コラム3 開発検討の移動式SE炭化炉CHPシステム
スターリングエンジンを使用したシステム
廃棄物処理した時の熱など、排熱を電力と温水に簡単に変える事が出来ないかと考えている事業者の皆さんにスターリングエンジンを使用したシステムを紹介します。
スターリングエンジンの原理などは、NPO日本スターリングエンジン普及協会のホームページをご覧ください。
スターリングエンジンとは、熱を直接与える事で、発電できる発電機と考えてください。
スターリングエンジンを動かすためには冷却水が必要となり、水が50~60℃の温水になるので、それを利用することもできます。温水が不要の場合には、温水を冷却させて循環させることになります。
システム案1 廃棄物を燃料にした発電給湯システム
廃棄物を処理した排熱を利用するという考えではなく、廃棄物を重要な燃料と考えるシステムです。
これを実現するためのポイントは二つあります。
ポイント1は、廃棄物の熱量を同定します。同定にはいくつかの方法があると思いますが、シンプルな案があります。これにより、単種類の廃棄物からゴミなどの複種類の廃棄物に対応できるようにします。
ポイント2は、燃料にするということから分かると思いますが、最適制御です。最適制御を可能にするためにポイント1が重要で、これも含めたシミュレータを構築します。
廃棄物を処理する方法は、燃やす方法と炭化する方法、ガス化する方法などいろいろありますが、それぞれの利点と短所を簡単に記載します。
燃やす方法は、コンパクトに作れますが、燃焼させた時に発生する灰がスターリングエンジンの加熱部(熱を吸収する箇所)に付着するため、清掃のメンテナンスが必要となります。
炭化する方法は、SDGsという観点で外燃方式が良いです。炭化時に発生する乾留ガスを燃焼させ、その熱を利用する方法です。若干の灰が発生する可能性があり、廃棄物の種類に応じて対処を考えることが必要です。燃やす方法と比べて、脱炭素という観点で優れています。
ガス化する方法は、灰の心配は不要ですが、設備が大きくなり、コスト高となります。また、メンテナンス費用が他の方法と比べてコスト高になります。
我々が検討している開発システムは、設備を20フィートコンテナに搭載して移動できるシステムです。この観点からすると、炭化炉がシステム化し易いと考えています。
システム案2 排熱を利用したシステム
900℃以上の排熱を発電給湯に活用できないかと考えているクライアントに対して、スターリングエンジンをどのように使ったら効率的に使用できるかを提案できます。
いずれも、システムを構築する時には、スターリングエンジンの加熱部に効率的に熱量を伝熱させることが重要となります。
スターリングエンジンに効率的に熱伝達する仕組み
推奨するスターリングエンジンは米国のQnergy社のPCK80です。
これの特長は、フリーピストンでメンテナンスフリーということです。MTBFも6万時間以上です。小型で発電は7kWと高出力です。世界で多く使われており、信頼性も高いです。
小型で高出力というメリットを最大限に活かすためには、効率良く加熱部に熱量を伝達させることが重要となります。
PCK80の加熱部に効率的に熱量を与える仕組みを開発しましたので、その考え方について説明します。
加熱部へ伝熱する熱量Qは、加熱部周りの熱伝達率h、加熱部の表面積S、周囲の温度と加熱部表面温度との温度差ΔTで決まります。
Q=h*S*∆T
発電Pは、受熱した熱量Qと発電端効率ηで決まります。
P=η*Q
PCK80の発電端効率は28%~30%位です。
PCK80の発電特性は、加熱部の表面温度に対して発電が決まってきます。
表面温度600℃で発電は7kWと考えてください。
つまり、600℃より高い高温ガスが必要となり、ΔTは周囲の温度Tとすると
ΔT=T-600
となります。
この3つの式を見ると、パラメータになるのが熱伝達率hと高温ガスの温度Tとなります。
熱伝導率を大きくしてやると、高温ガス温度Tを抑えることができます。
機械構造上と信頼性、コストの面からTは抑えた方がシステムを造り易くなりますから熱伝達率hを大きくすることが重要となります。
それでは、熱伝達率hのイメージについて説明します。
暑いとき、扇子で顔を仰ぎます。これは、体の熱量を外に逃がすためです。扇子で仰ぐと言うことは、顔の周りの熱伝達率を上げていることと同じことです。
