2026年4月スタート「子ども・子育て支援金」

加藤一郎

加藤一郎

テーマ:社会保険

はじめに
2026年度に入り、いよいよ4月から巷では「独身税」「子無し税」と呼ばれることもある、子ども・子育て支援金の徴収が始まりました。

今回のポッドキャストでは、この新制度を入口に、社会保険料全体が重くなっている現状、4月以降に控える「106万円の壁」「130万円の壁」の見直し、そして3月に厚生労働省が発出した「国保逃れ」スキームへの規制通達まで、幅広く触れました。本稿ではその内容を制度面から補足し、数字と事実関係を確認していきます。

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1.「子ども・子育て支援金」とは何か
税ではなく「社会保険」として徴収
子ども・子育て支援金は、少子化対策の財源を確保するために、医療保険料に上乗せする形で徴収される新しい拠出金です。2024年6月に成立した子ども・子育て支援法等の改正で創設され、2026年4月分の保険料から徴収が始まりました(被用者保険の場合、5月支給の給与から天引きされるのが一般的です)。

ここで押さえておきたいのは、これが「税金」ではなく「社会保険料」として位置づけられているという点です。ポッドキャストでも触れたとおり、会社員の場合は**労使折半**の考え方が適用され、個人負担分と同額を企業も拠出します。

負担額:ポッドキャストで紹介した数字の出どころ
ポッドキャストで「年収200万円で月192円、年収1000万円で月約950円」という数字をご紹介しましたが、これはこども家庭庁が公表している令和8年度(2026年度)の試算どおりです。

年収 本人負担分(月額)
200万円 192円
400万円 384円
600万円 575円
800万円 767円
1,000万円 959円


(出典:こども家庭庁「被用者保険 年収別の支援金額の試算(令和8年度)」)

算出式はシンプルで、「年収(標準報酬総額)× 0.23% ÷ 12 × 1/2」です。0.23%が令和8年度の一律支援金率で、その半分(0.115%相当)を本人が負担します。会社負担分を合わせると、上の表の数字がそのまま倍になります。

段階的に引き上げ──2028年度が本番
ポッドキャストで「来年再来年と金額が上がっていく」と触れたとおり、この制度は3年かけて段階的に料率を引き上げる設計になっています。こども家庭庁の資料では、医療保険加入者一人あたり平均月額で、2026年度が約250円、2027年度が約350円、2028年度が約450円と見込まれています。

2028年度の年収別試算も公表されており、たとえば年収1,000万円の被用者保険加入者であれば、月額約1,650円(年額約2万円)の本人負担が見込まれています。会社負担分を合わせれば年間4万円規模です。

何に使われるのか──「加速化プラン」6施策
集められた支援金は、2023年12月に策定された「こども未来戦略 加速化プラン」のうち6つの給付拡充に充てられることになっています。

1. 児童手当の拡充(所得制限撤廃、高校生年代まで延長、第3子以降は月3万円)
2. こども誰でも通園制度(2026年4月から給付化)
3. 妊婦のための支援給付(出産・子育て応援交付金、2025年4月開始)
4. 出生後休業支援給付(両親育休時に手取り10割相当、2025年4月開始)
5. 育児時短就業給付(2歳未満の子の時短勤務時、賃金の10%、2025年4月開始)
6. 国民年金第1号被保険者の育児期間保険料免除(2026年10月から)

つまり、支援金は既に先行している給付を含め、児童手当や育休給付の拡充の財源となっているわけです。

2.「独身税」という呼び方をどう捉えるか

政府の説明──「全世代で支える仕組み」
ポッドキャストでも「独身税」「子無し税」という呼称をめぐってやり取りがありました。こども家庭庁は、この制度を「社会連帯の理念に基づき、全世代・全経済主体が子育て世帯を支える分かち合いの仕組み」と位置づけています。独身者だけでなく、子育てを終えた世代、後期高齢者(75歳以上)、企業(事業主拠出)もみな負担する設計になっていることが根拠です。

「実質的な負担は生じない」という政府説明の含意
こども家庭庁の資料には、「社会保障の歳出改革等を行うことで支援金による負担は相殺され、実質的な負担は生じない」という記載があります。これは制度設計の前提として、歳出改革と賃上げによって社会保険負担軽減効果を生み出し、その範囲内で支援金を徴収するという考え方です。

ただし、個人の家計で見たときに、給与明細から天引きされる金額が増えるのは紛れもない事実です。歳出改革の効果が実感できるかどうかは、ほかの保険料や物価の動きに大きく左右されるため、ここはポッドキャストで話したとおり「モヤモヤが残る」論点だと言えます。

3. 背景にある重い社会保険料負担
ポッドキャストで繰り返し指摘したとおり、問題は支援金単体の金額ではなく、社会保険料全体の負担が既に相当重いという点にあります。

- 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料(40歳以上)
- さらに所得税・住民税、消費税
- そこに物価上昇、都市部での住宅コスト上昇

可処分所得が伸びにくい環境のなかで、少額とはいえ新たな負担項目が増えることへの心理的な抵抗感が「独身税」という言い方に現れているのだと思われます。

前回のエピソードで触れた「4月から6月の働き方で標準報酬月額が決まる」話も、この文脈に直結します。春の働き方が秋以降の手取りに響くので、負担の"見える化"はこれからより重要になってきます。

