相続税がいくらかかるか、事前に概算で把握しておきましょう。
「40代・50代が今からやるべき相続対策」シリーズの2回目です。
準備2|遺言者の有無と親の意向を確認する
相続が“争族”に発展してしまう大きな原因の一つが、親の「本当の意向」が分からないまま相続が始まることです。
「自宅は長男に継がせるつもりだった」
「介護していた娘には多めに残したかった」
「法定相続分ではなく、実情に応じて分けたいと思っていた」
──こうした親の気持ちが、何も文書に残されていなければ、法的には“なかったこと”として扱われます。
つまり、どれだけ親の口から「こうしたい」と語られていても、遺言書がなければ、相続人全員の合意が必要となり、対立が起きるリスクが一気に高まるのです。
■よくある相続トラブルの実例と背景
ケース①:「家は長男に」のつもりだったが…
親は「実家は長男に相続してほしい」と思っていたが、遺言は作成しておらず、相続人である兄弟全員で遺産分割協議をすることに。
次男・三男は「家は売って現金で分けたい」と主張し、親の希望は叶わなかった。
ケース②:「介護をした娘に多く残したかった」が反映されず
長女が同居し、介護の負担を担ってきたが、相続は法定割合(他の兄弟と同じ1/3)で行われた。
長女は「不公平だ」と感じ、兄弟関係が悪化。他の兄弟は「親から聞いていない」と主張し、平行線に。
ケース③:口約束だけで実行されなかった生前贈与
「この通帳はお前のために貯めたものだ」と親が言っていた預金も、贈与契約書や証拠がなかったため、全額が相続財産として課税対象に。
■親の意向を明確にするには「遺言書」が最も有効
「親の希望」を確実に伝え、実現させるには、法律上の効力を持つ“遺言書”を作成しておくことが最も確実な方法です。
遺言書には主に以下の2種類があります。
・自筆証書遺言 親が自分で書く形式。費用がかからず手軽。ただし形式不備で無効になるリスクが高い。
・公正証書遺言 公証人の立ち会いで作成。原本は公証役場に保管され、紛失・改ざんの心配がなく、確実に実行可能。
特に、高齢で判断能力の変化が心配される場合や、家族関係が複雑な場合は「公正証書遺言」がおすすめです。
■遺言書に書ける内容とは?
・誰にどの財産を渡すか(特定財産承継)
・相続人以外に遺贈する(例:孫、内縁の配偶者など)
・遺言執行者の指定(スムーズな手続きのために有効)
書き方によっては逆にトラブルになることもあるため、専門家(司法書士など)のサポートを受けて作成するのが安心です
■ 「親に遺言の話を切り出せない」ときのアプローチ
「うちの親は頑固だから…」
「縁起でもないと言われそうで言い出せない」
そんなときは、次のような自然な流れで話題に出してみましょう
・「最近、終活セミナーに行ったら遺言の話が出てね…」
・「〇〇さんの家で相続でもめた話を聞いて…うちは大丈夫かなと思って」
・「万が一のときに家族が困らないように、考えておきたいんだけど」
親のことを大切に思っているからこそ、「準備しておきたい」という姿勢で伝えることが大切です。
■まとめ|親の「希望」を言葉にし、形にすることが家族の絆を守る
相続の準備において、最も重要かつ見落とされがちなのが「親の気持ちを可視化すること」です。
・思い込みや口約束だけでは、法律的な効力は持たない
・遺言書は、親の意思を明確に伝える「最後のメッセージ」
・早めの話し合いと、書面化された準備がトラブルを防ぐカギ
「遺言はまだ早い」ではなく、「遺言があるからこそ、安心して今を生きられる」──
そんな前向きな位置づけで、ぜひ準備を始めてみてください。



