EQとIQの違いは
EQとは
EQとはEmotional Intelligence Quotientの略で、「感情をうまく管理し、利用できる能力」を指し、ビジネスの現場において必要となる対人コミュニケーションの基本的な能力といわれています。
EQとは、自らの「今の感情の状態」を認識し、コントロールする能力のことです。この能力が高ければ、前向きな感情で適切な行動を取ることが出来ます。
また、相手の感情を認識することで、対人コミュニケーションもうまく取ることが可能になります。
EQを構成する4つの能力/5つの能力
EQは複数の能力から構成されています。
これらの能力が高いこと、またそれぞれのバランスがとれていることが、EQを適切に機能させる秘訣であると言われています。
<ピーター・サロベイとジョン・メイヤーが提唱する4つの力>
①感情の識別:自分と他者の感情を認識する能力
②感情の利用:ふさわしい行動を取るために感情を活用する能力
③感情の理解:自分や他者がそのような感情を得た原因や、その後の感情を推察する能力
④感情の調整:次の行動に合わせて、自分の感情を調整する能力
<ダニエル・ゴールマンが提唱する5つの力>
①自己認識能力(Self-awareness)
②自己制御能力(Self-regulation)
③内的な動機づけ能力(Internal motivation)
④共感能力(Empathy)
⑤社会的能力(Social skills)
EQが低い人の言動、EQが高い人の言動
EQを適切に機能させるには、複数の能力を使いこなすことが良いですが、ここでは、「②感情の利用:ふさわしい行動を取るために感情を活用する能力」や「④共感能力」を上手く使っていない場合と、上手く使った場合を比較して、EQが適切に機能させられている状態をご紹介します。
<場面>
部下が、取引業者からの請求書を持ってきて、支払いのための承認を上司に求めようとしている時のやりとりです。上司のEQが低い場合、高い場合をそれぞれ紹介します。
EQが低い人の言動
部下:A社から請求書が来ましたので、経理に支払いを依頼したいので承認をお願いします。
上司:請求書だけ持ってこられても困るなぁ。これ、見積もり内容と合っているの?前回の時も聞いたけど、何度も同じこと言わせないでよ。
部下:すみません、発注した内容は見積もりをお願いした内容から変更になったので、見積もりとは合っていません。だから、見積もりは提出しても意味はないかと思いまして。
上司:言い訳は要らない。じゃあ、どうやって承認しろって言うんだ!
・請求書だけ持って来られても困るなぁ。
→自分が不快なことを伝えている。
→部下からすると、上司が不快であることを伝えられると、不快な気持ちになる。
・これ、見積もりと合っているの?
→部下を疑って質問をしている/部下を否定的に見ている。
→部下は、自分の尊厳が軽んじられたと感じて、不快な気持ちになる。
・前回の時も聞いたけど
→前回はダメだったことを再度蒸し返している
→部下は、今回のことだけを評価してもらいたいのに、過去を引きずっていることがわかり、現在も信頼されてないと感じ不快な気持ちになる。
・何度も同じことを言わせないでよ。
→自分はちゃんと管理している、しかしあなたの管理に辟易しているということを主張している。
→部下からすると、上司がちゃんと管理しているという主張はうるさいだけ。
→部下からすると、自分の管理に辟易していると聞かされると、嫌われていると感じ不快になる。
・言い訳は要らない。じゃあ、どうやって承認しろって言うんだ!
→部下、並びに周囲を不快にさせるハラスメント的発言になっている。
一緒に仕事をしたくない、という気持ちになりますよね。
EQが高い人の言動
部下:A社から請求書が来ましたので、経理に支払いを依頼したいので承認をお願いします。
上司:請求内容が妥当かどうか、確認をした上で承認をしたいのだけど、何か証拠を教えて。
部下:最初に見積もりをとったのですが、発注内容は見積もりと異なるし・・・。そうだ、発注した内容と納品書の内容は合っているので、納品書と照らし合わせれば、請求内容は妥当だと判断できると思います。
上司:では、発注書と納品書もつけて、請求書を回してくれると嬉しいな。
部下:はい!揃えてお持ちしますね。
・請求内容が妥当かどうか、確認をした上で承認をしたいのだけど
→自分の要望を伝えている
→部下は上司の要望を叶えてあげたい、という気持ちになる。
・何か証拠を教えて
→オープンクエスチョンをしている
→部下は、自分の裁量の中で、回答する機会が与えられたことを快く感じる。
・では、・・・うれしいな。
→快の感情を伝えている
→部下は、上司の快の感情を満たしてあげたい、という気持ちになる。
一緒に仕事をしたいな、一緒に仕事をすると楽しい・成長できるような気持になりませんか。
EQの高い人と低い人の違い
EQの低い人のコミュニケーション、高い人のコミュニケーションの事例を比較して、いかがでしたか。些細な違いですし、低い人の例は「あるある」ですし、高い人の例は「できている人もいるから、これまで言われてきたようなことを実践しているかどうかだなぁ」と感じられたと思います。となると、「これからできていない人を伸ばすことってできるのかなぁ」と思われた方もいらっしゃるかも知れません。
ですが、ご安心ください。
EQは(本人がやる気になれば)、いつでも伸ばすことができます。
どうしたらEQを伸ばせるのか
EQが高い人と低い人との大きな違いは、「感情を使っているかどうか」です。言い換えれば、「感情を表出しているかどうか」です。
そこで、EQを伸ばすためには、感情を表出してもらうようにします。
なお、感情の中でも、快(ポジティブ)の感情はそのまま表出してもらうようにしますが、不快(ネガティブ)な感情については、表出方法については、トレーニングが必要です。
感情の表出方法については、世間一般では、アンガーマネジメントに代表されるように、怒りを発生させないように我慢をしたり、発生した怒りを小さくしたりするような方法が推奨されています。
つまり、全体としては、感情を表出してもらうようにしているのに、ネガティブな感情だけ抑制をする方法、言い換えれば、感情を選択的に使おうとすることなので、上手く行きません。
自己成長支援ラボ/日本メンタルマネージメント協会で推奨している方法は、「怒り」という2次感情で表出しているネガティブな感情を、「根底にある本当のネガティブ感情」である1次感情で表出してもらうようにする方法です。
この方法は、ネガティブ感情だけ抑制するのではなく、ネガティブ感情も、湧き上がってきただけ表出させていく方法ですので、無理がありません。
ハラスメントや、過度な忖度によるコンプライアンス違反などは、全て「ネガティブな感情」が影響しています。EQの能力向上によって、「ネガティブな感情」を上手く活用できるようになります。
EQの高い職場づくりに向けて
これまでのことを総合すると、個人のEQを高めると、コミュニケーション力が高まることがわかります。
従って、EQの高い職場になれば、ハラスメントとは無縁の職場が構築できるばかりか、上司や周囲に気を遣う(忖度する)ことがなくなるため、コンプライアンス的にも問題が生じにくい環境を作ることができます。
また、今流行りの、心理的安全性の高い(挑戦をしたり失敗をしたりしても、許してもらえる)職場づくりにもつながります。
EQを組織的に高めると、こんなにいいことばかり。
あなたの職場でも、EQを高める活動に取り組んでみませんか。
EQの高い職場づくりについてご相談したい方は、自己成長支援ラボにお気軽にご相談ください。