有名人の墓じまい
過去最多の墓じまい件数とその背景
近年、テレビや雑誌、インターネットなどさまざまなメディアで「墓じまい」という言葉を目にする機会が増えています。「墓じまい」とは、これまでのお墓を撤去・整理・移転することを指します。また、墓じまい後に遺骨を他の場所に移すことは「改葬」と呼ばれます。
「墓じまい」と聞くと、ネガティブなイメージを持たれがちですが、実際には「新しい方法で供養を行う」という前向きな意味合いも含まれています。お墓を片付けることで、供養の形を自分らしく見直すという行動でもあるのです。
改葬先としては、納骨堂をはじめ、樹木葬や散骨などの自然葬を選ぶ人も増えています。
厚生労働省の【令和4年度衛生行政報告例統計表】によると、2022年度の全国の墓じまい(改葬)件数は約15万件で、1997年の統計開始以降、過去最多を記録しています。
この記事では、墓じまいが増加している主な理由や、遺骨の改葬先として選ばれている供養方法について解説します。
墓じまいが増えている理由
お墓の継承者がいない
現在、日本では「核家族化」と「少子化」が急速に進行しています。戦後の霊園ブームを背景に広がった伝統的な墓石のお墓ですが、【第8回世帯動態調査】や【総務省統計局】のデータによれば、家族構成の変化によってお墓の継承が難しくなっています。
継承者がいなくなると、お墓は維持・管理されなくなり、無縁墓として放置されることもあります。「子どもに負担をかけたくない」という思いから、自分の代で墓じまいを決断する人も増えています。
経済的負担の増加
お墓の管理費やお寺へのお布施など、供養にかかる費用は年間で見ると無視できない額になります。現代ではお寺との関係性も薄れ、檀家制度に対する疑問を持つ人も多くなってきました。
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お墓が遠くて通えない
高齢化の影響で、遠方のお墓へ通うことが難しくなり、墓じまいを検討する人が増えています。お墓が近くにない親族に負担をかけたくないという配慮も背景にあります。
お墓に入りたくないという価値観
配偶者や親族と同じお墓に入りたくないという声も少なくありません。個人の意思やライフスタイルを尊重する流れの中で、従来の「決められたお墓に入るべき」という考え方が変わってきています。
関連記事:【散骨を望む理由と自由な選択】https://sea-forest-ceremony.com/blog/ng6c5ky5aukg
無縁墓の増加と社会問題
今後、日本は多くの高齢者が亡くなる「多死社会」に突入すると言われています。【令和4年人口動態統計】によれば、2022年の死亡者数は過去最多の156万9,050人となりました。
【総務省の墓地行政に関する調査】では、公営墓地や納骨堂を保有する自治体の約58%が、無縁墓を抱えていると回答。また、年間管理料の滞納も増えており、滞納をきっかけに使用者の所在が不明になるケースも少なくありません。
使用者が死亡していたことが判明し、墓が無縁化していることに気づくのは滞納から数年後ということもあります。さらに墓石の処分後に縁故者が現れた場合、損害賠償リスクが生じることもあります。
このような背景から、墓じまいを「自ら選択せざるを得ない」状況が広がっているのです。
一部自治体では以下のような支援策も実施されています。
- 北海道苫小牧市:墓じまい費用の助成制度を民間金融機関と連携して実施
- 愛媛県新居浜市:墓じまい後に合葬型施設へ納骨した場合、使用料を全額免除
墓じまい後の改葬先として注目される供養方法
樹木葬の人気上昇
【第15回お墓の消費者全国実態調査(2024年)】では、樹木葬を選ぶ人の割合が48.7%と、ほぼ半数に上ることが明らかになっています。樹木葬は維持費が不要な場合も多く、継承者を必要としない点が評価されています。
散骨という新たな選択肢
散骨もまた、管理費・継承者の問題を解決できる供養方法として注目されています。日本では法的な規制がないため、節度をもって行う限り散骨は合法とされています。
また、身体的な理由などで自ら散骨に出向けない場合でも、弊社のような代行サービスを利用することが可能です。こうした点も散骨が選ばれる理由となっています。
供養の新しい形を自分らしく選ぶ
墓じまいは、単にお墓を閉じる行為ではなく、新しい供養の形を考える機会でもあります。自然の中で樹木や花に囲まれて供養したり、故人の思い出の海や憧れの地で散骨を行ったりと、自分のスタイルに合った供養方法を選択することで、心に寄り添った弔いが実現できます。



