ISO9001の社内教育とは?効果や内部監査員育成を解説
製造業では、品質方針を定めておくことが不可欠です。
しかし、品質方針をどのように設定すればよいかわからない人も多いのではないでしょうか。本記事では、品質方針の設定のポイントや運用、管理について具体例を踏まえ紹介します。
製造業における品質方針とは?
品質方針の概要
1.組織の目的に対して適切か
品質方針は、組織の全体的な目的や戦略と一致させる必要があります。
例えば、部品加工製造業では「高精度かつ耐久性のある部品を提供し、顧客の製品性能向上に貢献する」という方針を立てたとします。この方針は、精密加工技術を活用して顧客のニーズを満たし、高品質な製品を提供するという組織の使命に直結しているでしょう。
また、航空機や医療機器向けの部品加工を行う企業では、品質が製品の安全性に直結するため、全社員がその重要性を認識し、品質管理を徹底する姿勢が求められます。
このような方針は、事業戦略と密接に結びついているため、組織全体の方向性を示す基盤となります。
2.要求事項への適合、品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメント
品質方針は、顧客の要求事項や法規制に適合し、品質マネジメントシステム(QMS)の改善を継続的に進める姿勢を反映する必要があります。
例えば、ISO 9001に基づき「顧客要求を満たすだけでなく、法的要件にも適合した製品を提供し続ける」ことを掲げ、定期的な内部監査や外部審査で改善を促進します。
3.品質目標の設定及びレビューのための枠組み
品質方針に基づき、具体的な品質目標を設定し、その達成度を定期的にレビューする仕組みを持つことが必要です。
例えば、「不良品率を年間5%削減する」という目標を掲げた場合、月ごとのデータを収集して目標に対する進捗を確認します。確認時には、製造プロセスにおいて、品質方針が実際の現場で運用されているかどうかもレビューしていきます。
4.組織全体に伝達され、理解される
品質方針は、全従業員に明確に伝達され、理解されることが必要です。経営者は組織全体に伝達し、周知するといった要求事項もあります。
例えば、方針を工場内に掲示する、あるいはイントラネットで共有することで、全員が日々の業務においてその方針を意識できるようにします。さらに、方針に基づいた研修を実施することで、従業員の意識を高めることも効果的です。
5.適切性の持続のためのレビュー
品質方針は、組織の変化に合わせて定期的に見直される必要があります。
例えば、事業拡大や新規技術の導入に伴い、方針が現状に適しているかどうかを確認し、必要に応じて修正します。定期的なレビューや品質会議でこれを検討し、常に組織の方向性に合致した品質方針を維持することが重要です。
品質方針を設定する際は、本項で紹介した内容を踏まえましょう。
製造業の品質方針を設定する際のポイント3選
製造業の品質方針を設定する際には、いくつかの押さえておくポイントがあります。
本項では、品質方針設定の重要なポイントを説明します。
組織の目的に対して適切な方針を立てる
製造業の品質方針は、組織の目的や戦略に沿って立てる必要があります。
例えば、自動車部品製造業では「事故ゼロを目指す高品質の安全部品の提供を通じ、交通安全に貢献する」という方針を立てることが考えられます。
このような方針は、顧客の安全を守るという組織の使命に直結し、事業の発展にもつながるため、社員全員がその重要性を認識できる内容です。
目的に合致した方針を設定することで、企業の長期的な目標達成に貢献する品質管理が可能になります。
測定可能な方針内容にする
品質方針は、具体的かつ測定可能な内容であることが重要です。
例えば「製品不良率を毎年3%減少させる」「納期遵守率を95%以上に保つ」といった定量的な目標を掲げることで、品質管理の効果を評価しやすくなります。
製造業では、工程ごとのデータを収集し、それに基づいて改善を図ることが一般的です。測定可能な方針が設定されていれば、具体的な改善策を講じることができるため、結果として製品品質や生産効率の向上が期待されます。
文書化した情報として利用可能にする
品質方針は文書化し、全社員がいつでも参照できるようにしておくことが必要です。
例えば、部品製造業での方針を「製品品質マニュアル」として文書化し、工場内で共有することで、社員全員が品質基準や目標を明確に理解できます。
これにより、現場での作業が方針に基づいて一貫して行われるようになり、品質管理の強化につながるでしょう。また、文書化された方針は、外部の審査機関にも提示でき、ISO認証取得の際に重要な証拠として活用されます。
