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売上が10%増加もしくは減少したとき、利益はどれ位増加もしくは減少するか分かりますか?
売上高が10%増加(減少)したとき、利益も10%増加(減少)するわけではありません。
これを理解するためには、会社の利益構造を把握する必要があります。そして、会社の利益構造を明らかにする魔法のようなツール、それが、「変動損益計算書」です。
変動費と固定費、その違いが利益を左右する
通常の損益計算書では、売上高から売上原価、販売費・一般管理費を差し引いて営業利益を算出します。
しかし、変動損益計算書は、費用を変動費と固定費の2つに分けて考えます。
これにより、売上の増減に対する利益の増減をシミュレーションできるようになります。
・変動費:売上の増減に比例して変動する費用
例:原材料費、仕入代、外注費、販売手数料など
・固定費:売上の増減に関係なく、一定額で発生する費用
例:人件費(給与)、家賃、減価償却費、広告宣伝費など
限界利益と貢献利益、2つの「利益」で経営判断が変わる
変動損益計算書では、この変動費と固定費の概念を使って、2つの重要な利益を算出します。
・限界利益:「売上高」から「変動費」を引いたもの
この利益は、会社が本業でどれだけ稼ぐ力があるかを示します。限界利益率(限界利益÷売上高)が高ければ高いほど、商品やサービスに価格競争力があると言えます
・貢献利益:「限界利益」から「固定費」のうち、その事業・製品・サービスに直接関連する「個別固定費」を引いたもの
この利益は、特定の事業や製品が会社全体の利益にどれだけ貢献しているかを評価するのに役立ちます。不採算事業の撤退判断や、新規事業の損益分岐点を予測する際にも有効です
変動損益計算書で利益をシミュレーションする
売上高が10%増加した時に、利益がどうなるか、変動損益計算書を用いてシミュレーションしてみましょう。
なお、ここでは、単一の事業を想定し、貢献利益=営業利益としています。
売上高が10%増加すると、変動費も連動して10%増加しますが、固定費は一定のままです。
この特徴があるため、変動費と固定費を分けて把握する必要があります。
以下の例では、売上高が10%増加すると、営業利益は22.5%増加することになります。
変動損益計算書を活用して、経営を改善しよう!
変動損益計算書は、単に利益をシミュレーションするだけでなく、様々な経営判断に役立ちます。
1.損益分岐点の把握
「限界利益率」から、いくら売れば赤字にならないか(損益分岐点)を正確に計算できます。目標売上を設定する際の重要な指標となります。
例えば、上記の例では、限界利益率は45%であり、損益分岐点売上高は、約555(固定費250÷0.45)となります。
2.不採算事業の発見
貢献利益がマイナスになっている事業は、どれだけ売上を伸ばしても会社全体の利益を圧迫している可能性があります。
3.価格設定の最適化
商品の価格設定や割引キャンペーンの効果を、限界利益の視点から検証できます。
変動損益計算書を導入することで、会社はより戦略的な経営判断を下せるようになります。当事務所では、貴社の現状に合わせた変動損益計算書の作成・分析をサポートいたします。お気軽にご相談ください



