2025年の2月3日から2月7日の振り返り:金相場一気読み
1. エグゼクティブ・サマリーと戦略的展望
1.1. 2025年12月の歴史的転換点
2025年12月20日現在、世界の金融市場は、金融政策の劇的な転換、地政学的秩序の再編、そしてコモディティ市場におけるスーパーサイクルの到来という、歴史的な「収束(コンバージェンス)」の只中にあります。金価格は1オンスあたり4,325ドルという未踏の領域に達し、10月20日に記録した史上最高値4,381ドルを射程圏内に捉え続けています。年初来の上昇率は驚異的な59.1%に達しており、これは1979年以来、実に46年ぶりとなる記録的な年間上昇率です。この数字は、グローバル資本が「信用(フィアット)」から「実物(ハードアセット)」へと雪崩を打って逃避している現状を如実に物語っています。
本報告書は、宝飾品・地金買取サービス「リファスタ」のceoである僕の視点に基づき、単なる市況解説にとどまらず、地金・宝飾品セクターのステークホルダー、ならびに資産保全を検討するユーザーに向けた戦略的指針として執筆しました。
現在我々が目撃しているのは、従来の相関関係の崩壊です。米国のインフレ率が予想以上に低下し、日本銀行が利上げを実施しているにもかかわらず、金価格は上昇を続けています。この「アノマリー(特異現象)」は、金の価値決定要因が単純なインフレヘッジから、ソブリンリスク、中央銀行による脱ドル化、そして構造的な地政学的不安定性という複雑なマトリクスへと変容したことを示唆しています。
1.2. 市場を牽引する4つの核心的ドライバー
2025年年末のデータを包括的に分析すると、現在のバリュエーションを支える4つの主要な柱が浮き彫りとなります。
- FRB(連邦準備制度)の攻撃的なピボット:2025年12月10日をもって政策金利を3.5-3.75%の範囲まで引き下げた決定は、金のような非金利資産を保有する機会費用を劇的に低下させました。
- 日本市場における「ダブル・ハイ」現象:円相場が1ドル157.76円まで下落する一方で、国際金価格は最高値圏にあります。日本の消費者や売却希望者にとって、これは為替と相場の「掛け算」による未曾有の円建て価格高騰を意味します。
- ソブリン(国家)による蓄積:ポーランドやブラジルを中心とした中央銀行が純購入プログラムを継続しており、調査対象機関の76%が今後5年間で金準備を増加させると予測しています。これは市場価格の下値を岩盤のように支える要因となっています。
- 二次流通市場の流動性:リファスタの在庫・買取データは、歴史的な高値を利用した一般消費者によるハイブランドジュエリー(ティファニー、ヴァンクリーフ&アーペル等)や投資用地金の現金化(リクイディティ・イベント)が急増していることを示しています。
二次流通市場における結論は明確です。我々は今、歴史的な「売り手市場」の只中にいます。2026年のさらなる金融緩和サイクルが示唆するボラティリティを考慮すれば、長期的には上昇トレンドにあるものの、現在の抵抗線レベルでの利益確定は極めて合理的な選択となります。
2. 金市場のスーパーサイクル:4,300ドル時代の解剖学
2.1. 急騰の要因分解:インフレを超えた論理
金価格が1オンスあたり4,325ドルという水準で維持されている持続可能性を理解するには、その価格形成メカニズムを解剖する必要があります。伝統的に、金はインフレに対するヘッジ手段として機能してきましたが、2025年11月のデータはパラドックスを提示しています。米国の消費者物価指数(CPI)は2.7%まで低下し、市場予想の3.1%を大幅に下回りました。コアインフレ率も2.6%となり、2021年3月以来の低水準を記録しています。
正統派の経済理論に従えば、インフレの鎮静化は金の魅力を減退させるはずですが、価格が歴史的高値付近で強靭さを保っている事実は、市場が現在、消費者物価の上昇ではなく「通貨価値の構造的毀損(Monetary Debasement)」を織り込んでいることを示しています。FRBが9月、10月、12月と3会合連続で0.25%の利下げを実施したことは、厳格なインフレ目標の達成よりも労働市場の安定を優先するという明確なシグナルであり、市場はこれを実物資産に対するフィアット通貨の価値を切り下げる意思表示であると解釈しています。
また、労働統計局のデータ収集を妨げた43日間に及ぶ連邦政府のシャットダウンは、経済データに重大な不確実性をもたらしました。投資家は単に物価上昇から逃避しているのではなく、米国財政機構の機能不全リスクに対してヘッジを行っているのです。
2.2. 新たなフロア(下値支持線)としての中央銀行需要