品質方針を設定するポイントを押さえておくことで、品質目標に上手く結びつけられるでしょう。
品質方針と品質目標の管理方法とは
本項では、品質方針の実施と管理方法を説明します。
従業員の役割と教育
品質方針が決定したら、まずは従業員にその内容を周知し、役割を明確にする必要があります。例えば、製造現場の従業員には品質検査や作業の改善に直接関わる役割が割り当てられます。
また、品質方針を正しく理解し日々の業務に反映できるように、全従業員に対して定期的な教育やトレーニングを実施することも有効です。これにより、品質方針と目標に対する従業員の意識が高まり、組織全体での品質向上につながります。
目標管理シートの活用
方針が決まったら、目標に落とし込む作業が必要です。製造における各部門で設定する目標が方針に結びついているかが重要になります。
また、目標の管理において、目標管理シートを活用することが有効です。
目標管理シートには、各品質目標、達成期限、担当者、進捗状況などを記載し、体系的に管理できます。
例えば、製造業における不良品削減目標を設定し、その進捗を月ごとにシートで記録することで、どの工程で改善が必要かわかります。
さらに、管理者やチームリーダーが進捗を定期的にチェックすることで、目標の達成度合いを監視して、必要に応じた調整が迅速に行えるようになります。
継続的改善へのコミットメント
製造業の品質方針と目標は、一度設定して終わりではなく、継続的に改善していくことが求められます。
例えば、定期的に会議を開き、現場のフィードバックや不良率のデータを基に目標の進捗を評価することで、新たな課題を発見することができるでしょう。
ISO 9001のPDCAサイクルに基づいて、計画(Plan)、実行(Do)、確認(Check)、改善(Act)を繰り返し行うことで、組織全体の品質水準を継続的に高められます。
PDCAサイクルを回すことにより、品質目標が達成されるだけでなく、さらに高いレベルの品質を追求する文化が組織に根付くようになるでしょう。
品質方針、品質目標の管理をしっかりしておくことで、社内の品質向上が見込めます。
製造業における品質方針の具体例
製造業における品質方針の具体例について紹介します。
製造業の品質方針の具体例1
「顧客満足度を向上させるための製品提供」という品質方針のもと、「製品不良率を年間3%削減する」という品質目標を立てた製造業の例です。
上記方針に基づき、まず製造工程の改善を行い、機械のメンテナンス頻度を見直します。さらに、従業員のスキル向上を目的にした研修を実施し、不良の原因となる作業の精度を高める必要があります。
毎月、不良品データを分析し、改善の進捗を確認(Check)した上で、次の改善策(Act)を実施します。これにより、品質の向上が継続的に進められます。
製造業の品質方針の具体例2
続いて紹介するのは、「お客様から信頼されるシステムの提供」という方針で「納期遵守率を95%以上に維持する」という目標を掲げた例です。
まず、部品供給のリードタイムを短縮するためのサプライチェーンの再構築(Plan)を行います。
現場では生産スケジュールの可視化(Do)を進め、納期が遅れそうな工程を早期に発見するシステムを導入。毎週、納期達成率をレビュー(Check)し、問題が発生した場合は、迅速に対応策を講じます(Act)。このプロセスを繰り返し、納期遵守率の改善を図ります。
製造業の品質方針の具体例3
「品質と効率を両立した製造システムの提供」を品質方針とし、「生産効率を5%向上させる」という品質目標を掲げた例について解説します。
まず、製造ラインのボトルネックとなる工程を特定し、作業手順を見直して無駄を削減(Plan)します。
次に、新たな作業手順を現場で試験的に導入し(Do)、その効果を1カ月ごとに生産データを使って評価(Check)。改善が見られた場合はその手順を標準化し(Act)、生産効率向上を目指します。これにより、品質と効率を両立した製造が実現されます。
具体例を参考にして、企業に落とし込むことで企業にとって有効な品質方針を確立できるでしょう。
まとめ
製造業における品質方針は、企業が製品の品質を高め、顧客満足を維持するための重要な内容です。目標設定から実施、管理、改善に至るまで、全社員が協力して取り組むことが重要です。
なお、製造業の品質管理については、ISO9001とその要求事項について理解しておくことが不可欠です。詳しく知りたい場合は、専門家に相談するのも一つの手です。