぬいぐるみを持ってきてあげるから泣きやんで」と声をかけました。大人の心理学や常識からは絶対に出てこないこのアプローチによって癇癪は収まり、その小学生は後に中学受験を突破するまでに成長しました。

異年齢教育がもたらすメリット

他者への許容度と自己肯定感の向上: 同学年だけで集めると「できる・できない」の比較が生まれ、自己肯定感が低下しがちです。しかし、年齢が違えば「小学生だからできなくて当たり前」と他者を許容できるようになります。他者を許せることは自分自身への許容(自己肯定感)に直結します。

ロールモデルと成長の再確認: 年上の生徒を見ることで自分の将来像(目標)を描きやすく、年下の生徒を見ることで「自分が乗り越えてきた過去」を振り返り、自身の成長を実感することができます。

また、在籍生徒や卒業生がスタッフのように立ち回り、新入生を輪の中へ自然に引き入れる好循環も生まれています。

4. 自尊心を守る学習支援と、学校連携のリアルな課題

学習面においても、同学院は生徒の「自尊心」を最優先に考えたアプローチを行っています。

検定試験を活用した「得意」を伸ばす学習

不登校を経験した中高生に、遅れを取り戻すために小学生のドリルをやらせるような「学び直し」は、プライドを傷つけモチベーションを奪う危険があります。そこで、同学院では英検、漢検、数検から歴史能力検定まで約10種類の「検定試験(準会場指定)」を活用しています。「漢検7級からやってみる」といった具合に、周囲との比較ではなく自分の興味とペースで挑戦させることで、自信をつけさせ、自発的な学習意欲を引き出しています。

「雑談」から探る進路指導

プレッシャーになりがちな進路指導は、堅苦しい面談ではなく、スタッフとの「雑談」の中から本音を引き出します。生徒の精神状態やタイミングをスタッフ間で綿密に共有し、一番話しやすいスタッフがさりげなくアプローチする慎重な体制をとっています。

学校連携の難しさと課題

同学院は詳細な報告書を作成することで「99%の出席扱い認定率」を誇っていますが、学校との連携には大きな壁が存在します。約60校に及ぶ在籍校に対し、月末に「具体的な単元の進み具合」や「即日での出席日数の提出」など、学校ごとの個別かつ急な要望に手作業で応えることはマンパワー的に限界を迎えています。豊田先生は、フリースクールと学校が共有できるオンライン管理システムなど、国や自治体主導のデジタル化による負担軽減を強く訴えています。

5. 保護者のケアと「自他分離」、そして今後の教育への提言

不登校支援において、子ども本人と同じくらい重要なのが「保護者のケア」です。

保護者自身の人生を取り戻す「自他分離」
相談に訪れる保護者の多くは、焦りと孤独から涙を流すほど精神的に追い詰められています。豊田先生は、保護者の悩みを「子どもの問題」と「保護者自身の問題」に切り離して話を聴くことを徹底しています。
そして保護者に対し、「子どもをスクールに預けている時間は、子どものことを一切考えず、自分の人生(趣味や休息)を楽しんでほしい」と伝えています。子どもの人生と保護者の人生を分ける「自他分離」ができ、保護者が笑顔を取り戻すことこそが、子どもにとっても一番の安心につながるからです。

これからの社会と教育システムへの提言

学校復帰はあくまで「本人の自由な選択肢の一つ」であり、フリースクールの最大の役割は「学校に行かなくても、社会に出て自立できる人間を育てること」だと豊田先生は語ります。今後は、フリースクールが不足している地方へ向けたビジネスモデルの展開も視野に入れています。
また、戦後80年以上変わらない「6・3・3・4制」や「学級担任制」「一斉授業」といった現在の学校教育システムは、現代の多様性に対応しきれず構造的な限界を迎えていると指摘し、根本的な議論の必要性を提唱しています。

まとめ:「不登校は人生の結論ではない」

16年間にわたり1,000人以上の子どもたちを見守ってきた豊田先生からの最大のメッセージは、「不登校は長い人生のほんの途中経過であり、結論ではない」という事実です。

かつて深く悩み引きこもっていた子どもたちが、今では立派に就職し、自分の足で人生を歩んでいる姿を数え切れないほど見てきたからこそ、「この子は絶対に大丈夫だ」と信じ抜くことの重要性を説いています。フリースクール滝野川高等学院は、学校の単なる代替ではなく、子どもたちが自分らしく生きる力を育み、卒業後もずっと彼らを支え続ける「自立の拠点」として機能し続けています。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

豊田毅
専門家

豊田毅(フリースクール運営)

株式会社自由教育/フリースクール滝野川高等学院

不登校経験や年齢に関係なく通えるフリースクール。高校卒業資格の取得支援や併設の学習塾での指導を通じ、将来の選択肢を広げます。15年の不登校支援の経験をもとに、開校支援のコンサルティングも展開。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

子どもの〝自分で生きる力〟を育む不登校支援の専門家

豊田毅プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