中尾彬さん夫妻に学ぶ終活~夫婦で終活をする際に必要な準備~
若者のあいだで広がる終活とデス活
近ごろ、20代や30代といった若い世代のあいだで「終活」への関心が高まっています。
かつては高齢者が取り組むものと思われていた終活が、今では若者の生活や価値観の中にも自然に入り込むようになりました。SNSやYouTubeの影響もあり、「デス活(死を見つめる活動)」という言葉も登場し、生と死を語ることがオープンに受け入れられつつあります。
ある葬儀会社の調査では、20代のおよそ4人に1人が、何らかのかたちで終活に取り組んでいるといいます。都市部では、若者向けの終活セミナーや終活グッズ、デジタル遺言サービスなどが次々と登場し、従来の終活とは異なるスタイルが広がっています。
また、テレビやニュースでも取り上げられる機会が増えています。NHKの「クローズアップ現代」では、家族へのメッセージを生前に残せる「ラストレター」サービスが紹介されました。特に20代〜30代の女性から支持を集め、「死後も想いを届けたい」というニーズに応える新しい終活として注目されています。
若者が終活に惹かれる理由
若者のあいだで終活が意識されるようになった背景には、いくつかの時代的な変化があります。
ひとつは、コロナ禍や地震、豪雨といった災害による影響です。これまで遠くに感じていた「死」や「もしもの事態」が、身近なものとして実感されるようになり、「明日、何が起こるかわからない」と感じることが当たり前になりました。
もうひとつは、日常に深く入り込んだデジタルの存在です。SNSや写真アプリ、クラウドに保存されたデータ、各種サービスのログイン情報など、今の生活は「デジタル資産」に支えられています。これらを整理せずに万が一の事態を迎えたとき、家族や友人に迷惑をかけるかもしれないという不安が広がり、終活への意識につながっています。
LINEなどのツールを使って、死後にメッセージを届ける「メッセージ予約配信」も広まり始めています。AIが本人の声や文体を再現する技術も登場し、終活にテクノロジーが自然と取り込まれる時代となっています。
こうした新しい手段により、「死」はただ避けるものではなく、自分らしく準備し、受け入れるためのテーマとして捉えられつつあります。
終活スナックが若者に人気?入棺体験と死を語る場が広げるデス活のかたち
若者のあいだで広がる終活の新しいかたちとして、「終活スナック」と呼ばれる飲食店が注目を集めています。大阪を中心に展開されており、店内ではお酒を片手に死や人生の終わりについて語り合うほか、実際に棺に入る入棺体験や、終活グッズの展示も行われています。
入棺体験をした人は「妙に落ち着いた」と話していました。そこには恐怖ではなく、自分自身と静かに向き合う時間があったようです。
ある20代の女性は、終活について「美味しいオムライスの最後の一口みたい」と表現しました。人生の終わりを意識することで、日々の時間がより深く感じられるという想いが込められているのでしょう。
終活スナックのような場では、死について語ることが日常の延長として自然に受け入れられています。来店者の多くは20代後半から40代の女性で、「話すことで気持ちが軽くなった」「前向きになれた」といった声もあります。
死を見つめることが、どう生きるかを考えるきっかけとなり、若い世代にも静かに広がっているようです。
人生をよりよく生きるための終活
最近では、AI技術を活用した遺影作成サービスや、メッセージを残せる新しい終活サービスも登場しています。
「tayorie」というウェブサービスでは、生前に家族へのメッセージを登録することで、死後にそれを届けることが可能です。初期費用は無料で、年間30万円のプランでは、メッセージ通話などのオプションも利用できます。
こうしたサービスの登場によって、終活は若者にとってもより身近な存在になりつつあります。
お酒を飲みながら語る終活スナック、自分の声でメッセージを残すサービス、そして棺に入るというユニークな体験。それぞれが、死を避けるのではなく、自分自身と静かに向き合うための選択です。
「人生の終わりに備える」だけではない、新しい終活のかたち。これからの人生を自分らしく、豊かに生きるための方法として、終活は今後さらに自由に、そして多くの世代へと広がっていくことでしょう。



