大切なペットの散骨~お墓にとらわれない供養方法~
憧れの宇宙葬──未来の供養スタイルとして注目
自然葬の進化系「宇宙葬」
近年、散骨や樹木葬といった自然葬の人気が高まっています。そんな中、最先端の供養スタイルとして話題を集めているのが「宇宙葬」です。
宇宙葬とは、故人の遺灰をカプセルに収め、ロケットで宇宙空間に送り出すという、壮大でロマンあふれる供養方法です。
この宇宙葬は、1997年にアメリカで初めて実施されました。空中発射型の「ペガサスロケット」によって、映画プロデューサーや心理学者など24名の遺灰が打ち上げられたのが始まりです。
かつてアニメ『宇宙戦艦ヤマト』では、乗員が亡くなると宇宙船から棺を宇宙へ送り出すシーンが描かれていました。当時はフィクションの中の出来事だと思っていたものが、今では現実になっています。
ちなみに、同作の原作者であり、2024年2月13日に85歳で亡くなった漫画家・松本零士さんは、2018年の宇宙葬に自身の爪を生前葬としてカプセルに収め、宇宙へ送り出しました。
「自分の体の一部が宇宙を飛ぶのは不思議な気持ちで、夢みたいなこと。少年のころから宇宙に憧れ、作品にも描いてきたが、宇宙が身近になり夢が現実になった」
宇宙に対する憧れと共に実現するこの供養法、果たしてどのような種類があるのでしょうか。
宇宙葬・宇宙散骨の種類
バルーン葬(バルーン散骨)
遺灰を大型バルーンに収めて成層圏まで飛ばし、そこでバルーンが破裂して遺灰が空へと散っていきます。成層圏は宇宙の一歩手前ですが、広義の宇宙葬として扱われます。
費用:約20~30万円
流れ星供養(ロケット・大気圏散骨)
遺灰の入ったカプセルを人工衛星に搭載し、軌道を周回させた後、大気圏突入時に燃え尽き流れ星のように空を彩る供養です。専用アプリで軌道を確認できることも特徴です。
費用:約30~100万円以上
月面葬
カプセルに納めた遺灰をロケットで月面へ運び、安置または散骨するというものです。これまでに実施された例としては、アメリカの天文学者ユージン・シューメーカーの遺灰が知られています。
費用:約120~250万円
宇宙散骨(ディープスペース葬)
ロケットに搭載した遺灰を、地球軌道を超えて深宇宙へ送り出す方法です。果てしない宇宙を旅する供養として、壮大なスケールを持っています。
費用:約250万円~(遺灰の量やオプションによる)
宇宙葬への反対意見と倫理的な課題
宇宙葬は夢のある供養である一方で、文化や宗教的な観点から反対の声も上がっています。
アメリカ先住民族・ナバホ族は月を神聖視しており、2024年に予定されていた「ペレグリン」月面着陸ミッションにおける宇宙葬に強く反発しました。
このロケットには、約200人分の遺灰やDNAが搭載され、その中には「ジョージ・ワシントン」や「ジョン・F・ケネディ」の毛髪サンプルも含まれていました。
ナバホ族は「人間の遺体を月に送ることは神聖への冒涜」として反対し、結果的にロケットは月に到達する前に大気圏で燃え尽きたため、遺灰は宇宙空間に留まることなく消滅しました。
宇宙条約(正式名称:月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約)では、宇宙は全人類の共有財産であると定められています。
今後の宇宙葬の発展に向けては、技術だけでなく倫理や文化への配慮も欠かせない課題です。
宇宙を見上げて故人を想うというかたち
私たちは大切な人を失ったとき、「星になった」と表現することがあります。宇宙葬とは、まさにその想いを形にできる供養方法とも言えるでしょう。
空を見上げるたび、星を見つめるたび、故人を偲ぶことができる──そんな広大な宇宙そのものがお墓になるという発想
海や森が好きな人が自然の中で眠るように、宇宙に憧れを抱く人には宇宙葬という新たな選択肢があります。
宇宙という壮大なフィールドを、人生の最終章の舞台として選んでみるのも、一つのロマンではないでしょうか。



