コラム1 廃棄物を燃料にしたスターリングエンジンの発電給湯システム
私はシステムを普及させるためには、エンジニアリング会社が必要だと思います。
そのエンジニアリング会社の必要性について、具体的な例で説明します。
通院している病院が、他の医療法人に買い取られ、今までのカルテが容易に使えなくなった事例です。
それは、医療システムが異なるため、カルテの様式が異なり、うまくつなげることができなくなったためです。
身近な事例では、お店によってレジでのキャッシュレスのやり方が異なる不便さがあります。
これらは、システムを作る会社、つまり、システム会社が異なるため、自分たちのルールでシステムを構築するためです。問題は、統一されたルールが無いためにシステム会社がそれぞれ、自分たちでルールを作ってしまうからです。
統一されたルールを最初に作り、それを基にシステム会社がシステムを作るようにすれば、混乱することはないのです。
黎明期はシステム会社が独自にルールを作り、開発を行いますが、発展期に移行した場合、バラバラのルールでは市場は大きくならないことは、自明です。
もう一つの問題は、ルール作りとシステム開発をシステム会社毎に行っているから、システムは高くなるのです。ルール作りは、ユーザーとの接点、ユーザーインターフェースに関わってくるので、非常に面倒です。また、部品間の通信インターフェースもルールの中で指定することで、部品の標準化が進み、互換性、価格低減化が図れます。
一言でルール作りと言っても多岐にわたり、労力がかかります。専門の会社が必要です。
それを担うのがエンジニアリング会社です。エンジニアリング会社が作成したルールに基づいて、多くのシステム会社が開発を行えば、開発費用の低減が図れ、運用時の整備においても多くの会社が参加でき、専有化によるコスト高を回避できます。
エンジニアリング会社が統一したルールをシステム会社に提供することで、システム開発費の低減、そして共通化した部品の使用により標準化が進み製造コスト、整備コストの低減が図られる。これにより、グローバルでの競争力がつくと考えられます。
それでは、エンジニアリング会社の統一したルール作りについて、このコラムで連載している移動式SE炭化炉CHPシステムを例にして説明します。
(別の言い方をすれば、移動式SE炭化炉CHPシステムを市場に展開するとき、どういう機能を持ったエンジニアリング会社を考えているかについて説明します。)
中央監視装置によるデータドリブン
移動式SE炭化炉CHPシステムはコラム3(開発検討の移動式SE炭化炉CHPシステム)を参照してください。このシステムはユーザー毎に設置している小規模分散型のため、管理も分散してしまうというのが課題です。
個別に管理するのではなく、それぞれのシステムを通信ネットワークで結び付けて、中央で管理するのが中央監視装置です。
中央監視装置の大きな機能は、各システムのデータ管理(収集と分析)を行い、整備計画(コラム1を参照)に基づいて整備を行うことです。
この運用を行うのがエンジニアリング会社です。各システムからのデータと整備計画からのデータはビックデータであり、これらを分析することでシステムの改善、改良を行うことができます。そして、新たなルールが仕様として落とし込まれ、それをシステム会社に開示していくという流れを担うのがエンジニアリング会社です。
これによりシステム会社はコストダウンも含めた開発に注力でき、エンジニアリング会社は改善、改良に向けた仕様作りに注力するという分業を行う事で安くて良いシステムを市場に提供し続けることができるのです。
エンジニアリング会社とシステム会社の役割
システム会社は、いろいろな業種の会社が担うことができます。一言で言うとシステム会社とは、移動式SE炭化炉CHPシステムをエンジニアリング会社が提示した仕様に基づいて製造し、責任をもってユーザーに販売する会社です。
システム会社はエンジニアリング会社と業務契約を結び、システム仕様書を開示してもらう。それに基づいてシステムを製造し、ユーザーに販売します。
炭化炉メーカ、制御盤などの部品会社はシステム会社として参入できるし、それ以外のIT会社など異業種で再生エネルギーの市場に参入したい会社でもシステム仕様書を入手することでシステム会社として参入できます。
エンジニアリング会社は、ユーザーと運用、整備等に関する契約を行います。
中央監視装置を用いて、データ収集、分析を行い、予防整備として必要に応じて補用品として故障しそうな部品を事前にユーザー或いは整備会社に購入してもらうようにシステム会社に情報を与えます。故障した場合には、要因分析に基づいて、システム会社経由、整備会社へ依頼が行き、エンジニアリング会社の指示のもとに整備会社が修理を行う。
エンジニアリング会社が遠隔操作で整備会社に指示を行うのは、人による品質バラツキを抑えるためです。整備する人が経験豊富かどうかにより、整備時間とその後の品質も変わってきます。そのため、品質のバラツキを抑えるために遠隔で知見の豊富な人からの指示が大切になってきます。突発的な故障を除いて、修理は予防整備の中で計画的に行うようにするのがエンジニアリング会社の大きなミッションのひとつです。
