猫のブラッシングに適したおすすめブラシは?長毛・短毛別に選び方やコツを解説

中澤光恵

中澤光恵

テーマ:ペットのお手入れ

横になった猫にブラッシング

猫さんにブラッシングをしようと思っても、お店に行くとさまざまなブラシがあって、何を使えばよいのか迷う飼い主さんも多いのではないでしょうか。

実際、ペットシッターとして多くのご家庭を訪問する中で、ブラッシングに関する相談はよく聞かれます。
あなたの猫さんに適したブラシを使わないと、痛みや不快感を与えてブラッシング嫌いにしてしまうかもしれません。

この記事では元トリマーで現役ペットシッターである筆者の経験をもとに、各ブラシの用途や特徴の解説、猫さんの被毛について、被毛の長さによるブラシの選び方、そして基本的なブラッシング方法まで、実践的な情報を詳しくお伝えします。

正しい知識と適切な道具を使えば、ブラッシングは必ず猫さんとの楽しいコミュニケーションの時間に変えられます。
猫さんの健康と美しい被毛を保ちながら、より深い絆を築くために、ぜひこの記事を参考にしてください。


猫の被毛について


猫チンチラにブラッシング

猫さんの被毛について知っておくと適切なブラシを選べるようになりますので、知っておいてくださいね。

猫さんの被毛は単に見た目を美しく保つためのものではなく、猫さんの健康や快適な生活に直結する重要な役割を担っています

主な役割は、以下のとおりです。

  • 外的刺激から皮膚を守る
  • 体温を調整する
  • 感情表現(主に威嚇)



猫さんの被毛はダブルコートとシングルコートとあり、次のような違いがあります。

  • ダブルコート:「オーバーコート(上毛)」と「アンダーコート(下毛)」の2層構造
  • シングルコート:アンダーコートがほとんどなく、オーバーコートのみ


オーバーコート(上毛)は比較的太くて硬く、外部からの水や汚れをはじいたり、紫外線から皮膚を守る役割を持っています。

一方アンダーコートはふわふわと柔らかく、断熱材のように体温を保つ働きがあります。

長毛種や寒冷地原産の猫さんはアンダーコートが密集していて、抜け毛の量も多くなるのでブラッシングは必須です。

年に2回「換毛期」と呼ばれる毛の生え替わりの時期があり、春には冬毛が抜け落ちて夏毛に、秋には夏毛が抜けて冬毛に生え変わります。
この時期には抜け毛が急増し、毛玉や毛球症のリスクも高まるため、特にこまめなブラッシングが求められます。
長毛種、短毛種問わず行いましょう。

さらに、猫は清潔好きな動物であり、自分で頻繁に毛づくろいを行います。
その際に多くの毛を飲み込んでしまい、体内で毛球(ヘアボール)を形成することがあります。

通常は嘔吐によって排出されますが、体内に毛球が溜まってしまうと食欲不振や便秘などの体調不良を引き起こす可能性もあります

毛球を防ぐためにも、飼い主さんによる適切なブラッシングが不可欠です。


猫用ブラシの種類


ピンと獣毛のブラシでブラッシング

猫用ブラシにはさまざまなタイプがあり、それぞれ異なる目的と特徴を持っています。
猫さんの毛質や被毛の長さ、性格、そしてブラッシングの目的に応じて適切なブラシを選ぶことが、効果的なケアの第一歩となります。

元トリマーとして、またシッティングでブラッシングを依頼され、さまざまなブラシを使用してきました。
その経験を元に、ここでは以下の主なブラシについて、特徴と使い方を詳しく解説していきます。

・スリッカーブラシ
・ピンブラシ
・コーム
、獣毛ブラシ
・アンダーコート除去ブラシ
・グローブタイプのブラシ

ブラシ選びの参考にしていただければ幸いです。


スリッカーブラシの特徴と使い方

スリッカーブラシは、くの字に曲がった細い針金状のピンが密集したブラシで、短毛種・長毛種問わず猫さんのケアに欠かせないアイテムです。

このブラシの特徴は被毛の奥深くまでピンが届き、もつれた毛や頑固な毛玉を効率的にほぐせることです。ピンが非常に細かく配置されているため、一度のストロークで大量のアンダーコートや抜け毛をキャッチできます。

