お墓の継承者問題~祭祀継承者の選び方や手続き~

村田光史

村田光史

テーマ:終活

お墓の継承者とは?〜祭祀承継のルールと手続き


お墓を継ぐとはどういうことか


お墓の所有者が亡くなった際、「誰が継ぐべきか」「どうやって決めるのか」と悩む人は少なくありません。少子高齢化や核家族化が進む現代では、「お墓の継承者問題」は多くの家庭で課題となっています。

お墓の継承(祭祀承継)とは、墓地や仏壇、仏具などの「祭祀財産」を引き継ぎ、管理や供養を行っていくことです。これは一般的な不動産や預貯金などの「相続財産」とは異なり、相続税の対象にもなりません。

また、相続人と祭祀承継者は必ずしも一致する必要はなく、祭祀承継者はひとりに限られます。

祭祀承継者の役割


祭祀承継者には、以下のような役割が求められます。

お墓や仏壇の維持・管理


墓地や仏壇の清掃・管理を行い、霊園や寺院へ管理費やお布施を支払う義務があります。滞納すると無縁墓とみなされ、使用権を失うこともあります。

法要を主宰する


一周忌や三回忌などの法要を企画・実施し、僧侶の手配や親族への連絡、お供物・花の準備を行います。

檀家としての務め


お寺の墓地であれば、檀家としての義務も引き継ぎます。これは法要への参加、お布施や寄付などを含みます。

遺骨や墓石の所有権を持つ


祭祀承継者は、遺骨や墓石に関する所有権を持ちます。分骨、散骨、手元供養、墓じまいなどを行うには、その承認が必要です。

祭祀承継者の決め方


伝統的には家族が継ぐことが多く、以下のような順で決まることが一般的です。

  • 長男・長女
  • 他の子ども(改姓した子を含む)
  • 兄弟姉妹・甥姪などの親族
  • 身内以外の人(ただし墓地によっては制限あり)


ただし、被相続人の意思で「特定の人」を指定していれば、その人が優先されます。遺言書がなくても、エンディングノートや口頭の伝達でも、証明できる証人がいれば有効です。

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。民法第897条


つまり、指定があればその人が優先され、慣習が不明な場合は家庭裁判所の判断に委ねられます。

家庭裁判所による祭祀承継者の決定


承継者が決まらない場合、家庭裁判所へ調停または審判の申し立てを行います。判断の基準は以下のような点が考慮されます。

  • 故人との関係性
  • 承継能力(居住地・健康状態など)
  • 生前の交流状況
  • お墓の管理状況


これにより、「故人が生きていれば指名していたであろう人物」が選定されます。

お墓の継承手続き


祭祀承継者が決まったら、菩提寺や霊園に連絡し、名義変更の手続きを行います。

必要書類の一例:

  • 戸籍謄本・住民票
  • 実印と印鑑登録証明書
  • 墓地使用許可証または永代使用承諾証
  • 被承継者の死亡記載の戸籍謄本
  • 遺言書や親族の同意書、家庭裁判所の審判書など


必要な書類や費用は、墓地ごとに異なるため事前確認が必要です。

費用の目安:

  • 公営墓地:数百円〜数千円
  • 民営墓地:数千円〜1万円程度
  • 寺院墓地:手数料+お布施(相談を推奨)


継承者不足と無縁墓を防ぐ墓じまい


祭祀承継者には、拒否できない重責が伴います。そのため近年では継承を負担に感じる人も多く、指定されても受けたくないという声も聞かれます。

ただし、祭祀財産は相続財産ではないため、承継しても相続放棄は可能とされています。相続財産とは異なり、受け取っても債務の承認とは見なされません。

少子高齢化や核家族化により、承継者がいない場合も増えてきました。そのような場合に備えて、無縁墓を回避する選択肢として「墓じまい」や「改葬」を検討する人も増えています。

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「お墓を片付けること」に抵抗を持つ人もいますが、大切なのは「その後の供養」をどうしていくかです。新たなかたちで、心を込めた供養を行うことが、真の供養に繋がるのではないでしょうか。

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村田光史
専門家

村田光史(散骨代行)

合同会社KOKESHI Arts 海外リゾート散骨 海と森のセレモニー

希望する外国への散骨が可能か調査し、骨の粉砕や法的手続きを代行。葬儀は動画に収め、散骨証明書と共に遺族へ送付する。シニアライフパートナーの資格を持ち、墓じまいなどシニアとその家族の悩みにも幅広く対応。

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