喪中にお中元は贈っても良い？～マナーや注意点～

お中元の起源と歴史～感謝を伝える夏の風習

毎年この時期になると、日頃お世話になっている方へ「お中元」を贈る人が多いのではないでしょうか。お中元は、感謝の気持ちや健康を願う想いを込めて贈るものであり、「夏のご挨拶」とも呼ばれています。

お中元の起源は、中国の「中元節」と言われています。道教における年中行事のひとつで、1月15日・7月15日・10月15日を「三元」として祝う習慣があり、7月15日は「中元」と呼ばれ、半年の無事を祝い、祖先の供養を行っていました。

日本では古くから「盆」や「盂蘭盆会（うらぼんえ）」として祖先を供養する風習があり、供物を捧げる習慣がありました。それが次第に中国の中元節と結びついていったと考えられています。

室町時代には、貴族や武士が感謝の意を込めて贈り物をする風習が広まり、やがて庶民の間にも浸透して、お中元の習慣として定着しました。江戸時代には商人が取引先や顧客に贈り物をする文化として広がっていきました。

現代では、親しい人やお世話になった人に感謝の気持ちを込めてお中元を贈ります。贈る品物は、食品や飲料、日用品など多岐にわたります。

また関東では7月初旬から15日頃までに贈るのが一般的とされ、関西では7月中旬から8月15日頃までに贈るのが主流です。

ただし、贈る相手が「忌中」や「喪中」である可能性もあります。そういった場合、お中元を贈っても良いのか、注意が必要です。

忌中・喪中にお中元を贈る際の注意点

忌中とは、故人の命日から四十九日法要までの49日間のことを指します。この期間は、故人の魂が冥土を旅する大切な時間とされ、遺族も悲しみに包まれていることが多く、葬儀や法事の対応で忙しい時期です。

この忌中の期間にお中元を贈ることは、マナー違反とされています。香典と混同される可能性もあり、配慮のない行為と受け取られることもあるため、忌明けを待つのが無難です。

その代わりとして「暑中見舞い」や「残暑見舞い」といった形で贈る方法もあります。

一方、喪中は遺族が故人を偲ぶ期間です。古くは「死」を穢れと捉え、外出を控える風習がありましたが、現代では必ずしも厳格に守られているわけではありません。

お中元は「お祝い」ではなく「ご挨拶」であるため、喪中であっても基本的には贈っても差し支えありません。

ただし、相手が故人を失ったばかりで気持ちが沈んでいる場合は、無理に贈ると負担になる可能性もあります。贈ってよいか不安なときは、事前に確認を取ると安心です。

また、お中元を「縁起がよくない」と考える方もいるため、タイミングや相手の心情をよく考えて判断しましょう。

喪中にお中元を贈る際のマナー

熨斗（のし）や水引に注意

通常のお中元では、右上に熨斗が付き、紅白の蝶結びの水引が付いた熨斗紙を使用します。
しかし、喪中においては、熨斗や紅白の水引はお祝い事に用いられるものであり、ふさわしくありません。

喪中のお中元では、白無地の奉書紙や白い短冊に「お中元」または「御中元」と記して贈りましょう。

故人宛に贈らない

毎年故人宛にお中元を贈っていた場合、うっかり宛名を変えずに送ってしまうこともあります。
一般的に、故人の家族との付き合いがなければ贈る必要はありませんが、付き合いがある場合は、故人ではなくご家族宛に贈るようにしましょう。

品物選びに注意する

お祝いを連想させる品物（紅白まんじゅう、色鮮やかな素麺、鯛など）は避けるのがマナーです。代わりに白まんじゅうや白い素麺など、控えめな印象のものを選びましょう。

また、縁を切ることを連想させる刃物類や、涙を連想させるハンカチ、踏みつける意味を持つスリッパなどは避けた方がよいとされています。

長期保存が可能な食品や、実用的な生活雑貨などが好まれます。タオルなどの定番品を選ぶ際も、派手な色は避けましょう。

喪中でもお中元は心を込めて贈る

喪中とは、故人を偲び、心の整理を行う大切な期間です。その期間は、故人との関係によって異なり、一般的には一周忌までとされています。

喪中の相手にもお中元を贈ることは可能ですが、マナーに反した方法で贈ってしまうと、せっかくの感謝の気持ちが誤解されてしまう恐れがあります。

忌中には贈るのを控え、喪中の場合も相手の状況に配慮したうえで、適切なタイミングと方法で心を込めた品物を贈りましょう。

お中元は、相手への感謝と健康を願う気持ちを形にして届ける、日本ならではの大切な文化です。相手の心情に寄り添いながら、その思いを丁寧に届けていきたいものです。