散骨すると成仏できない?~仏教・釈迦の教えからの所見~
海や森へ還るという選択肢
自然に還る葬送としての散骨
「散骨」とは、故人の遺骨を海や森などの自然へ還す供養のかたちです。
「最期は自然に還りたい」というご本人の想いや、ご遺族の意向から、散骨を選ぶ方が近年増えつつあります。
すべての遺骨を一か所に撒くのではなく、分骨して複数の場所に撒くという選び方もあります。
たとえば
- 半分はフィリピンの海、もう半分はフィンランドの森
- 一部はお墓に納め、残りはハワイと江ノ島の海へ
というように、散骨の場所は自由に選ぶことができます。
散骨は最近注目されている自然葬のひとつですが、実は昔から行われていた葬送方法でもあります。
有名人の中にも、散骨を選んだ人は少なくありません。
有名人の散骨エピソード
アルベルト・アインシュタイン
相対性理論の発見でノーベル物理学賞を受賞したアインシュタインは、「自分の骨は海にまいてくれ」と伝えていたそうです。
彼の遺灰は、アメリカ・デラウェア川に散骨されました。
マリア・カラス
20世紀を代表するソプラノ歌手。ニューヨーク生まれ、パリで死去した彼女は、生前からの意志により、ギリシャのエーゲ海に散骨されました。
ドキュメンタリー映画『マリア・カラスの真実』でも、その様子が描かれています。
いずみたく
「見上げてごらん夜の星を」などで知られる作曲家いずみたくさんは、生前に愛した湘南・江ノ島沖に散骨されました。
ご家族が思い出の曲を口ずさみながら見送ったといわれています。
石原裕次郎
国民的俳優として知られる石原裕次郎さんも、散骨を希望していた人物のひとり。
彼が愛した湘南の海に散骨されましたが、最初は許可が得られず、一時は断念したそうです。後に遺骨の一部を散骨することができました。
hide(X JAPAN)
1998年に逝去したX JAPANのギタリスト・hideさんは、神奈川県の三浦霊園に納骨されたのち、生前暮らしていたアメリカ・サンタモニカ沖にも散骨されました。
分骨による供養の一例です。
いずれも、故人が愛した地やゆかりの場所へ還ることが選ばれており、
「想い出の地に還る」という発想が散骨の本質なのかもしれません。
自然に帰るという遺志
ビートたけしさんはテレビ番組で「お墓はどうするんですか?」と聞かれた際、
「おいらも地球上の分子なんで、地球に帰る。何も残さない。散骨でいいよ。」
と答えていたそうです。
また、元東京都知事・石原慎太郎さんも、「葬式、戒名不要。我が骨は必ず海に散らせ」という遺言を残しており、神奈川県葉山沖で海洋散骨が実施されました。
こうした話を思い出すと、夏目漱石の小説『倫敦塔』の一節が思い浮かびます。
「墓石や位牌など、死を悼むためのモノは、かえって死者の本質をゆがめてしまう。
私は死んだら墓碑も遺言もいらない。遺灰は風に撒いてくれたらそれでよい。」
漱石自身をモデルにした架空の人物のセリフですが、
死を目前にした人間の「残さない自由」や「生の意味」を問いかけるようなメッセージを感じさせます。
これからの散骨というかたち
散骨や自然葬は、今注目されている葬送のかたちですが、日本ではまだ「なじみがない」と感じる方も多いのが現実です。
しかし、古くから存在していた方法であり、有名人や文化人たちもその選択をし、家族もそれを尊重しています。
社会の意識が少しずつ変化する中で、
「海や森へ還る」ということが、もっと自然な供養方法として定着する日が近づいているのかもしれません。