4. 同時並行で進む「年収の壁」の見直し
ポッドキャストの後半で触れた「106万円の壁」「130万円の壁」も、4月以降に大きな動きがあります。

106万円の壁は「撤廃」へ
2025年6月13日に成立した年金制度改正法により、短時間労働者の社会保険加入要件のうち、月額賃金8.8万円以上(=年収約106万円)という賃金要件は廃止されることが決定しました。施行時期は「公布から3年以内の政令で定める日」とされており、2026年10月を目処と報じられています。

最低賃金が大幅に上昇したことで、週20時間働けばほぼ自動的に月8.8万円を超えるようになっており、賃金要件を置く意味が薄れたことが理由です。ただし、週20時間以上という時間要件は維持されるため、ポッドキャストで触れた「時間ベースへの切り替え」という理解で概ね合っています。

130万円の壁は「労働契約ベース」で判定へ
2025年10月の厚労省通達により、2026年4月1日から、配偶者や親の扶養として認定されるかどうかを判定する際に、労働条件通知書などの労働契約の内容に基づく見込み年収で判断する取り扱いが導入されました。

ポイントは、残業代のような臨時収入は原則として年収判定に含めないことです。これにより、年末にシフトを削って調整する、いわゆる「働き控え」を減らす効果が期待されています。なお従来の実績(給与明細・課税証明書等)による判定も引き続き利用でき、労働者は有利な方を選べる設計です。

(※なお「事業主の証明による一時的な収入増の特例」は2023年10月からすでに運用されており、こちらは繁忙期などの一時的超過に対応する仕組みです。)

5.「社会保険料削減ビジネス」への厚労省通達(2026年3月18日)
ポッドキャストの最後で、国会議員が一般社団法人の理事に就任して国民健康保険料を回避していた問題と、個人事業主向けの「マイクロ法人スキーム」の話に触れました。この2つは似て非なるもので、今回の通達が直接の対象としているのは前者のタイプです。

通達が対象にしているスキーム
厚生労働省は2026年3月18日付で「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」(保保発0318第1号/年管管発0318第1号)を発出しました。この通達が主に想定しているのは、事業者が運営する一般社団法人等に会費を払って形式的に理事に就任するタイプの仕組みで、「社会保険料削減サービス」「社会保険料削減ビジネス」などと呼ばれてきたものです。

典型的な構造は次のとおりです。

- 個人事業主・フリーランスが、業者が運営する一般社団法人の理事などに就任
- 加入者は法人に会費を支払い、法人からは低額の役員報酬を受け取る
- これにより、国民健康保険から協会けんぽ等の健康保険(労使折半)へ切り替える
- 国保よりも保険料を年間数十万円圧縮できる、と勧誘されてきた

通達で示された具体的な判断基準
通達は「法人に使用されている実態がない者は被保険者資格を有さない」とし、その判断基準を以下のように具体化しました。

- 会費が役員報酬を上回る場合は健康保険等への加入要件を満たさない
- 役員としての報酬が業務の対価としての経常的な支払いと認められない場合
- 業務が勉強会への参加やアンケートへの回答程度にとどまり、具体的な指揮監督の実態がない場合

このような場合は、被保険者資格の喪失手続きを取らせ、本来の国民健康保険等に戻す扱いとなります。日本年金機構が国保逃れへの関与が疑われる事業者を調査することも明示されました。

マイクロ法人スキームとの違い
一方、個人事業主自身が合同会社や株式会社を立ち上げて代表に就き、自分に少額の役員報酬を出して健康保険・厚生年金に加入する、いわゆる「マイクロ法人スキーム」は今回の通達の直接の射程ではありません。自分で設立した法人には「会費」という概念が存在せず、通達の主要な判断基準(会費 > 役員報酬)に当てはまらないためです。

ただし、「形式ではなく実態で判断する」という考え方自体は古くから存在する原則(昭和24年の通達以来)で、マイクロ法人であっても実態のない法人、労務の対価とは言えない報酬設定であれば、同じ論理で被保険者資格を否認される可能性は残ります。この領域については、ポッドキャストで触れたように、また別の機会にお話しできればと思います。

根本問題は国保料の重さ
ポッドキャストでも話したとおり、個人事業主・フリーランスの国民健康保険料の重さ(年間100万円近くになるケースもある)が、こうしたスキームを生み出してきた土壌にあります。通達は特定のビジネスモデルを封じるものですが、国保の負担構造そのものをどうするかという議論とは切り離せません。

まとめと次回予告
今回のテーマを一言でまとめると、ポッドキャストで話したとおり「どの立場の人にとっても負担が重い」という状況が続いている、ということです。

- 子ども・子育て支援金は2026年4月開始、2028年度まで段階的に料率引き上げ
- 使途は児童手当拡充など加速化プランの6施策
- 政府は「実質負担ゼロ」と説明するが、給与明細上は確実に負担増
- 106万円の壁撤廃、130万円の壁の契約ベース判定も並行して進行
- 一般社団法人の理事就任による社会保険料削減ビジネスには3月18日通達で規制強化(マイクロ法人スキームは直接の対象ではない)

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事情への適用にあたっては社会保険労務士・税理士などの専門家にご相談ください。

ポッドキャストもぜひお聞きください

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加藤一郎
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加藤一郎(公認会計士)

加藤会計事務所

大手監査法人で多くの企業支援の経験をもとに、仕組み作りで、経営改善や成長に貢献します。創業やIPO、事業承継など企業のさまざまなステージもサポート。個人向けの相続対策・申告にも力を入れています。

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