スリッカーブラシには「ソフトタイプ」と「ハードタイプ」があります。

ソフトタイプ:ピンが柔軟で、皮膚への刺激が少ないため、初心者や皮膚が敏感な猫に最適
ハードタイプ:ピンが硬く、頑固な毛玉や抜け毛の除去に最適


ハードタイプは使い方を誤ると皮膚を傷つけやすいので、使うときには気をつけてください。
最初はソフトタイプを使用することをおすすめします。

使用する際の最も重要なポイントは、力加減です。
スリッカーブラシは構造上、力を入れすぎると皮膚に傷をつけやすいため、被毛の表面を滑らせるイメージで使用します。
持ち方は鉛筆を持つように軽く握り、猫さんの体と平行に優しく動かしてブラッシングします。
スナップをきかせてブラッシングすると、くの字に曲がったピンが猫さんの皮膚を引っ搔いて傷つけるので注意してください。


ピンブラシの特徴と使い方

ピンブラシはブラシの先端に丸いボール状の加工が施された金属のピンが並んでいるのが特徴で、中毛種から長毛種まで幅広く使えます。
ブラシの形状が人間のヘアブラシに似ているため扱いやすく、初心者の飼い主さんでも安心して使えるブラシです。

ピンブラシのメリットは、猫さんの被毛をふんわりと整えながら、抜け毛を適度に取り除けることです。
またブラッシングによるマッサージ効果も期待でき、血行を促進し、被毛のツヤを良くする効果もあります。

使い方は、毛の流れに沿って優しく梳かすのが基本です。
力を入れる必要はなく、ブラシの重みを利用してスナップをきかせながらブラッシングしましょう

まず表面の被毛を全体的にブラッシングし、次に少しずつ被毛を分けながら内側の被毛をとかしていきます。
小さなもつれは取れますが、毛玉になってしまった箇所には不向きなブラシです。


コームの特徴と使い方

コーム(櫛)は、ブラッシングの仕上げや細かな部分のケアに最適なアイテムです。
金属製の細かい歯が並んだシンプルな構造で、歯の間隔によって「粗目」「細目」とあります。
また歯の間隔が非常に狭い「ノミ取りコーム」というものもあり、ノミの成虫や卵、ノミの糞を物理的に取り除くときに重宝します。

使い方は他のブラシでブラッシングを済ませた後に、仕上げとして使用するのが基本です。
まず粗い歯の「粗目」でとかし、引っかかりがないか確認します。
引っかかる箇所があれば、スリッカーブラシやピンブラシで再度もつれを取りましょう。
引っかかりがなくなったら、細かい歯の「細目」で仕上げます。
被毛の表面だけでなく、皮膚に近い部分までしっかり届くように使用してください。

もつれがあったときに無理に引っ張ると、痛い思いをさせてブラッシングを嫌がる原因になりますので気をつけましょう。


獣毛ブラシの特徴と使い方

獣毛ブラシは、豚毛や猪毛などの天然毛を使用したブラシで、被毛に自然な艶を与える仕上げ用ブラシとして優れています。
また、静電気が起きにくいため、乾燥する季節でも被毛がパサつかず、ふんわりとした質感に仕上げられます
合成素材のブラシでは得られない、自然な美しさを引き出せるのが獣毛ブラシの魅力です。

獣毛ブラシには主に「豚毛ブラシ」と「猪毛ブラシ」があり、豚毛の方が柔らかく、猪毛は硬めでハリがあります。
植毛の密度によって使う場面も異なります。
猪毛で植毛が荒いブラシは、簡単なもつれをとくのにも使えますし、密集したものは被毛を整えるのに優れています。

使い方は被毛の流れに沿って、やさしく撫でるようにブラシをかけていくだけです。
強く押し当てる必要はなく、軽いタッチで繰り返すだけでも、十分に毛の表面の汚れや抜け毛を取り除けます。
天然毛は金属製のブラシと違い、強く押し付けても皮膚を傷つけることはほとんどありません。
スリッカーブラシやコームでのブラッシングを終えたあとに、被毛を整える仕上げとして使うのがおすすめです。


アンダーコート除去用ブラシの特徴と使い方

アンダーコート除去用ブラシは、換毛期に抜け落ちるアンダーコート(下毛)を効率的に取り除くために設計されたブラシです。
バリカンの刃のような構造を持つ金属のヘッドが付いており、被毛の間を通過する際にアンダーコートだけを引っ掛けて取り除きます。
使用することで、室内の抜け毛対策や毛球症の予防に非常に効果的です。
長毛種用と短毛種用とありますので、あなたの猫さんに合ったものを選んでください。

便利なブラシですが、使用する際の注意点があります。
一か所だけに使いすぎると、過剰に被毛が取れてうっすらとハゲてしまうので気をつけましょう。
全体を均等にブラッシングすることを心がけてください。

