ガンジス川へ散骨~ヒンドゥー教の葬送儀礼〜

村田光史

村田光史

テーマ:コラム一般

宗教が映す「死」のかたち──ヒンドゥー教の死生観と葬送儀礼


死はすべての人に訪れるもの


死は、国や宗教、思想や信条を問わず、誰もが経験する普遍的な出来事です。
しかし、その後に行われる葬送の儀式や供養のあり方は、地域や宗教によって大きく異なります。

たとえばイランでは、ゾロアスター教の影響により「遺体は不浄なもの」とされ、土葬や火葬を行わず「鳥葬」という方法が取られます。
遺体を屋外に置き、猛禽類にその肉を食べさせることで、最後の布施行(ふせぎょう)として魂を解き放つと考えられています。

一方、インドの大多数を占めるヒンドゥー教徒は、輪廻転生の思想のもと、死後には何も残さず、遺骨や遺灰をガンジス川に流します。
そこには「すべてを浄化し、来世へと旅立つ」という深い信仰があります。

今回は、そんなヒンドゥー教の基本的な教えと葬送文化についてご紹介します。

ヒンドゥー教とは──その起源と思想


ヒンドゥー教は、特定の開祖をもたないインド発祥の民族宗教であり、自然に生まれた宗教体系です。
その起源は紀元前1500年頃、インダス文明の終焉とともに、イランを経由してインドに移住したアーリア人にさかのぼります。

アーリア人が自然の力を神格化して崇拝したことから「バラモン教」が誕生し、それが後にヒンドゥー教へと発展しました。
彼らがもたらした身分制度「カースト制度」もヒンドゥー社会に深く根付いています。

カースト制度(ヴァルナ)


  • バラモン(司祭階級)
  • クシャトリア(王侯・戦士階級)
  • ヴァイシャ(商人・農民などの庶民階級)
  • シュードラ(被支配層)


また、これらの下に存在するとされる「ダリット(不可触民)」は、制度上の枠外とされ、他の階級と接触することすら許されません。

ヒンドゥー教の哲学には、「梵我一如(ぼんがいちにょ)」──宇宙の本質(梵)と自我(我)は同じであるという教え、そして「輪廻転生」があります。
魂は幾度も生まれ変わり、苦しみを経て浄化され、最終的には輪廻から解放される「解脱」を目指すのです。

人生という幻想から目覚めた時、魂は真の安らぎを得る──それがヒンドゥー教における「解脱」


またヒンドゥー教は多神教であり、以下の三大神が有名です。

  • ブラフマー(創造の神)
  • ヴィシュヌ(維持の神)
  • シヴァ(破壊の神)


ヒンドゥー教の生活規範


・牛は神聖視され、食用にしない
・五葷(ニンニク、ニラ、玉ねぎ、らっきょう、アサツキ)は避ける
・飲酒は禁止、特に目上の人の前では慎まれる
・左手は「不浄」とされ、握手や食事は右手で行う

ヒンドゥー教の葬儀と死後の儀式


ヒンドゥー教では、葬儀は非常に重要な通過儀礼です。

葬儀の流れ


  • 死期が迫ると、バラモン僧を呼んで罪滅ぼしの儀式を行う
  • 遺体にはガンジス川の聖水をかけて清める
  • 亡くなってから1〜2日以内に火葬
  • 火葬後は「シュラッダ」と呼ばれる10〜20日間の祖霊祭を行う
  • 長男は頭を丸刈り(後頭部に一部を残す)
  • 喪中の間、家を出られず会社も休むことが多い


葬送方法


火葬後、遺灰や遺骨はすべてガンジス川へと流されます。

この川は「魂が天へと旅立つ場所」とされ、多くの人がここでの火葬を望みます。火葬は野外で行われ、薪の上に遺体を安置し、長男が火を灯します。

ただし貧困により薪が足りない場合、遺骨が十分に焼けず、そのまま川に流されることもあります。

また以下の人々の遺体については、火葬せずに直接川へ流す「水葬」が行われます。

  • 火葬の費用を負担できない人
  • 子ども
  • 未婚の女性
  • 妊婦
  • 感染症患者
  • 事故死の方
  • ヘビに噛まれて亡くなった方


布に包み、重りをつけて川へ沈める方法ですが、現在では水質汚染の原因として問題視され、政府による対策も進められています。

日本における水葬とその法的制限


インドのように遺体を水に還す「水葬」は、日本では認められていません。
遺体を川や海に流すことは「死体遺棄罪」に該当し、刑法190条により処罰の対象となります。

ただし例外として、船上で亡くなった場合には【船員法】に基づき、条件付きで水葬が許可されることもあります。


  • 死後24時間以上が経過していること
  • 保存が困難であること
  • 遺体が浮上しない処置が施されていること


一方、日本では合法的に行える方法として「海洋散骨」があります。
遺体を火葬した後、その遺灰を海へ還すという方法です。

海外リゾートでの散骨という選択


弊社では、日本国内に加え、以下の海外エリアでも散骨を行っています。


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あなたにとっての「聖なる場所」とは


ヒンドゥー教におけるガンジス川のように、
フィリピンの海やフィンランドの湖、オーストラリアの大自然が、
あなたや故人にとっての「聖なる場所」になるかもしれません。

宗教や文化が異なっても、
故人を敬い、心をこめて送り出すという本質は、どこまでも共通しているのです。

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Mybestpro Members

村田光史
専門家

村田光史(散骨代行)

合同会社KOKESHI Arts 海外リゾート散骨 海と森のセレモニー

希望する外国への散骨が可能か調査し、骨の粉砕や法的手続きを代行。葬儀は動画に収め、散骨証明書と共に遺族へ送付する。シニアライフパートナーの資格を持ち、墓じまいなどシニアとその家族の悩みにも幅広く対応。

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