40代・50代が今からやるべき相続対策とは? 準備4

加藤一郎

加藤一郎

テーマ:相続

40代・50代が今からやるべき相続対策とは? 準備4は、「相続税を減らすには?生前贈与と特例制度を上手に活用する方法」です。

■相続税は”準備次第”で大きく変わる
「うちは相続税がかかるほど財産はないから...」
 そう思っていたご家族が、実際に申告してみたら思った以上に税金がかかるというケース、少なくありません。

相続税は、財産の種類、評価方法によって大きく変わるうえ、精度を知らずに損をすることもあります。

今回は、40~50代の方が親の相続に備えるうえで押さえておきたい「生前贈与」や「相続税の特例制度」についてわかりやすく解説します。

■生前贈与とは?相続前にできる”財産移転の手段”
・生前贈与の基本:年110万円なら非課税
 生前贈与とは、相続が起こる前に、親から子や孫などに財産を渡すことです。
 最も有名なのが「暦年贈与」
 これは、1人につき年間110万円までなら非課税で贈与できる制度です。
 
 例:親が子2人に毎年110万円ずつ贈与 → 年年220万円を税金ゼロで移転可能

 ポイントは、「110万円いないであれば申告不要」という点です。
 ただし、毎年”定期的に贈与”していると、「連年贈与」として課税される可能性もあるため注意が必要です。

・相続時精算課税制度も選択肢(2024年改正)
 「相続時精算課税」は2500万円までの贈与について贈与税がかからない制度ですが、
相続時にその分を合算して相続税を計算する方式です。

 2024年の改正により、この制度におてい「110万円までの毎年の非課税枠」が使えるようになり、より活用しやすくなりました。

 ただし、一度この制度を選ぶと撤回できず、適用対象者も限られるため、事前に十分に考えておくことが必要と言えます。

■教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税制度
①教育資金贈与の特例
 ・祖父母、父母→子、孫などへの贈与が対象
 ・上限:1,500万円(学校外の教育は500万円まで)
 ・金融機関に専用口座を開設し、領収書で使途確認が必要
 
②結婚・子育て資金贈与の特例
 こちらも要件を満たせば、一定額まで贈与税が非課税になりますが、教育資金贈与に比べて対象範囲が狭く、近年は縮小傾向にあります。

 これらの制度は、現行の法律では期限があり、期限延長の保証はありません。また、専用口座の開設や使い切らなかった残額は贈与税課税されるなど、要件が色々とあり利用する場合には十分な検討が必要です

■小規模宅地等の特例|不動産相続の”命綱”
相続税で負担が大きくなりやすいのが不動産です。
小規模宅地等の特例は、自宅や事業用地の宅地等の評価額を最大80%減額できる強力な制度です。
・被相続人の自宅(特定居住用宅地等)
 同居していた配偶者や親族が相続した場合、一定の要件を満たせば(配偶者は必ず)、80%減額できます。
 例:評価額5,000万円の宅地 → 特例適用で評価額1,000万円に

■生命保険の非課税枠を活用する
 生命保険金は、「500万円 × 法定相続人の数」までは相続税がかからない非課税枠があります。
 例:相続人3人 → 500万 × 3 = 1,500万円まで非課税

 しかも、生命保険金は“受取人固有の財産”として扱われ、他の財産と異なり分割トラブルにもなりにくいため、遺産分割・納税資金対策としても非常に有効です。
 
■まとめ|早めの確認が一番の対策
相続税は、知識があるかないかで「納税額が数百万円違う」ことも珍しくありません。
生前贈与や特例制度は、親が元気なうちに計画的に動くことで、もっとも効果を発揮します。
「相続=亡くなった後の話」と思わず、“相続は生前の対策がすべて”と考えるくらいでちょうど良いのです。




 

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加藤一郎
専門家

加藤一郎(公認会計士)

加藤会計事務所

大手監査法人で多くの企業支援の経験をもとに、仕組み作りで、経営改善や成長に貢献します。創業やIPO、事業承継、相続など企業のさまざまなステージもサポート。個人向けの相続対策・申告にも力を入れています。

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