情報セキュリティに関する認証の種類は?取得メリットや注意点も解説
ISMSを適切に運用し続けるためには、定期的な維持審査が必要です。
維持審査では、セキュリティ体制が適切に維持され、継続的な改善が行われているかがポイントになります。
また、ISMSの維持審査の内容を把握しておくことで、準備するものが明確になるでしょう。
本記事ではISMSの維持審査について詳しく解説します。
ISMS維持審査とは
ISMS維持審査の概要と重要性について説明します。
また、維持審査と更新審査の違いも合わせて紹介します。
維持審査の概要
ISMSの維持審査は、認証取得後1年ごとに実施される審査です。この審査は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)が適切に運用されているかを確認するためのものです。
維持審査では、内部監査の結果やリスクアセスメントの見直し、是正措置の状況などが評価されます。これにより、組織が継続的に改善を行い、情報セキュリティのレベルを維持・向上させているか確認されます。
ISMSの 維持審査と更新審査の違い
ISMSの維持審査と更新審査にはいくつかの違いがあります。維持審査は毎年行われ、主にシステムの運用状況を確認されるものです。
一方、更新審査は3年ごとに実施され、認証の更新に問題がないかを判断されます。維持審査は比較的低コストで済むことが多いですが、更新審査は初回の認証審査のように細かく審査が行われ、費用も高くなります。
これらの違いを理解することで、適切な準備と対応が可能になるでしょう。
ISMS維持審査の流れとは?
オープニングミーティング
まず、オープニングミーティングが開催されます。
オープニングミーティングでは、審査員と組織の担当者が顔合わせを行い、審査の流れやスケジュールが説明されます。オープニングミーティングは、審査の目的や範囲を明確にし、双方の認識を統一するための重要な会議です。
また、出席者名簿にサインし、記録として残しましょう。オープニングミーティングでのコミュニケーションがスムーズに進むことで、審査全体が円滑に進行します。
トップインタビュー
トップインタビューは、企業の経営者や情報セキュリティ責任者に対して行われるインタビューです。審査員は、ISMSの運用状況、企業を取り巻く内部外部の状況やインシデント対応、リスク管理の方針などについて質問します。
トップインタビューは、組織のトップが情報セキュリティに対してどれだけのコミットメントをしているかを確認するための重要なプロセスです
管理者インタビュー
管理者インタビューでは、ISMSの管理責任者に対して質問が行われます。
審査員は、前回の審査以降の運用状況や改善点、内部監査の結果などを確認します。
管理者インタビューはシステムが実際にどのように運用され、管理しているかを把握するための重要なインタビューです。
審査員の疑問点や気になった項目は、必ず現場で確認を行うため、管理者インタビューは現場視察時に大きく影響します。
現場視察
現場視察は、審査員が実際に業務現場を訪問し、ISMSが適切に運用されているかを確認するプロセスです。
審査員は、現場の責任者や従業員に対してヒアリングを行い、実際の運用状況を確認します。現場視察は、文書審査だけでは把握できない実態を確認するための重要な手段です。
従業員ヒアリング
従業員ヒアリングでは、従業員に対してISMSの運用状況やセキュリティ意識について質問が行われます。
従業員の理解度や実践状況を確認することで、ISMSが組織全体に浸透しているかを評価します。従業員がどれだけISMSについて理解しているかがポイントです。
審査員総括
審査員総括は、審査の全体を振り返り、評価を行います。審査員は、各インタビューや視察の結果を総合的に評価し、ISMSの運用状況を判断します。
審査員総括は、審査の最終的な結論を導き出すための重要なプロセスです。
クロージングミーティング
クロージングミーティングは、審査の最後に行われるミーティングです。審査員は、審査結果を報告し、指摘事項や改善点を共有します。クロージングミーティングは、審査の結果を確認し、今後の改善に向けた具体的なアクションプランを立てるために行います。
本項で解説したように、ISMSの維持審査のプロセスを把握しておくことで、審査時に慌てることなく進められるでしょう。
ISMS維持審査に必要な準備
ISMSの維持審査に必要な準備とポイントについて紹介します。
内部監査・マネジメントレビュー実施
