株式会社前方後円墳や新宮霊園の古墳墓～自由で新しい供養～
南あわじ市で放置された墓石問題が突きつける日本社会の現実
山に積み重なった墓石――その衝撃の光景
先日、兵庫県南あわじ市の山林を映したテレビの報道番組が、大きな注目を集めました。
映像に映っていたのは、山の斜面一帯に無造作に積まれた大量の墓石。中には割れていたり、角が欠けていたり、苔に覆われているものもあり、かつて手を合わせて祈られていたとは思えない姿でした。
この場所は地元で「墓石の墓場」と呼ばれ、およそ20年もの間、誰の手も入らないまま放置されてきたとされています。
「これが“供養の象徴”の末路なのか」
と、インターネットやSNS上では多くの驚きと疑問の声が上がりました。
「なぜこんなことが起きているのか」「誰が責任を取るのか」
という問いかけも多く、問題への関心は一気に高まりを見せています。
しかし、これは単なる不法投棄事件ではありません。背景には、供養観の変化や墓じまいの増加、処分費用の高騰など、複雑な社会的要因が絡み合っています。
業者の違法行為と制度の限界
この問題の発端は、地元の石材業者による違法な墓石処分にあります。
2000年代初めから、この業者は墓じまいや建て替えで不要になった墓石を引き取っていました。本来、これらの墓石は産業廃棄物として、適切な手続きに従って処理しなければなりません。
しかし実際には、墓石を粉砕したり埋設したりすることなく、そのまま山中に運び入れて地面に積み上げるという不法投棄が行われていました。これは明確に廃棄物処理法違反です。
2008年にこの行為が明るみに出たことで、業者は有罪判決を受けました。しかしその後、業者の代表者が死亡し、会社も倒産。結果として、誰も撤去の責任を果たせないまま、現在に至っています。
さらに問題を複雑にしているのが、墓石が積まれている土地の所有権です。報道によればこの土地は私有地であり、行政が強制的に対応するのは困難とされています。
土地所有者自身は撤去の意志を持っていますが、想定される撤去費用は数千万円単位で、個人では負担できないのが現実です。
「勝手に触れるわけにもいかず、見て見ぬふりをしてきた」
という地域住民の声もあり、こうして問題は長年放置されてきました。
このような事例は、単なる不正ではなく、制度の限界・行政の制約・経済的な負担、そして社会全体の無関心が重なった結果といえるでしょう。
急増する墓じまいと処分費用の壁
この問題の背景には、日本全体で急増している「墓じまい」の現象があります。
厚生労働省などの統計によれば、2023年度には全国で約17万件の墓じまいが行われ、これは10年前の約2倍という数値です。
- 少子高齢化
- 核家族化
- 親族が遠方に住んでいる
- 墓を継ぐ人がいない
こうした事情から、墓を維持できず墓じまいを選ぶ人は年々増えており、今やごく一般的な選択となっています。
しかし、墓じまいを行ったあとに残る墓石の処分には、高額な費用がかかります。通常、墓石は産業廃棄物として扱われ、1基あたり5万～10万円が相場です。加えて、運搬・撤去・粉砕・埋設といった工程をすべて含めると、さらに費用は膨らみます。
こうした費用負担の重さが、業者側の違法行為や、利用者の「できるだけ安く済ませたい」という心理を生む要因のひとつです。十分な知識や認識がないまま業者に依頼してしまうと、知らず知らずのうちに不法投棄に関わってしまう恐れもあります。
再発を防ぐために求められる意識と行動
南あわじ市の墓石放置問題は、一つの業者の問題にとどまらず、
- 法制度の不備
- 行政の限界
- 高額な処分費用
- 社会全体の関心の低さ
といった、さまざまな要因が重なって発生しています。
こうした問題を繰り返さないためには、私たち一人ひとりが「墓じまい」や「墓石の処分」について正しい知識を持ち、信頼できる業者を選ぶことが何より重要です。
「安さ」や「手軽さ」だけで業者を選んでしまえば、知らぬ間に重大な社会問題の一端を担うことにもなりかねません。
行政や業界の制度整備も必要ですが、まずは私たち自身の意識改革が問われています。
なお、弊社では墓じまいや墓石の処分に関するご相談も承っております。不安なこと、わからないことがあれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。
