40代・50代が今からやるべき相続対策とは? 準備1

加藤一郎

加藤一郎

テーマ:相続

「相続のことを親に話すのは、まだ早い気がする」
「兄弟姉妹でお金の話なんて、ちょっと気が重い」

そんな風に思っていませんか?

「親が元気なうちは話しずらい」、「気まずくなるのが怖い」という声をよく聞きます。

しかし、相続の準備が何もできていないまま親を亡くすと、「財産の分け方が分からない」「税金が高くて払えない」、「兄弟間でもめてしまった」というったトラブルに発展するケースが少なくありません。

40代・50代は、親の年齢が70代・80代になる時期。
相続はまだ先...と思っていても、「準備できる時間」は限られています

お盆で帰省される方も多いと思いますが、ご家族で話す良いタイミングかもしれません。

今回から4回シリーズで、”家族がもめず”、”税金でも損しない”ために、40代、50代のうちにやっておきたい4つの準備をご紹介します。今回は、その1回目です。

準備1|「親の資産と負債の棚卸をしておく」

相続が発生した瞬間に困ることの多くが「何をどれだけ持っていたか分からない」ことから始まるのです。
・「通帳が見つからない」
・「借金や保証人になっていたことを知らなかった」
・「株や保険の存在が分からず、手続きが遅れた」

相続をスムーズに進めるには、親が元気なうちに「資産と負債の棚卸 = 見える化」をしておくことが、最初の一歩となります。
■資産の棚卸|何をチェックする?
①現預金・金融資産
・普通預金、定期預金、ゆうちょ口座
・株式、投資信託、債券、外貨預金
・ネット銀行(見落としがち!)
通帳や証券口座の一覧を作成し、「どこにいくらあるか」を把握しましょう。
講座の解約・名義変更のためには金融機関ごとに手続きが必要になるため、漏れがないようにしておくことが重要です。

②不動産(土地・建物)
・自宅、別荘、賃貸アパート、農地
・親名義のまま放置されている空き地や古家
登記簿や固定資産納税通知書でも確認しておきましょう

③保険・年金関連
・生命保険(受取人や契約者名義も確認)
・個人年金、企業年金、共済、退職金
生命保険は「受取人固有の財産」となるため、遺産分割の対象外ですが、手続きを忘れると保険金を受け取れません。
契約内容と保管場所を把握しておくことが必要です。

④その他の財産
・貴金属、美術品、骨とう品、車、農機具など
・タンス預金や貸金庫の中身
・友人、親族への貸付金など(賃借証書があるか?)
書面のない貸付金や共有財産も、相続人の間での争いの火種になりやすいため、文書やメモで明文化しておくことが望ましいです。

■負債の棚卸|借金や保証も相続の対象です
・住宅ローン、カードローン、事業用借入
・税金の滞納、未払金
・他人の借金の連帯保証
相続は、資産だけでなく負債も承継されるため、借入状況や保証人履歴を事前に確認しておくことが非常に重要です。
相続開始後に多額の借金が見つかった場合、「相続放棄」や「限定承認」などの判断を短期間で迫られます。

■ 財産一覧を作る方法|Excel or 紙のメモでOK
以下のような形式で、親と一緒に資産・負債のリストを作成することが大切です。
可能であれば、家族間でコピーを共有しておくと理想的です。

【例:財産メモ(簡易版)】
金融資産
・〇〇銀行 普通預金:123-456789(約300万円)
・△△証券 株式(トヨタ50株 他)

不動産
・〇〇市〇〇町1-2-3(自宅)持分100%

保険
・□□生命保険:受取人→長男、契約者→父

負債
・住宅ローン残債:約800万円(〇〇銀行)
・連帯保証:叔父の事業融資(残債不明)

備考
・貸金庫:〇〇信用金庫

■ まとめ|「何があるか分かっている」だけで相続は9割スムーズに
「通帳の場所が分からない」
「不動産が親の名義のまま」
「保証人になっていたとは知らなかった」

相続で起こるトラブルの多くは、“知らなかったこと”が原因です。

親が元気な今だからこそ、一緒に財産を棚卸しする時間をとることが、家族にとって何よりの安心につながります。

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加藤一郎
専門家

加藤一郎(公認会計士)

加藤会計事務所

大手監査法人で多くの企業支援の経験をもとに、仕組み作りで、経営改善や成長に貢献します。創業やIPO、事業承継、相続など企業のさまざまなステージもサポート。個人向けの相続対策・申告にも力を入れています。

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