ISMSの維持審査に向けて、内部監査とマネジメントレビューの実施が不可欠です。
内部監査は、システムの運用状況を定期的にチェックし、改善点を見つけるためのプロセスです。内部監査計画を立て、実施し、その結果を報告書にまとめます。
マネジメントレビューは、内部監査結果やISMSの運用状況をもとに、経営層がシステムの有効性を評価し、必要な改善を指示します。
内部監査・マネジメントレビューは、ISMSの継続的な改善を行う機会となるでしょう。
リスクアセスメントの見直し
リスクアセスメントの見直しは、ISMSの維持審査において重要な準備項目です。リスクアセスメントは、情報資産に対する脅威や脆弱性を評価し、適切な対策を講じるためのプロセスです。
定期的な見直しを行うことで、新たなリスクに対応し、セキュリティレベルを維持・向上させられます。なお、見直しの際には、リスク評価の結果を文書化し、必要な是正処置を記録しておくことがポイントです。
ISMS関連文書の準備・更新
ISMSの維持審査に向けて、関連文書の準備と更新が必要です。維持審査前に審査スケジュールが発表されるため、事前に関連文書の内容を確認しておきましょう。
具体的に準備するものは、情報セキュリティ方針、リスクアセスメント報告書、内部監査報告書、是正処置記録などが挙げられます。これらの文書は、審査員がシステムの運用状況を評価するための重要な資料となるため、最新の情報を反映させ、適切に管理することがポイントです。
各種関連文書は、審査時の客観的証拠になるため、抜かりなく準備しておくことで、維持審査のスムーズな進行に役立ちます。
ISMSの維持審査のスケジュールから流れまでを把握しておくことにより、審査時に慌てることなく進められます。
ISMS維持審査後の流れとは
ISMSの維持審査後の流れについて紹介します。
審査結果の評価
ISMSの維持審査後、まず行われるのが審査結果の評価です。審査報告書には、システムの運用状況や改善点が詳細に記載されています。組織はこの報告書をもとに、現在の情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の有効性を評価します。
審査結果をもとに改善項目を明確化
審査結果を評価した後は、改善項目を明確化することが必要です。報告書に記載された指摘事項や観察事項をもとに、具体的な改善策を策定します。
改善を実施するには、PDCAサイクル(計画・実行・確認・改善)を活用しましょう。改善項目は、組織全体で共有し、各部門が協力して実施することが重要になります。
改善施策の実施
ISMSの維持審査後、不適合が指摘された場合は是正措置を行います。
是正措置は、問題の原因を分析し、再発防止策を実施するプロセスです。審査結果の報告書には、指摘事項が詳細に記載されているため、これをもとに改善計画を立てます。
改善施策を実施する際は、PDCAサイクル(計画・実行・確認・改善)を活用し、是正措置を行うようにしましょう。是正対策には、暫定対策と恒久対策があるので、暫定対策で終了することなく恒久対策を実施することが有効です。
ISMS維持審査で上がった改善は、次回の審査で確認されるため、対応をしておきましょう。
ISMS維持審査における注意点
ISMSの維持審査の注意点を紹介します。
コスト増
ISMSの維持審査を行うには、一定のコストがかかります。審査費用だけでなく、内部監査や改善施策の実施にも費用が発生することがあります。これらのコストは、組織の予算に影響を与えるため、費用対効果を慎重に検討することが重要です。
特に中小企業にとっては、コスト増が大きな負担となるでしょう。なお、複数のマネジメントシステムを運用している場合、統合を検討することでコストを抑えつつ、効率的な運用が行えることもあります。
業務負担の増加
ISMSの維持審査は、組織全体に業務負担を増加させます。審査準備や内部監査、改善の実施などで、多く時間が必要です。
日常業務と並行してこれらの活動を行う場合は、従業員の負担が増えることが考えられます。重要なのは、いかに業務プロセスを効率化し、負担を軽減するかという点です。組織全体で協力し、計画的に進めることがポイントになるでしょう。
まとめ
ISMS維持審査は、セキュリティリスクに適切に対応しているかを継続的に確認する重要な内容です。目標設定や改善活動が適切に行われているかどうかが、審査の成功の鍵となります。維持審査の準備と流れを知っていると前もって準備することができるでしょう。
ISMS維持審査について細かく知りたい場合は、専門家に相談するのも一つの手です。