使い方は、まず他のブラシで表面の毛玉やもつれを取り除いてから使用します。
その後に毛の流れに沿って、頭から尾に向かってゆっくりと優しく動かします。
刃が皮膚に強く当たらないよう、角度や力加減に注意しながら使用してください。
特に骨が出ている部分(肩甲骨、背骨、腰骨など)は皮膚を傷つけやすいため、その部分は避けるか、非常に軽いタッチで行いましょう。


ラバーブラシの特徴と使い方

ラバーブラシは、ゴム製やシリコン製の柔らかい突起がついたブラシです。
皮膚に優しく、マッサージ効果も期待できることから、多くの猫さんが嫌がらずに受け入れてくれる傾向があります。

使い方は非常にシンプルで、猫さんを撫でるように優しく動かすだけです。
円を描くように動かすと、抜け毛がより効率的に取れますし、マッサージ効果も高まります
力はほとんど必要なく、軽く撫でる程度で十分です。

ブラシを湿らせたり、スチームが出るタイプのものを使用したりすれば、乾燥する季節では静電気防止にも役立ちますよ。

猫さんの皮膚を傷つける心配も少なく、ブラッシングに慣れていない飼い主さん猫さんにも使いやすいブラシといえるでしょう。


手袋タイプのブラシの特徴と使い方

手袋タイプのブラシは、手袋の手のひら側にシリコンやゴムの突起が付いていて、飼い主さんも猫さんもストレスなくブラッシングが行いやすいブラシです。

手袋を装着し猫さんを撫でるように動かすことで、ブラッシングとスキンシップを同時に行えます
また指の部分にも突起がついているので、オデコやアゴの下など細かな部分も指先を使って安全にブラッシングすることが可能です。

突起部分が抜け毛をしっかりキャッチし、手袋にまとまって付着します。
使用後はそのまま毛を剥がして捨てるだけなので、掃除も非常に簡単です。

特にブラッシングが苦手な短毛の猫さんにおすすめのブラシです。
「ブラッシングされている」という感覚よりも、「ただ撫でられている」と感じやすく、容易に受け入れてくれますよ。


用途別による猫におすすめのブラシ


グローブブラシでブラッシング

猫さんの被毛は大きく、短毛種・長毛種とあります。
被毛の長さによって抜け毛の量や毛玉のリスク、必要なケアの頻度も異なるので、ブラシの使い分けが必須です。

それぞれに適したブラシを使うことで、より効果的で猫さんにとっても快適なブラッシング時間にしてあげられるでしょう。
ここでは短毛種と長毛種それぞれの用途別おすすめブラシを紹介します。

短毛種の場合

使用するブラシ目的
抜け毛を取るときスリッカーブラシ・アンダーコート除去ブラシ抜けかかっている被毛やもつれを取り除く
もつれの有無の確認コーム(粗目)被毛のもつれがないか確認
仕上げのときコーム(細目)・獣毛ブラシつや出し、被毛を整える


長毛種の場合

使用するブラシ目的
抜け毛を取るときスリッカーブラシ・アンダーコート除去ブラシ抜けかかっている被毛やもつれを取り除く
もつれの有無の確認ピンブラシ・コーム(粗目)被毛のもつれがないか確認
仕上げのときピンブラシ・コーム(細目)つや出し、被毛を整える


実は長毛種でも短毛種でも、通常のブラッシングで使用するブラシにそれほど大きな違いはありません。
どんなブラシを購入したらよいのか迷われる方は、スリッカーブラシとコームをひとまず買い揃えるとよいでしょう。

ちょっとしたコツを掴むことで、ブラッシング嫌いにさせずに気持ちいいリラックス時間にしてあげられます。
次にブラッシングの手順やコツを解説しますので、参考にしてくださいね。


猫のブラッシングのコツ

ブラッシングの目的はただ毛をとかすだけでなく、猫さんとの信頼関係を深める大切な時間でもあります。
適切なタイミングで優しいブラッシングを行うことで、誰でも猫さんに喜ばれるブラッシングができるようになりますよ。

ここでは以下の3つについて、解説します。

  1. 適切なブラッシングのタイミングとは?
  2. 猫が喜ぶブラッシングのコツ
  3. もつれや毛玉があったときのコツ



適切なブラッシングのタイミングとは?

