生前葬~自分で最期をプランニング~
火葬待ち問題と「遺体ホテル」という選択肢
人が亡くなってから火葬や葬儀までには、一般的に1~2日程度の間があります。
しかし近年、特に都市部で「火葬待ち」の問題が深刻化しており、火葬場の不足により遺体の安置期間が長引くケースが増えています。中には、火葬までに3~5日、長い場合で10日から2週間、最長で17日待つこともあるのです。
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そのような中、注目を集めているのが「遺体ホテル」と呼ばれる施設です。
遺体ホテルとはどんな場所か
遺体ホテルは、火葬がすぐにできない場合や自宅で遺体を安置できない場合に利用される施設です。火葬待ちの長期化だけでなく、生活様式や住宅事情の変化から利用者が増加しており、都市部を中心にその数も増えています。
見た目は一般的なホテルと変わらず、遺体のみが安置される施設で、納棺やお通夜、簡単な葬儀が行える場合もあります。24時間面会可能な施設もあり、遺族がゆっくりと故人と過ごせる時間が設けられています。
一方、火葬場や葬儀社が運営する「遺体安置施設」は、遺体を一時的に保管するのみで、面会時間に制限がある上、無機質な空間で複数の遺体が同室となる場合もあり、ゆっくりと故人と向き合うには不向きな環境です。
遺体ホテルを利用するメリットとデメリット
メリット
1.火葬場が空くまで衛生的に安置できる
遺体ホテルでは、室内温度を3~5℃に保ち、遺体の傷みを防ぎます。長期安置や損傷がある場合は、オプションでエンバーミングも可能です。
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2.自宅に遺体を安置できない場合に安心
近所の目や生活環境の都合で自宅安置が困難な場合でも、遺体ホテルが故人を預かってくれることで安心できます。
3.施設内で葬儀も可能
遺体ホテルによっては、納棺や少人数での通夜・葬儀が行えるため、別に葬儀社を手配する必要がありません。シンプルに火葬のみ行いたい場合にも適しています。
デメリット
1.費用がかかる
自宅安置は無料ですが、遺体ホテルでは1泊あたり1~2万円が相場で、7日預ければ7~14万円の費用が発生します。
2.地域の理解を得られない場合も
見た目が普通のホテルと変わらないため、近隣住民に遺体ホテルと知られにくい一方、気味悪がられることもあります。
神奈川県川崎市では建設計画に対して住民が反対運動を起こし、最終的に届け出上「倉庫」として営業が始まりましたが、事業は撤退。これを機に川崎市では【葬祭場等の設置等に関する要綱】が策定され、事業者と住民との対話や住環境への配慮が求められるようになりました。
遺体ホテルを選ぶ際のチェックポイント
清潔さと衛生管理
施設全体の清潔さはもちろん、遺体が安置される部屋の衛生管理、消毒や臭気対策が適切かを確認しましょう。事前に基準や対策についてスタッフに聞いておくのも安心です。
設備の充実度
遺体を適切に保管する冷蔵設備が整っているか、またエンバーミング技術者が在籍しているかもチェックしておくと安心です。
室内の環境
安置室が遺族のプライバシーを保ちつつ、面会しやすい環境であることが大切です。室内のインテリアや照明、音楽などにも配慮されているか確認しましょう。
スタッフの対応
遺体の取り扱いに対して丁寧で責任感のあるスタッフがいるかどうかも重要です。信頼できる対応をしてくれる施設を選ぶことで、心穏やかに最期の時間を過ごせます。
遺体ホテルで過ごす、故人との静かな時間
かつては自宅で遺体を安置するのが一般的でしたが、火葬待ちの長期化や家族構成の変化などにより、そうした選択が難しくなってきました。
遺体ホテルでは、ご近所の目を気にすることなく故人と落ち着いて最期の時間を過ごすことができます。中には家族が宿泊できる施設もあり、同じ部屋で故人と過ごすことで、死を受け入れ、悲しみを癒す時間ともなり得ます。
これからますます進むとされる高齢化と多死社会において、遺体ホテルは「故人と向き合う最後の場所」として、大切な選択肢の一つになるでしょう。



