墓じまいと散骨に関する必要な手続きと費用
エンディングノートの認知と実際の利用状況
「エンディングノート」は、いまや終活の定番となりました。書店や文具店には専用のノートが並び、テレビや新聞でも取り上げられるなど、その存在は広く知られるようになっています。
しかし、「知っている」と「実際に書いている」には大きな差があります。
【終活白書2024（株式会社ニチリョク）】によると、エンディングノートを実際に書いている人は全体の42％にとどまり、半数以上はまだ手を付けていません。また、内閣府が実施した【高齢者の生活と意識に関する国際比較調査（令和6年度）】では、エンディングノートやリビングウイルを作成している高齢者は全体の約1割という結果が出ています。
つまり、多くの人が「必要だと感じながらも、実際には始められていない」状況にあります。
書けない理由としては、「まだ元気だから」「書くことに抵抗がある」「何から書けばいいか分からない」といった声が多く聞かれます。大切だと分かっていても、心の壁や書きにくさがあり、なかなか一歩を踏み出せない人が多いようです。
自治体と医療現場で進むエンディングノートの取り組み
全国では、自治体や医療・福祉の現場でエンディングノートを広める取り組みが少しずつ進んでいます。
三重県桑名市
「桑名市版エンディングノート」を作成し、介護高齢課や地域包括支援センターで無料配布しています。PDF版も公開され、「全部を書かなくてもよい」「法的効力はない」「定期的に見直すことが大切」といったガイドも添えられています。気軽に書き始められる工夫がされています。
静岡県富士宮市
「思いをつなぐノート 第2版」を発行。市民の声を取り入れて改訂され、医療の希望や家族へのメッセージなどを自由に記入できます。市役所や地域包括支援センター、交流センター、図書館で無料配布しており、PDF版も公開中です。
大阪府八尾市
情報冊子「未来を描く心のノート」の中に、エンディングノート「わたしの人生の覚え書き～未来への手紙～」を収録。市役所や地域包括支援センター、社会福祉協議会で配布され、電子版PDFも利用可能です。「最初からすべて書かなくてもよい」「定期的に見直す」「家族と共有する」ことを推奨し、書き方の相談窓口も設けています。
青森県青森市
「わたしノート」を作成し、高齢者支援課や地域包括支援センターで配布しています。公式サイトからPDFをダウンロードでき、記入時の注意点や相談窓口の案内も掲載。更新日が明記され、安心して利用できる仕組みです。
岐阜県医師会（医療現場の取り組み）
「これからノート」を開発し、在宅医療や人生会議（ACP）で活用しやすい構成に。本人の希望を多職種で共有できるよう工夫されています。令和7年3月末に完成し、8,000部を県内医療機関や自治体に配布。さらに2025年8月には岐阜県医師会館で活用研修会が開催され、医療・介護従事者や行政職員が使い方を学ぶ機会が設けられました。
エンディングノートが普及しにくい理由
各地で取り組みが進む一方、普及が思うように進まない要因もあります。
心理的な抵抗
自分の死や介護を考えるのは勇気がいります。まだ元気な人ほど「わざわざ書かなくても」と感じやすく、「縁起でもない」「書いたら現実になるのでは」といった不安もあります。
共有や更新の難しさ
書いても家族に見せずにしまい込んだり、更新されないままになるケースも多いです。家族に見せることや、定期的な見直しは意外と難しいものです。
入手のしにくさ
自治体で配布されていても、平日の窓口対応のみで受け取りに行けない人がいます。ネットからダウンロードできても、パソコンやプリンターがないと難しい場合もあります。
内容の曖昧さ
医療・財産・葬儀・連絡先など項目が多く、「全部書かないといけないのでは」と迷う人も。空白を残すことへの抵抗感から、書き始められない人もいます。
家族を支えるエンディングノート～今からできる実践
こうした課題はあるものの、エンディングノートの役割はとても重要です。
自分の想いや希望を書き残すことは、医療や介護の場面で家族が迷わず判断できる助けになります。財産や連絡先を整理しておけば、残された家族の負担を大きく減らすこともできます。
また、スマホやインターネットのアカウント、サブスクリプションの解約情報も欠かせません。本人しか知らない契約やログイン情報が放置されると、費用の発生や個人情報流出のリスクがあります。こうした情報の整理は、家族を支える大切な一歩です。
関連記事：【エンディングノートで遺族をサポートしよう～故人のスマホ・サブスクの解約手続き～】https://sea-forest-ceremony.com/blog/rtg_0nk1-lx
近年では、紙だけでなく声や映像をデジタルで残せる「Memory Container」のようなサービスも登場しています。書くことが負担な人でも、自分の声で想いを残すことができ、更新や保存も容易です。こうした仕組みが広がることで、エンディングノートはより多くの人にとって身近な存在になりつつあります。
関連記事：【NTTデータが届ける「Memory Container」～声と映像をクラウドに残す、新しいエンディングノート～】https://sea-forest-ceremony.com/blog/5qxo4t0jhfxb
エンディングノートは、思いついたことを少しずつ書くだけでも十分です。大切なのは、自分の意思を形にして残すこと。難しく考えず、まずは一行からでも書き始めてみましょう。その一歩が、未来の安心へとつながります。