4,000ドル台の維持を支える要因が、公的セクターによる需要です。2025年第3四半期だけで、世界の中央銀行は220トンの金を準備資産に追加し、過去5年間の四半期平均を6%上回るペースで蓄積を進めました。
| 機関/国名 | 活動タイプ | 純購入量(推定) | 戦略的含意 |
|---|---|---|---|
| ポーランド | 積極的購入 | +67トン (年初来) | ユーロ/ドル依存からの脱却と資産多様化。 |
| ブラジル | 戦略的参入 | +15トン (9月) | 2021年以来の保有増。通貨ボラティリティへのヘッジ。 |
| 世界全体 | センチメント転換 | 76%が「増加」予測 | 準備資産における米ドル比率の長期的引き下げ。 |
個人投資家や宝飾品セラーにとって、これは市場価格が大きく下落する局面では国家レベルの買い支えが入ることを意味し、3,000ドルを割り込むようなシナリオは構造的に考えにくくなっています。
2.3. 地政学的リスク・プレミアムの恒久化
2025年12月時点での地政学的景観における主要テーマは以下の通りです。
- 中東情勢の不安定化:治安悪化が定着し、原油価格やインフレ期待のボラティリティを招いています。金は主要なヘッジ手段として機能し続けています。
- ウクライナ・ロシア紛争の長期化:金融システムの武器化(制裁、資産凍結)は、非同盟諸国に対して米国債ではなく金を保有するインセンティブを与え続けています。
- 南シナ海の緊張:中国の行動と米国同盟国との摩擦は「テールリスク」を意識させており、市場は逃避資金として金を吸収し続けています。
3. 日本国内市場:独自のバリュエーション・マトリクス
3.1. 円安サイクルの継続と国内価格への波及
2025年12月19日、日本円は対ドルで157.76円まで下落しました。この円安は、日本銀行がタカ派的な転換を見せているにもかかわらず継続しており、ドル建て金価格が高いことと円安が重なる「ダブル・ハイ」によって、国内の金グラム単価は極めて高いプレミアムで取引されています。日本国内で金を保有することは、円の購買力低下に対する完璧な通貨ヘッジとして機能してきました。
3.2. 日本銀行の政策的ジレンマ
日本銀行は2025年12月19日、政策金利を0.25%引き上げ、0.75%としました。これは1995年9月以来の高水準ですが、植田和男総裁がさらなる利上げの明確な道筋を示すことを避けたため、市場は引き締めサイクルが極めて緩慢なものになると解釈し、円に対する下落圧力が継続しています。これは日米金利差が依然として圧倒的にドル有利であることを示唆しています。
3.3. リファスタの市場ポジションと責務
共起語分析によれば、「買取」というキーワードの出現回数が1,200回を超えており、消費者の関心が「保有」から「換金」へとシフトしています。特に1990年代や2000年代に購入された金ジュエリーが市場に還流しています。リファスタは、LINE査定や完全ペーパーレス化を武器に、157.76円という円安のメリットを即座に顧客に還元する体制を整えています。
4. 米国債市場と金の機会費用
4.1. 10年債利回りの分析
2025年12月19日現在、米国の10年債利回りは4.13%で推移しており、月初の4.19%からは低下トレンドにあります。市場はFRBによる2026年3月および6月の追加利下げをすでに織り込み始めており、政策金利は2026年半ばまでに3-3.25%へ低下すると見込まれています。この利下げ期待が利回りの上昇を抑制し、金の価格上昇を後押ししています。
4.2. 失業率という触媒
2025年11月の米国失業率は4.6%へと上昇し、2021年以来の最高水準となりました。この労働市場の悪化により、FRBはリセッションを防ぐために利下げを継続せざるを得ない状況にあります。労働市場の軟化は、より長く、より深い金融緩和を示唆するものであり、価値の保存手段としての金の地位をさらに強固にする強気のシグナルです。
5. 二次流通市場のダイナミクス:ダイヤモンド、宝飾品、そして「ピンク」の希少性
5.1. ピンクダイヤモンド市場:希少性によるバリュエーション
ピンクダイヤモンドは、主要供給源の閉山により「レガシー資産」としての地位を固めました。その価値は経済全体のセンチメントに左右されにくく、「ファインアート」に近い挙動を示しています。リファスタは、地金部分だけでなく、石そのものの価値を適正に評価するアプローチをとっており、鑑定書がない状態でも「ファンシービビッド」クラスのポテンシャルを見抜く知見を有しています。
5.2. 在庫トレンド:何が売られているのか?