エンジニアリング会社のもう一つのミッションは、部品の標準化です。ビックデータを分析して、信頼性と整備性に優れた部品を部品メーカに仕様を提示して、製造してもらうようにすることです。そのためには、市場がある程度大きくならないと部品メーカは動いてくれませんが、そういうミッションがあるということを踏まえて、ルール作りを行うことが重要です。下図にエンジニアリング会社とシステム会社、ユーザーの関係を示します。
【コーヒーブレイク1】
人による品質バラツキを避けるために経験豊富な人に業務が集中してしまうのではないかという疑問があると思います。
その前に人材(人財の方が良いかも)不足と言われ、巷には「働き改革」というフレーズがあふれていますが、一言で改革などの大それた言葉を使わずに私は、「計画的に業務を行う」という基本を行えば良いと思っています。ここで「計画的に」とはどういうことかをもう少し、具体的に話をしますと、場当たり的に業務を行うなということです。計画的の逆を言っているだけではないかとお叱りを受けるが、このイメージを持つことが大切です。
例えば、業務には波があります。「忙しい時」と「余裕がある時」が必ずあるはずです。余裕がある時などない人ほど場当たり的に、受け身に仕事が次から次へと舞い込んできます。
受け身になっているからですね。上司と部下との関係なら受け身になるのは当たり前というが、そこの考えを変えるのです。
そのポイントが「余裕がある時」の過ごし方です。その時間を上司の先手を取る時間にするのです。一つの方法は、次にはこういう事を言われるだろうという先手を取って準備をする方法です。もう一つは、少し高度になりますが、上司に仕事をさせるのです。納得ができないこととか上司として方針を出さなくては先に進めない重要なことなど難しい質問をするのです。すぐに答えらえる上司は、普段から考えている優秀な人で、上司への判断材料にもなります。答えられない上司、お前が考えろという上司は、使えない上司であり、その場合は、恐れずにあなたの仕事ですとはっきりいう事が大切です。
以上、言いたいことは、「余裕のある時」を大切に使えるようにすれば、計画的に業務を遂行できるようになります。時間は自分で作るのです。これは私が実践してきた事柄です。
時間を作るためには計画を大切にすることです。移動式SE炭化炉CHPシステムの整備で整備計画という言葉を使用している理由です。
それから、経験豊富な人財をどのように育成するのか、というと最初は経験不足からスタートですからこれも計画的に行うことです。
エンジニアリング会社は少数精鋭
エンジニアリング会社は、固定費を下げてユーザーに請求する維持整備費を下げる必要があります。そのためには少数精鋭にする必要があります。
そのためには、システムから出てくる生のデータに触れることが大切です。それ以外にもユーザーの生の声も重要です。これに触れることで、精鋭になれる機会を得るのです。
精鋭になれるのかどうかは、その人の心構えです。
その心構えについて、私の経験から説明します。
今の若い人には、自分時間を大切にするという考えが占めています。それとは逆行する古い考えかもしれませんが、精鋭になる魔法の呪文みたいなものはありません。
最初の一歩は、仕事のことを四六時中考えることです。私の経験では、入浴中や散歩など歩いているとき、よく考えが纏まります。考えて、頭の中が良い具合に考えが発酵した時に、議論をすると良いです。議論は頭の中を掻き混ぜてくれて、発酵した考えを腐らせることなく更に発酵させてくれます。ご存じのように発酵食品は掻き混ぜて酸素を送る必要があります。それと同じです。
議論なしでは、考え(アイデア)は良い具合に発酵してくれません。
議論の代わりになるのが、自分に質問してみることです。いろいろな質問を想定して、どのように対応したら良いのかを自分の中で議論するのです。
自分の中で議論していると考えを裏付けるために何を行うべきかがわかってきます。
自分が思っていた方向に進めば良いが、そうでない場合は無駄になるのでは、と思ってはダメです。どんな作業も無駄になることはありません。勉強として後で、必ず役に立ちます。
上司から言われたことだけをやっていれば良いと受け身的な考えの人は精鋭にはなれません。常に能動的に行動していると、先手で仕事ができ、計画的に仕事ができます。
時間を自分で、コントロールできるようになります。そういう人が精鋭です。
【コーヒーブレイク2】
それでは、全員が精鋭になれるかというと、NOです。組織において、20-80の法則が成り立つと私は、思っています。
例えば、やる気のない社員20%をリストラしたとします。残った人の中でまた20-80の割合でやる気のない人が出てくるということです。
これは、ご存じだと思いますが、蟻の行動を分析した結果の法則です。
20%の人は、80%の人にとって必要な存在ということです。それで組織はバランスが取れているという事です。ですから、リストラは短期的に固定費削減に寄与しますが、中長期的に見て組織活性化に大きなマイナスとなります。元々、リストラとは欧米式の経営であり、家族主義の日本経営とはなじめない経営手法だと思います。