グリーフケア～葬儀や供養で心を癒す
故人を美しく見送る「エンゼルケア」とは
故人の尊厳を守るために
大切な人が亡くなったとき、できるだけきれいな姿で送り出したいと思うのは自然な気持ちです。遺族が心穏やかに最期の時間を過ごすためにも、故人の見た目と衛生面の両方に配慮することが重要です。
そのために行われるのが「エンゼルケア」と呼ばれる処置です。これは、故人の体をできる限り生前の姿に近づけるよう整える方法で、納棺までの間に行われます。
エンゼルケアの概要と由来
エンゼルケアとは、故人の体を清潔にし、化粧や着替えを施して、生前の姿に近づける処置です。「死後処置」や「死化粧」とも呼ばれますが、より穏やかで優しいイメージから「エンゼルケア」という言葉が使われるようになったとされています。
この概念は、アメリカの看護師ドロセア・オレムの「セルフケア不足理論」がもとになっています。特別な資格は必要なく、病院では看護師、また場合によっては医師、葬儀社のスタッフ、納棺師、あるいは遺族自身が行うこともあります。
エンゼルケアの主な手順
医療器具の取り外し
点滴やドレーンなど、遺体に残っている医療器具を医師や看護師が取り外します。必要に応じて傷口の縫合やペースメーカーの摘出も行われます。
排泄物や内容物の排出
腐敗や感染症の原因となる排泄物や内容物を、腹部を圧迫したり吸引するなどして除去します。
口腔ケア
口臭や腐敗を防ぐため、アルコールや歯ブラシを使って口内を拭います。顎の硬直が早いため、できるだけ早くケアが行われます。
全身の清拭
遺族が参加できる場合もあります。皮膚の乾燥を防ぐため、保湿も行います。
着替え
死装束や故人が好んでいた衣服に着替えさせます。
化粧や整髪
肌の保湿や髭剃り、髪の整えを行い、見た目を整えます。手は自然な形に整えるのが近年の主流です。
エンゼルケアの目的
遺体を清潔に保つ
医療処置後の体を整え、清潔で見た目も整った状態にすることで、故人の尊厳を守ることができます。
感染症の予防
血液や体液の漏出による感染を防ぎます。
遺族の心のケア
生前に近い姿で最期のお別れができることで、遺族の心の整理がしやすくなるとされています。
湯灌・エンバーミングとの違い
湯灌（ゆかん）
ぬるま湯で体を洗い、穢れを清める儀式的な意味をもつ処置です。エンゼルケアと異なり、宗教的・精神的な要素が強いといえます。
エンバーミング
防腐・殺菌・修復を目的とした高度な処置で、土葬が一般的な国で広く行われています。保存期間を延ばす必要がある際や、空輸が必要なケースで用いられます。
エンゼルケアの費用と留意点
費用は病院や葬儀社によって異なり、数千円から数万円が相場とされています。医療保険適用外のため、事前確認が必要です。また、すぐに処置が行われることから、遺族が気づかぬうちに完了しているケースもあります。
大切な別れの時間を支えるケア
エンゼルケアは、単に衛生的な処置を行うだけでなく、遺族にとっての「グリーフケア」にもなります。自身の手で故人を整える時間は、死を受け入れ、心を整えるきっかけにもなるのです。
関連記事：【グリーフケア～葬儀や供養で心を癒す】https://sea-forest-ceremony.com/blog/bfasla4mj