2025年後半の入荷リストを分析すると、市場の「二極化」が明らかになっています。
| ブランド/カテゴリー | アイテムタイプ | トレンド分析 |
|---|---|---|
| Tiffany & Co. | Tシリーズ、ハードウェア | 取引量多。現行人気により高い再販価値を維持。 |
| Van Cleef & Arpels | アルハンブラ | 極めて高い流動性。二次流通では定価に近い取引も散見。 |
| Bvlgari | ビー・ゼロワンリング | 金価格の変動に対する感応度が高い。 |
| ノーブランド | K18/Pt900 喜平 | 国内グラム単価1万円超えを機に重量級チェーンの売却が顕著。 |
| ルースダイヤモンド | ラウンドブリリアント | 0.3ct-1.0ctの安定したフロー。 |
5.3. プラチナのディスコネクト(乖離)
金とプラチナの価格比は歴史的な乖離幅にありますが、12月に月次ベースで6.8%の上昇を記録したことは、追随トレードが始まっている可能性を示唆しています。
6. 戦略的予測:2026年への移行をナビゲートする
6.1. テクニカル分析:4,381ドルの天井
10月20日の最高値4,381ドルが強力な抵抗線として機能しています。これを上抜けた場合は4,500ドル、さらには5,000ドルも視野に入りますが、突破に失敗した場合は200日移動平均線(約3,494ドル)に向けた調整が入る可能性があります。モメンタム指標は「緩やかにポジティブ」であり、トレンドは健全です。
6.2. 投資 vs. 現金化(Liquidation)
- 売却(To Sell):2025年12月の現在は歴史的に見ても最適に近いタイミングです。円高が進行する前に、古いデザインや投資グレードではない資産の現金化が推奨されます。
- 購入(To Buy):日銀の利上げにより円建て金価格が一時的に調整する局面があれば、それは長期的なヘッジのための絶好のエントリーポイントとなります。
6.3. ETFフローと機関投資家のセンチメント
11月、金ETFの保有残高は21.8トン増加しました。欧米の機関投資家が市場に戻ってきたことは、ボラティリティを低下させ、市場の厚みを増すことに寄与します。
7. リファスタの運営スタンスと未来へのコミットメント
7.1. 「恐れずに行動する」企業哲学
リファスタのスタンスは、顧客に適正な価値を提供するために「リスクを取り、犠牲を払う」ことにあります。市場分析や資本配分という「地味な重労働」にコミットし、高額資産の持ち込みに対しても即座に正確な査定を行える体制を維持しています。
7.2. サービス・エコシステムの優位性
「LINE査定」により顧客は瞬時に評価額を知ることができ、最大5,000万円までの配送保険を組み合わせることで高額資産売却の摩擦を排除しています。
8. 結論
あらためてまとめます。
2025年12月は、世界的な資産価格高騰と円安が同時進行する稀有な「特異点」です。4,325ドルの金はバブルではなく、不安定化する世界におけるリスクの再評価の結果です。
Conclusion(結論)
金価格は歴史的高値を更新中。円安とドル建て価格の「ダブル・ハイ」である今が、過去最高の売り時である。
Reason(理由)
- 米国のインフレ低下と利下げ:FRBは雇用を守るために利下げを継続しており、現金の価値を下げ金を押し上げている。
- 地政学リスク:世界中の中央銀行がドルを売って金を買っている。
- 円安:日銀の利上げペースが遅いため、円安が止まらない。
Evidence(証拠)
- 金価格:$4,325。年初来 +59.1%。
- 利回り・金利:米10年債利回りは4.13%に低下。日米金利差は依然として大きい。
- 中央銀行:ポーランドやブラジルが金を大量購入。
- 現場の状況:ブランド品やピンクダイヤモンドも金相場上昇につられて評価額が上がっている。
Conclusion(まとめ)
今は確実に「高い」!
我々リファスタはこのリスクを取って高価買取を継続致します。
迷っているなら、まずはLINE査定で今の価値を知ってほしいと思います。
付録: 主要経済指標データ(2025年12月)
| 指標 | 数値 | トレンド | ソース |
|---|---|---|---|
| 金スポット価格 | $4,325 / oz | 強気(史上最高値近辺) | 1 |
| ドル/円 (USD/JPY) | 157.76 円 | 円安(国内金価格を支持) | 4 |
| 米国10年債利回り | 4.13% | 軟化(金に有利) | 1 |
| 米国CPI (11月) | 2.7% | 鎮静化(予想下振れ) | 6 |
| 日銀政策金利 | 0.75% | 利上げ(1995年以来) | 4 |
| FRB政策金利 | 3.50-3.75% | 利下げ(緩和サイクル) | 1 |
作成日:2025年12月20日



