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米粉で食の可能性を広げ、新たな食文化として発信

新たな米の食文化を探求する米粉料理研究家

大塚せつ子

大塚せつ子 おおつかせつこ
大塚せつ子 おおつかせつこ

#chapter1

ごはんとして炊いて食べておいしいお米だから、余計なものを入れない引き算のパン作りを提唱

 日本の食が欧米化して久しく、パンやパスタはご飯に次ぐ主食として重宝されています。原材料となる小麦粉は生活の必需品でもありますが、輸入率は87%と供給を海外に依存している状況です。日本の食料自給率は38%まで低下し、先進国の中でも最低水準をキープしています。

 この事実に早くから警鐘を鳴らしてきたのが、グルテンフリーのクッキングスタジオを運営する「ライステラス」の大塚せつ子さんです。

 「稲穂が青々と実る田んぼは日本の原風景であり、脈々と受け継がれてきた私たちの財産です。次代につなぐためにも、お米の新たな食文化を発信していきたいと思っています」

 大塚さんが主軸とするのは、国産の米粉ときび砂糖、白神こだま酵母、米油、天然塩、水を基本とした米粉パン。素材の良さを生かした引き算のパン作りを提唱しており、その手技を習うべく全国から受講者が集います。

 2023年4月には「日本米粉クッキングアカデミー」としてリニューアル。専門性を高め、スペシャリストを目指すコースのほか、多くの人が気軽に参加できるよう1dayレッスンも用意。自宅にいながら学べるオンラインスクールも開講予定です。

 グルテンフリー料理の肝となるのは良質な米粉の存在です。大塚さんは米への深い知見と調理技術をもとに、パン用の米粉ミックス粉や米粉製品の開発、プロデュースにも携わっています。

 「お米ってそのままいただいてもおいしいし、どんなおかずにも合うでしょう。だから、パンや麺にしても当然おいしいんです。米粉の可能性は無限大。なんだかワクワクしますね」

#chapter2

何度もの失敗を繰り返して、おいしい米粉パンを作るための理論を確立

 今でこそ米粉業界の“母”と呼ばれる大塚さんですが、料理を仕事にするつもりはなく、ある出来事がきっかけで人生が大きく変わったと言います。

 「体調を崩した友人が、体質改善のため大好きなパンを控えるようになったんです。当時は無添加の商品は珍しく、たまに見つけても満足できるものは少なかったですからね。元気になってほしい一心で、力になりたいと考えました」

 一念発起して独学でパン作りを始めたところ、すぐに夢中になったという大塚さん。食べきれない分を知人に配っていたところ「売ってほしい」という声が寄せられ、国産小麦と天然酵母パンの店「サラ・ブレッドハウス」をオープン。深い味わいと健康を兼ね備えた品は瞬く間に人気を集めました。

 「事業が軌道に乗り始めたとき、小麦アレルギーのお子さんを持つお客さまに出会いました。『誰もが口にできるものを』と試行錯誤してきたはずなのに、大きな壁にぶつかった思いでしたね」

 ちょうどその頃、製粉技術の発展によって微細に製粉された米粉が手にはいり、グルテンフリーの米粉パンに挑戦し始めました。
 「まだ米粉になじみがなく、扱い方すらわからず悪戦苦闘の日々。つい水の分量を誤ってしまったのですが、期せずして米粉の理論が見えてきたのです。この瞬間、米粉パンを小麦パンの概念で作ろうとしたことが間違いだったと気付きました」

 それからは自身の数多くのの失敗を礎に、おいしい米粉パンを作るための条件を感覚でなく理論として集約し、体系化。大塚式のメソッドを誕生させます。

大塚せつ子 おおつかせつこ

#chapter3

米文化を未来につなぐために、パン工房などのプロデュースで農家を支援

 「私の教室のテーマは家庭でも同じ味が再現できること。レシピではなく“技”を伝承するので、開業を検討している方にもおすすめです。私としても米の魅力を伝える同志が増えるのはうれしいことですから、全力で応援したいですね」と笑顔を見せる大塚さん。

 米のさまざまな楽しみ方を定着させ、生産者が適切な収入を得られるよう後押していきたいとも。
 「農家さんは、65歳が若手と言われるくらい高齢化が進んでいます。後継者がいない田んぼは処分するしかなく、このままいけば日本人が古来より守ってきた米文化は消えてしまうでしょう。米作りを、ニーズの高い将来性のある仕事にする必要があります」

 その取り組みの一環として、近年は地方で米粉のパン工房などをプロデュース。米粉フードを通じて、米の価値を再認識させたいと意気込みます。集客を促せばお米の宣伝になり、作り手の収益にもつながり、地方おこしもできるという一石三鳥のプランを描いているのです。

 「先日は広島県の田万里地区のお米で米粉を開発し、ドーナツを考案しました。米粉は吸油率が低くもたれにくいので、年齢問わず手に取れると評判です。限界集落にも関わらず販売初日は約800人以上が来店し、地元ニュースでも話題になりました。私たちの財産である田んぼ=お米を安全で安心な食として、パンやスイーツ・麺・料理に活用できることを多くの皆さまに伝えていきたいと思っています。」

 「食は感動」を信条にまい進してきた大塚さん。米の可能性を信じ、日本の食文化の最前線に立つ米農家の人々にエールを送ります。

(取材年月:2023年3月)

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専門家プロフィール

大塚せつ子

新たな米の食文化を探求する米粉料理研究家

大塚せつ子プロ

米粉料理研究家

株式会社ライステラス

運営するグルテンフリークッキングスタジオでは「家でも同じ味を再現できる」をテーマにした実践的な講座を展開。また、日本各地のご当地米粉を開発しながら、考案したフードで集客を促す農家支援にも積極的。

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