墓じまいからの檀家離れ~戦後から現代の葬送文化と寺院の経営悪化~
日本の人形供養文化~感謝と別れの心を大切にする風習
引っ越しや整理整頓などをきっかけに、大切にしてきた人形やぬいぐるみを手放さなければならないこともあるかもしれません。
しかし、それらをゴミとしてそのまま処分するのに抵抗を感じる人も多いのではないでしょうか。
そんな時は、今までの感謝の気持ちを込めて「人形供養」を行うという方法があります。
日本では古くから「すべての物には魂が宿る」という考え方があります。
思い出が詰まった人形やぬいぐるみを粗末に扱いたくないという気持ちから、役目を終えたものに感謝を伝える「人形供養」の習慣が生まれました。
このような風習は、海外ではあまり見られず、日本特有の文化といわれています。
最も一般的な供養方法は「お焚き上げ」です。お焚き上げは、古くから行われてきた伝統行事であり、大切なものを処分する際に「火で浄化し、天に還す」という意味があります。
写真や手紙、本、お札なども、燃やせるものであればお焚き上げの対象になります。
人形供養の方法
お寺や神社に依頼する
人形供養は、供養を受け付けているお寺や神社に依頼するのが一般的です。
元々、お守りやお札、破魔矢などを納めて処分してもらう場所として利用されてきたことから、人形供養を行っている寺社も数多く存在します。
また、人形供養に特化した寺社もあり、たとえば明治神宮では秋に「人形感謝祭」という行事が開催されます。明治神宮では当日の持ち込みも可能ですが、郵送対応のみの寺社もあるため、事前の確認が必要です。
日時が決まっている場合や、無料・有料の違いもあるので、必ず詳細を確認しましょう。
人形供養専門業者に依頼する
人形供養を専門に扱う業者もあり、受付や配送手続きを代行してくれます。
たとえば【一般社団法人日本人形協会】が提供する「人形感謝(供養)代行サービス」では、申込み後に人形を梱包して「ゆうパック」で送付します。自宅での集荷も可能です。
送られた人形は、毎年10月頃に【東京大神宮】で行われる「人形感謝祭」で供養されます。鯉のぼりも受け付けています。
自分で供養する
自宅で自分の手で供養する方法もあります。以下の手順で行うと良いとされています。
- 入浴などで自身の身を清める
- 人形の汚れを丁寧に拭き取る
- 白い和紙や布で包む
- 粗塩を振りながら感謝の言葉をかける
ただし、お寺や神社のようにお焚き上げを自宅で行うことは法律により禁止されています。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第16条の2(焼却禁止)
宗教行事として寺社で行われるお焚き上げのみ、例外的に認められています。
寄付や譲渡という選択肢
供養をせず、必要とされる人に譲るという方法もあります。
人形を募っている団体に寄付したり、好きな方に譲ったりするのもよいでしょう。ただし、寄付する際は、傷みや汚れのないものに限ります。状態の悪いものは失礼にあたりますので注意しましょう。
人形供養を行っている代表的な寺社
- 明治神宮(東京都渋谷区)
- 1989年から「人形感謝祭」を開催。2024年は10月6日に実施。
- 西照寺(大阪府大阪市)
- 「人形供養のお寺」として知られ、毎月30日に供養を実施。
関連記事:【一心寺のお骨佛~大阪の納骨寺~】https://sea-forest-ceremony.com/blog/0y3gho6160
- 上野天満宮(愛知県名古屋市)
- 年末年始を除き毎日供養。金属・陶器製の付属品も対応。
- 隣華院(京都府京都市)
- 毎月1日と15日に供養を実施。素材不問で受け付け。
- 西方山広徳寺(埼玉県本庄市)
- 毎月第4日曜日に供養を実施。参列も可能。
- 大山神社(広島県尾道市)
- 因島にある最古の神社で、毎年3月3日に近い土日で供養。
- 長福寿寺(千葉県長生郡)
- 3ヵ月読経供養の後にお焚き上げ。歴史ある寺。
- 淡嶋神社(和歌山県和歌山市)
- 女性に人気の神社。3月3日に「雛流しの神事」を実施。
人形供養で「ありがとう」の気持ちを伝える
愛着のある人形やぬいぐるみを処分するのは、簡単なことではありません。
供養という形で手放すことで、心の整理がつき、前向きな気持ちになる人も多いようです。
長い間共に過ごした人形に「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることで、心が軽くなり、新しい一歩を踏み出すきっかけにもなります。
贈ってくれた人や、共に過ごした時間に感謝しながら見送ることで、形はなくなっても記憶や思い出は自分の中に残り続けるものです。
丁寧に、心を込めてお別れをすることで、人形もきっと喜んでくれるでしょう。