熱伝導率と間違えないでください。熱伝導率は、物質で決まる固有の値ですが、熱伝達率は、条件により変わるものです。熱伝達率を決める条件の中に熱伝導率は入っています。
扇子の説明で分かったと思いますが、熱伝達率を上げるためには風を送ることです。
熱伝達率hの計算式から、その理由を説明します。
外径dの管の周りの熱伝達率hは、管周りの熱伝導率λと熱伝達を表すヌセルト数Nuから
h=(Nu*λ)/d
と表されます。
加熱部はヒーター管の集まりで出来ているので、ヌセルト数Nuは菅群の実験式から次の式を使用します。
Nu=0.51*Re^0.5*Pr^0.37
Reはレイノルズ数で、Prはプラントル数で、それぞれ下式で表されます。
Re=(V*d)/ν
Pr=(μ*Cp)/λ
Vは管群周りの流速、νは動粘度、μは粘性率、Cpは比熱、です。
これらの式で注目して欲しいのは、レイノルズ数Reです。流速Vに影響を受ける数値です。それ以外は媒体、例えば空気の物性値、菅の形に依存するもので、流速Vを大きくすることが熱伝達率hを大きくすることに繋がるということです。
熱伝達率の単位は(W/㎡K)です。
つまり、1㎡の表面積に1Kの温度を与えると1Wの熱量が伝わるということです。
熱伝達率を向上させる仕組みについては、クライアントとして契約した時に説明させて頂きます。
システムの付加価値を高める
システムの付加価値を高める重要なポイントは、ユーザー負担の軽減です。
私は、これを「システム+(プラス)」と言っています。
ユーザー負担を軽減するサービス事業を提供するのです。そのためシステム設計とは別に考えるのではなく、システム設計の中で考える必要があります。
単に整備作業をサービス事業として捉えては、ユーザー負担を軽減することにはなりません。逆に、ユーザーに費用面の負担だけを押し付けることになりかねません。
私は、防衛宇宙で開発を経験してきました。ユーザーである自衛隊から多くのことを学ばせて頂きました。また、宇宙に関しては、一度、宇宙に飛ばした衛星を如何に管理していくかについても勉強をさせて貰いました。宇宙に行って衛星を整備することが出来ません。
故障したから現地に行って安易に修理、整備ができるという製品とは違います。
そういう特殊な製品を開発してきた経験から、整備計画というプログラムをシステム開発時に計画することが重要となるのです。
廃棄物処理に関するシステムを見ていると、システム側の都合で整備を決め、運用を当然のように休止しているのが見受けられます。
究極のシステム維持を考えていくのが整備計画です。
整備計画とは、どういうデータをどのように分析し、PDCAを回しながら故障予測と要因分析の精度を高めるものです。
故障予測の精度を高めることで、予防整備を無駄なく行えることができ、計画的な予備品の準備ができます。
要因分析の精度を高めることで、修理時間の短縮と効率的な準備ができます。
このやり方は、防衛宇宙で培った知見が役にたちますので、是非、お声を掛けてください。
提案するシステムについて
最初に記載したシステム案1の具体例を交えて、説明します。
第一ステップは、廃棄物として取り扱うのは養鶏農家から排出された鶏糞を発酵させた発酵鶏糞です。
発酵鶏糞を肥料以外の使い道として、発電給湯システムの燃料として使用するという提案です。
この開発で、20フィートコンテナに収納し移動可能、建屋不要として、廃棄物熱量の同定と最適制御、そしてシステム+(プラス)の仕組みを完成させます。
更に熱の再利用として冷暖房、冷水供給についても追及していき、付加価値の高いシステムにしていきたいと考えています。
第二ステップは、廃棄物を一般ゴミへと拡張して、移動可能という特長を活かして、災害派遣用として使用範囲を拡張します。
災害派遣ですから、地震(余震対策)、洪水についても対策を施していきます。この対策はコスト高になるので、オプションとして現在は、考えています。
システムは、汎用品を使用した構成品の組合せです。システムに魂を入れ込むソフトが開発の重要なポイントとなります。
システム開発で重要なのは、自社で全てを作り上げるという考えではなく、専門性の高い会社のポテンシャルを引き出す外注管理が重要となります。
再生エネルギー事業に関心があるが、実績がない、社内にエネルギーに関する技術がない、という会社でも外注管理も含めて、コンサルタントを行いますので、安心してお声を掛けてください。大切なのは、諦めないで、一緒に最後までやり遂げる気概です。