ブラッシングを始める前に、適切なタイミングについて知っておく必要があります。

ブラッシングを行うのに適したタイミングは、次の2つです。

  1. 猫さんがリラックスしているとき
  2. 猫さんが要求してそばに来たとき


猫さんがリラックスしているときとは、例えば食後にゆったりと寛いでいるときや、遊び疲れて落ち着いているときなどです。
ストレスがなく満足している状態なので、ブラッシングを受け入れてくれやすいでしょう。

逆に猫さんが遊びたがっているときや空腹で落ち着かないとき、来客があって興奮しているときなどは避けましょう。
ジッとしていられないため、無理やり行う羽目になりブラッシング嫌いになる可能性があります。
寝ているときも行わないでくださいね。

猫さんが何かしてほしくて飼い主さんのそばにきたときも、ブラッシングを行う絶好のチャンスです。
ブラッシングをした後に猫さんの要求に答えることで、ブラッシングに対してよい印象を持つようになりますよ。


猫が喜ぶブラッシングの手順

猫さんがブラッシング嫌いになる要因は、痛みと苦痛の経験によることがほとんどです。
いかに痛みや苦痛を与えずに、ブラッシングをしてあげられるかが重要になります。

ここではスリッカーブラシとコームを使って、ブラッシングの手順を解説します。
次の手順で行うことで、ブラッシングを「気持ちいいもの」と受け入れてくれるでしょう。

  1. 顔まわりで猫さんが気持ちいいと感じやすい場所を行う
  2. 背中を頭から尾に向かって毛並みに沿って行う
  3. 背中から腹部に向かって行う
  4. 片方の前足を軽く持ち上げ、脇を行う
  5. 両前足を軽く持ち2本立ちさせて、腹部にかけて行う
  6. 尻尾を根元から先端に向かって行う
  7. お尻まわりを行う
  8. 最後に再び顔まわりを行う


おでこや耳の後ろ、頬、顎の下などは、猫さん自身で毛づくろいできない場所なので喜びます。
初めと最後に顔まわりを行い、ブラッシングに対してよい印象を持ってもらいましょう。

最初から①~⑧全てを行う必要はありません
お腹やお尻まわりは、急所なので嫌がりやすい部分です。
最初のうちはブラッシングに慣れてもらうため①②⑧のみを行い、少しずつ③④と行う範囲を広めるとよいでしょう。


もつれや毛玉があったときのコツ

長毛猫さんは少し油断すると、すぐにもつれや毛玉ができてしまいます。
もつれや毛玉があったときの対処を間違えると、猫さんに痛みを与えブラッシング嫌いにしかねません。
強引にもつれや毛玉を取り除こうとしないでくださいね。

もつれや毛玉の状態によって、以下の手順で取り除きましょう。

軽いもつれがあった場合

  1. もつれの根元を指で摘まむ
  2. スリッカーブラシやコームでとく


もつれの根元を摘まむことで、皮膚が引っ張られることを防げるため、猫さんに痛い思いをさせずに済みますよ。

頑固な毛玉があった場合

  1. ハサミを使って毛玉を割く
  2. スリッカーブラシで毛玉を取り除く


長毛種の場合は、被毛用のハサミを用意することをおすすめします。
ハサミを使うときは、猫さんの皮膚を切らないように気をつけてくださいね。


愛猫に適したブラシでブラッシング時間を楽しもう

ブラッシングは単なる被毛のケアにとどまらず、猫さんとの信頼関係を深める大切なコミュニケーションの時間でもあります。
猫さんにとって快適で心地よいブラッシングの時間にするには、毛質や性格に合ったブラシを選び、猫さんの気持ちに寄り添いながら行うことが何よりも大切です。

またブラシは目的や状況に合わせて選びましょう
抜け毛をしっかり取りたいならスリッカーブラシやアンダーコート除去用ブラシを、まずはブラッシングに慣らしたいならラバーブラシや手袋タイプがおすすめです。

ブラッシングを習慣化することで得られるメリットは多いです。
毛球症の予防、皮膚病の早期発見、室内の抜け毛減少、そして何より猫との絆が深まります。

今回ご紹介したブラシの特徴や使い方を参考に、あなたの猫さんにぴったりのアイテムを見つけてくださいね。
ブラッシングを通じてお互いにとって心地よく楽しいひとときが、かけがえのない癒しの時間となるでしょう。

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中澤光恵
専門家

中澤光恵(ペットシッター)

ペットシッタージニー

30年の知識と経験をもとに、食生活や爪切りやブラッシングなどのケア、環境づくりなど、ペットの健康寿命プラス5歳を目指す講座やアドバイスを実施。飼い主に代わって世話をするペットシッターも行っています。

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