相続税がいくらかかるか、事前に概算で把握しておきましょう。
相続における財産評価において、通称、「家なき子特例」という特例があります。
文字通り、「家を持たない相続人」が被相続人が居住していた居住の用に供されていた不動産を相続した場合、その宅地について一定の要件をもとに最大80%評価額を減額できる特例です。
また、通称「空き家譲渡特例」とは、被相続人の居住用財産(空き家)を売却時した際に譲渡所得から3000万円(相続人3名以上の場合は2000万円)まで控除できる特例です。なお、今のところ適用は令和9年12月31日までとなっています。
この「家なき子特例」と「空き家譲渡特例」は、一定の場合、セットで使用することができるため、うまくはまれば、相続税と譲渡税の両面で負担を軽くすることができます。
代表的な例としては、
親:1人暮らしの戸建てに居住
子:賃貸暮らし(持ち家なし)
が挙げられます。
このとき、相続時に家なき子特例で相続宅地の80%評価減 ⇒ 相続から3年を経過する日の属する年末までに売却(1億円以下)で空き家譲渡特例を適用という流れです。
各特例の適用要件は以下の通りです。
家なき子特例(小規模宅地等:居住用330㎡まで評価80%減)
1) 取得者(相続人)に関するチェック
・相続開始前3年以内に、自分/配偶者/三親等内親族/特定関係法人が所有する家屋に住んでいない(被相続人宅は除く)。
・相続開始時点で、相続開始前のいずれの時においても自分の持家を所有していない(賃貸・社宅等に居住)。
・相続税の申告期限(原則10か月)まで保有を継続できる。
2) 被相続人側の状況チェック
・被相続人の自宅(居住用宅地)である。
・被相続人に配偶者や同居相続人がいない(※他の区分の適用関係に注意)。
3) 効果と上限
居住用宅地の評価80%減を見込める。上限330㎡(合算ルールあり)。
NGになりがち
・相続税の申告前に売却してしまう(保有要件不充足)。
・「3年ルール」を本人・配偶者だけと誤解(三親等内親族+特定関係法人の所有家屋も含む)。
空き家譲渡特例(相続空き家の特別控除:原則3,000万円)
1) 物件の基本要件
・昭和56年5月31日以前に建築された一戸建て(区分所有=マンション等は不可)。
・相続開始直前、被相続人以外の居住者なし。
・老人ホーム入所ケースは、従前居住用家屋の要件に当てはまる。
2) 譲渡(売却)の条件
・相続から3年を経過する日の属する年の12/31までに売却できる計画。
・売却代金1億円以下(分割売却や他の相続人の売却も合算で判定)。
・譲渡まで(または取壊しまで)居住・貸付・事業利用は一切しない。
3) 耐震・除却の扱い
以下のいずれかを満たす:
・譲渡時に耐震適合の家屋+敷地で売る、または
・先に取壊し、敷地で売る、または
・令和6年以後の譲渡なら、譲渡後~翌年2/15までに耐震化 or 除却(買主が工事でも可)。
実質的には、建物の取り壊しでしょうか。
4) 控除額と期間
・控除額は3,000万円(相続人3名以上のとき2,000万円)。
・適用期間:平成28年4/1~令和9年(2027)12/31の譲渡。
NGになりがち
・相続後に一度でも住む/貸す/事業利用する。
・マンション(区分所有)を対象にしてしまう。
・期限を「3年以内」とだけ覚えて年末締切を逃す。
・1億円超(分割や他相続人分も合算)で後日修正申告に。
“ダブル活用”(同じ不動産で両方ねらう)時の段取り
・相続直後:相続人の居住実態(直近3年)を整理/賃貸契約・住民票など証拠を準備。
・相続税申告まで(原則10か月):家なき子の保有要件を守りつつ、申告で小規模宅地等を選択。
・売却計画:期限(3年経過年の年末)・代金(1億円以下)・耐震/除却の方法と時期を前倒しで決定。
・確定申告:空き家特例の被相続人居住用家屋等確認書ほか必要書類を添付。
いかがでしたでょうか?色々と要件があり複雑ですが、両方の特例を適用できれば効果は大きくなります。
条件に当てはまりそうだなと思う方は、ぜひ、一度ご検討ください。



