死後の手続き②~葬儀後の相続・名義変更・登記の進め方~
墓じまい後の選択肢として急増する樹木葬~人気の背景と注意点~
樹木葬を選ぶ人が増えている理由
近年、「墓じまい」を行った後の改葬先として「樹木葬」を選ぶ人が急増しています。
【第15回お墓の消費者全国実態調査(2024年)】によると、新たに購入したお墓のうち、樹木葬を選んだ人は48.7%と、全体の約半数を占めています。
その人気の背景には、「自然に還りたい」「花々に囲まれて眠りたい」「大樹の下で静かに休みたい」といった想いがあります。また、樹木葬はお墓の継承者がいなくても利用できる形式が多く、子供への負担が少ない点も選ばれる理由の一つです。
しかしその一方で、「思い描いていたイメージと違った」と後悔の声が上がることもあります。
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よくあるトラブルとその事例
樹木葬には大きく分けて「里山型」と「都市型」があります。それぞれに特徴がある一方で、異なるトラブルも発生しています。
里山型のトラブル
・自然還元型でありながら、野生動物による被害(イノシシに遺骨を掘り返されるなど)
・管理が行き届かず、雑草や荒れ地でシンボルツリーの位置が不明になる
・他人と合祀されることを知らず、納得できずに遺骨の返還を求めるケースも
都市型のトラブル
・「この区画しか空いていない」と高額区画を勧められる
・希望していた自然風景とは異なる観音像周辺への埋葬
・年間管理料やオプション費用が重なり、当初の予算を大きく上回る
【第15回お墓の消費者全国実態調査(2024年)】では、樹木葬の平均価格は63.7万円と報告されています。
樹木葬で後悔しないためのチェックポイント
樹木葬のブームの裏で後悔しないためには、事前の確認が何より重要です。
基本的な確認事項
- 家族や親族の理解を得る
- 宗教・宗派の条件があるか(檀家契約の有無など)
- 遺骨は骨壺のままか、そのまま埋葬か
- 個別埋葬か合祀か(後で遺骨を取り出せるか)
- 区画の空き状況と価格帯の妥当性
- 管理費・オプション・お布施の有無と金額
里山型の場合の注意点
- アクセスしやすい場所か(公共交通や車の利用可否)
- 定期的な手入れがされているか
- 野生動物の被害リスクはあるか
都市型の場合の注意点
- 契約期間終了後の対応(合祀、延長可否)
- 将来子どもも同じ場所に埋葬できるか
- 契約時に明確な説明と書面があるか
自然葬としての散骨との比較
樹木葬の歴史は浅く、1999年に岩手県の知勝院で始まったのが最初とされています。その後全国に広まりましたが、霊園や寺院の経営破綻などがあれば、管理や供養に関する問題が発生するリスクもあります。
関連記事:【霊園やお寺の経営危機~理由から改葬先まで~】https://sea-forest-ceremony.com/blog/cz2wcxuzmnhh
樹木葬を選ぶ際は、現地を必ず見学し、管理体制や経営状況、将来性なども確認することが重要です。
同じ自然葬のひとつとして「散骨」も注目されています。樹木葬が「埋葬」であるのに対し、散骨は「撒く」葬法です。どちらも自然に還るという意味では共通しています。
樹木葬では、野生動物の被害や運営側とのトラブルが起きることもありますが、散骨ではそうした問題はほとんど起こりません。
費用や手続きも比較的明確で、宗教や形式にとらわれず行える点も魅力です。
自分にとってどの供養のかたちが納得のいくものか、自然葬という視点から複数の選択肢を検討してみると良いでしょう。



