コラム4 エンジニアリング会社の必要性
スターリングエンジン加熱部周りの熱伝達率設計目標
スターリングエンジンの加熱部の構造に応じて、熱伝達率を上げる仕組みを開発する必要があります。
ここで検討するスターリングエンジンは、協会が推奨する米国のQnergy社のPCK80です。
熱伝達率の説明については、コラム(廃棄物を燃料にした発電給湯システム)に記載してあります。
加熱部に熱量を伝達する器材名称を決めておきましょう。伝熱するので、伝熱室と命名します。このコラムでは、伝熱室の設計目標の求め方を説明します。
スターリングエンジンの加熱部に熱量Q(以降、受熱量)を与える条件は、熱伝達率と加熱部周りの温度と加熱部表面温度との温度差ΔTとなります。
発電7(kW)に対する受熱量Qは発電端効率を28%とすると25(kW)です。
コラム(廃棄物を燃料にした発電給湯システム)に記載してある計算式から受熱量Qが25(kW)になるための熱伝達率h対温度差ΔTを計算した結果を下図に示します。
例えば、ΔT400℃の時、熱伝達率hは150(W/㎡K)となります。
PCK80の発電特性から発電7(kW)を出力するための加熱部表面温度は600℃であるからΔT400℃とは、周囲温度は1000℃となります。
伝熱室の設計目標を熱伝達率にすると、これでは抽象的で伝熱室を設計する具体的な目標を決める必要があります。熱伝達率は加熱部周りの流速Vで決まりますから、それを設計目標とします。
コラム(廃棄物を燃料にした発電給湯システム)に記載してある計算式から流速Vに対する熱伝達率hを計算した結果を下図に示します。
ここで補正係数とは、加熱部を管群として考えた場合のヌセルト数への補正値です。
例えば、熱伝達率hが150(W/㎡K)になるためには、加熱部周りの平均流速Vが10(m/s)必要となります。
これから伝熱室の設計目標は、周囲温度1000℃の時、加熱部周り平均流速Vが平均で10(m/s)になるように伝熱室を設計することとなります。
もちろん、平均流速が10(m/s)より大きくなると周囲温度の条件を下げることができます。
我々が試作した伝熱室のある箇所の流速ヒストグラムを下図に示します。
シミュレーションの条件で吸引流量は5(N㎥/min)で行いました。
試作した伝熱室の熱伝達率の実測データを下図に紹介します。
温度差ΔT400℃の時の熱伝達率150(W/㎡K)は吸引流量2(N㎥/min)で達成しており、吸引流量を上げれば、熱伝達率は250(W/㎡K)となり、温度差ΔTは200℃まで下げることができます。
無暗にPCK80を高温ガスに晒しても望んでいた発電は得られません。PCK80の持つポテンシャルを活かすためには性能の良い伝熱室を開発しなければなりません。
我々が試作した伝熱室は、PCK80を数台使用する場合に備えて、圧力損失の低減という改善の余地があります。圧力損失の低減は、吸引するファンの負担を軽減して消費電力を軽減するために必要と考えています。
スターリングエンジンを使用してみようと思った時、伝熱室という概念が必要です。
是非、お声を掛けてくれれば、NDA締結で伝熱室の具体的な設計を説明できます。
お待ちしています。