黙祷の起源と一般的な作法
生前に自分の葬儀を行うという選択——「生前葬」とは?
生前葬とは何か
「生前葬」という言葉を耳にしたことはありますか?
生前葬とは、その名の通り「自分が生きているうちに、自分自身の葬儀を行う」ことを指します。近年、終活の一環として注目されている考え方のひとつです。
通常、葬儀は故人を偲び、別れを告げる儀式ですが、当然ながら本人がその様子を見ることはできません。しかし、生前葬であれば、自らが喪主となり、自分らしい形で人生の節目を演出できます。
生前葬の目的と内容
生前葬は、単なる儀式ではなく、「お世話になった方々への感謝」や「お別れのメッセージ」を生きている間に直接伝えることを目的としています。
形式には決まりがなく、宗教的な儀礼を取り入れないスタイルも多く見られます。立食パーティーやカラオケなど、自分の趣味や価値観を反映した自由な内容で行うことが可能です。
生前葬を行う主な理由
- 元気なうちに感謝を伝えたい
- 家族や友人と直接集まって話したい
- 人生の新たな節目として祝いの会を開きたい
生前葬の準備と流れ
生前葬を実施するには、以下のような準備が必要です。
- 家族の同意を得る
- 専門業者へ相談・見積もり取得
- 会場や参加者の決定
- 招待状の作成と送付
- 式の構成(スピーチ・余興・会食など)の検討
準備内容は一般的な葬儀と異なり、演出や進行などすべて自分で決められます。イメージを膨らませながら、自由度の高い式を計画しましょう。
生前葬の一般的な流れ
- 開会の言葉・本人の挨拶
- 自身の人生を振り返る映像上映
- 参加者代表のスピーチ
- 会食
- 余興
- 閉会の挨拶
もちろん、これに加えて独自の演出や演目を取り入れることも可能です。
費用の目安
生前葬の費用は内容によって変動します。
たとえば、10名程度の小規模な会で会食を含めた場合、30〜40万円程度が相場とされています。会場の規模や招待人数、食事・返礼品などによっては200万円を超える場合もあります。
生前葬のメリット
- 自分で式の内容を自由に決められる
- 笑顔と温かさに包まれた雰囲気で開催できる
- 遺族への経済的・精神的な負担を軽減できる
生前葬のデメリット
- 亡くなった後にも火葬など最低限の儀式が必要で、結果的に費用がかさむ可能性がある
- 招待しても出席をためらう人がいたり、縁起が悪いと捉えられることがある
生前葬を行った著名人たち
水の江瀧子さん
「ターキー」の愛称で親しまれた水の江瀧子さんは、生前葬の先駆者として知られています。森繁久彌さんが葬儀委員長、永六輔さんが司会を務め、笑顔と笑いに満ちた式が行われました。
養老孟司さん
「ホトケがいないと会にも気合いが入らない」と、曹洞宗の僧侶たちに頼まれ生前葬を実施。戒名を受け取ったことで、自身の葬儀についても一区切りがついたと語っています。
元コマツ社長・安崎暁さん
末期がんの診断後、「感謝の会」として生前葬を開催。新聞広告で告知を行い、都内ホテルには約1000人が集まりました。本人は「自分らしい終活のかたち」として満足を表しています。
ビートたけしさん
62歳のときに生前葬を行い、「死んだ後にどう言われても気にしない。今は騒いで楽しんでほしい」とコメント。従来の葬儀の枠を超えた演出が注目されました。
そのほかにも、赤塚不二夫さん、アントニオ猪木さん、桑田佳祐さんなどが生前葬を行ったとされています。
「逆修」としての生前葬の意義
仏教には、生きているうちに自身の死後の冥福を祈る「逆修(ぎゃくしゅ)」という考えがあります。戒名を先に授かったり、墓石や位牌を準備することも逆修の一部です。
平安時代から江戸時代まで広く行われていたこの逆修は、現代の生前葬とも通じる部分があります。
死後よりも、生きている間に行う供養の方が徳を積める
一方で、現在の日本ではまだ生前葬は広く認知されているとは言えず、社会的な理解が得られにくい面もあります。
生前葬がもたらす気づき
生前葬を行うことで、自らの死を意識し、過去を振り返り、これからの生き方を見直す機会にもなります。
「死」を意識することで、「生」の時間がいっそう大切になる
自分の人生を見つめ直し、周囲の人への感謝を伝え、自分の足跡を確認できる生前葬。未来をより良く生きるための一歩として、選択肢のひとつに加えてみるのも良いかもしれません。



