死後の手続き②~葬儀後の相続・名義変更・登記の進め方~

村田光史

村田光史

テーマ:冠婚葬祭

相続や名義変更は葬儀後すぐ?


葬儀の後に始まる「次の手続き」


大切な人を見送ったあと、少しずつ日常を取り戻そうとしている中で、多くの人が「これはどうすればいいの?」と戸惑う場面に直面します。

それが、相続や名義変更といった「その後の手続き」です。

死亡届の提出や保険証の返納など、役所への届け出は比較的案内も整っています。しかし、それ以降に必要となる手続きは、期限が長かったり、内容が専門的だったりするため、つい後回しにしてしまいがちです。

たとえば、長年住んでいた家が故人名義のままだと、売却や修繕、貸し出しなどに支障が出る可能性があります。預金口座が凍結されることで、公共料金の引き落としが止まってしまうといった事例も少なくありません。

葬儀が終わったばかりでも、心の整理がつく前にさまざまな実務がのしかかってくるのが現実です。

関連記事:【死後の手続き①~家族が亡くなったら何をする?~】https://sea-forest-ceremony.com/blog/mdxlyq0p1dfx


相続の進め方~遺言・放棄・税申告まで


相続と聞くと、多くの人が「財産を分けること」とイメージするかもしれません。しかし実際には、その前にやるべきことがいくつもあります。

1.遺言書の有無を確認する


最初に確認すべきは、「遺言書があるかどうか」です。

遺言書には主に以下の3種類があります。

  • 公正証書遺言(公証人の立ち会いで作成され、安全性が高い)
  • 自筆証書遺言(本人がすべて自筆で書いたもの)
  • 秘密証書遺言(内容は秘密のまま公証役場で保管される)


自筆証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所で「検認」の手続きを受ける必要があります。

参考:【裁判所「自筆証書遺言の検認」について】https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html

関連記事:【終活を始めよう~遺言書とエンディングノートの作成~】https://sea-forest-ceremony.com/blog/y5x-o2yo5sbd


2.相続人の確定と財産の調査


次に必要なのが、「誰が相続人になるか」を確定することです。戸籍を取り寄せ、法定相続人を明確にします。同時に、故人が残した財産の調査も並行して進めます。銀行口座、不動産、株式、車両、保険、借入金、未払いの公共料金など、漏れなく確認しておきましょう。

3.相続放棄や限定承認をする場合(3か月以内)


もし調査の結果、マイナスの財産が多いと判断される場合は、「相続放棄」または「限定承認」という方法があります。これらはいずれも、相続を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

参考:【裁判所「相続放棄の申述期間」】https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html


4.遺産分割協議と協議書の作成


相続人全員で財産の分配について話し合うのが「遺産分割協議」です。合意内容は「遺産分割協議書」として文書化します。

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判により解決を図ります。円滑に進めるには、弁護士や司法書士など専門家の助言を活用するのも有効です。

5.相続税の申告と納付(10ヵ月以内)


遺産総額が基準額を超える場合は、相続税の申告と納税が必要です。

目安は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えた場合です。申告と納付の期限は、相続開始を知った日から10ヵ月以内です。

参考:【相続税がかからない財産】https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm

参考:【相続税の基礎控除額について(国税庁)】https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm


相続後にすべき名義変更~登記・口座凍結・実務リスクも紹介


相続が完了した後も見落としやすいのが、「名義の変更」です。

この手続きを怠ると、さまざまな問題が発生します。

たとえば、不動産の登記をしないまま放置すると、売却や利用ができなくなります。さらに相続人が増えることで手続きが複雑化し、関係者が増えることで話し合いの難易度も上がります。

実際、長年放置されたことで権利関係が混乱し、所有者が分からないままの土地が「所有者不明土地」として社会問題にもなっています。これらは売買や開発もできず、地域にとって大きな損失です。

また、車や銀行口座を故人名義のまま使い続けるのは法的にも問題です。銀行口座は死亡届の提出により凍結され、相続人全員の合意がなければ引き出せません。クレジットカードの決済や公共料金の引き落としにも影響が出ます。

名義変更が必要なものは、不動産や預金にとどまらず、車、株式、投資信託、保険契約、携帯電話、各種サブスクリプション契約まで多岐にわたります。それぞれの手続きには異なる書類が必要になるため、一覧を作成して順に進めていくことが大切です。

関連記事:【エンディングノートで遺族をサポートしよう~故人のスマホ・サブスクの解約手続き~】https://sea-forest-ceremony.com/blog/rtg_0nk1-lx


なお、2024年4月より相続登記は義務化されており、正当な理由がなく手続きを怠った場合、過料の対象となることがあります。

参考:【法務省「相続登記の申請が義務化されます(2024年4月1日施行)」】https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000275.html

参考:【相続登記の申請義務化に関するQ&A】https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html


相続手続きに悩んだら~司法書士・行政書士への相談は有効?


相続や名義変更の手続きは、遺された家族にとって精神的にも実務的にも大きな負担になります。悲しみの中で多くの書類に向き合い、何を優先すべきか分からなくなることもあるでしょう。

そんなときは、専門家への相談も一つの選択肢です。

「プロに頼むなんて大げさでは?」と感じるかもしれませんが、行政書士や司法書士の初回相談は無料で受けられることも多く、料金も明確に設定されているため安心です。

また、財産の内容や状況によっては、専門家の助言で節税につながったり、申告ミスを防げる場合もあります。知識を持つ第三者に依頼することで、手続きの負担を減らし、心に余裕を持って向き合えるようになります。

「正しく引き継ぐ」ということは、単に財産を渡すのではなく、故人の想いを未来につないでいく行為でもあります。必要な手続きを丁寧に行うことが、新たな一歩を踏み出すための支えになるはずです。

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村田光史
専門家

村田光史(散骨代行)

合同会社KOKESHI Arts 海外リゾート散骨 海と森のセレモニー

希望する外国への散骨が可能か調査し、骨の粉砕や法的手続きを代行。葬儀は動画に収め、散骨証明書と共に遺族へ送付する。シニアライフパートナーの資格を持ち、墓じまいなどシニアとその家族の悩みにも幅広く対応。

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