ISMSの維持審査について徹底解説!審査内容、必要な準備も解説
企業が扱う情報を守るためには、適切な管理と体制が必要です。そのための情報セキュリティに関連する認証制度として、ISMSとPマークがあります。
それぞれの違いを把握しておくことで、認証取得を検討する際に役立つでしょう。
本記事では、ISMSとPマーク両者の違いや取得メリット、費用について詳しく解説します。
ISMSとPマークとは
ISMSとは
ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)とは、企業が情報資産を保護するための管理システムで、ISO 27001という国際規格に基づいています。ISMSは、情報の「機密性」「完全性」「可用性」を確保するための総合的なセキュリティ対策を行う枠組みです。
企業は定期的にセキュリティ上のリスク評価を行い、対策の有効性を確認し、改善を図ることが求められています。ISMSを取得することで、企業は外部からの信頼を獲得し、取引先や顧客に対して情報を適切に保護していることを証明できるようになります。
ISMSの取得は、特にグローバルなビジネスを展開している企業や、多くの情報資産を管理する企業にとって有効です。
Pマークとは
Pマーク(プライバシーマーク)は、日本国内での個人情報保護に関する認証制度で、企業が個人情報を適切に管理・保護していることを証明するものです。
JIS Q 15001に基づき、企業が消費者や取引先を含む個人情報を安全に取り扱う仕組みを整備していることを示せるため、個人情報を多く取り扱う企業にとっては、法的な要求事項にも準拠していることを対外的にアピールできるものでもあります。
ISMSとPマークの違い6選
ISMSとPマークの違いについて、項目別に詳しく解説していきます。
違い1:発行団体
ISMSとPマークは、認証の発行団体が違います。ISMSは、ISO(国際標準化機構)が発行している国際規格で、ISO 27001に基づいています。これは、世界中で広く認知されている標準規格です。
一方、Pマークは日本情報処理開発協会(JIPDEC)が運営する国内限定の認証です。
つまり、ISMSはグローバルに展開している企業や国際取引を行う企業に向いており、Pマークは主に国内市場をターゲットにする企業に適しています。
違い2:思想・目的
ISMSの思想は、情報資産全体のセキュリティを確保することにあります。情報の機密性、完全性、可用性を保護し、サイバー攻撃や内部不正から企業全体の情報を守ることが目的です。
これに対して、Pマークは個人情報の適切な管理と保護を目的としており、特に個人に紐づくデータの取り扱いに重きを置いています。
したがって、ISMSは企業全体のリスク管理が重要視されるのに対し、Pマークは消費者や取引先からの信頼向上を重視する仕組みです。
違い3:対象範囲
ISMSは、企業全体の情報資産が対象であり、顧客データや財務情報、知的財産などのあらゆる情報を含みます。ISMSにおいては、企業の全社的なセキュリティ管理システムの構築が必要です。
一方で、Pマークは個人情報に特化しており、顧客や従業員の個人データの適切な取り扱いを重視しています。そのため、個人情報の収集・利用・保管・廃棄までの各プロセスに対する管理の体制を求められるのが特徴です。
違い4:要求事項
ISMSは、ISO 27001の規格に基づき、情報セキュリティに関する幅広い要求事項が設定されています。具体的には、リスクアセスメントの実施やリスク管理プロセスの構築、継続的な改善が必要です。
Pマークは、JIS Q 15001に基づき、個人情報の管理に特化した要求事項が定められています。個人データの収集から廃棄までのプロセスを管理することが求められ、特に日本国内の法令である「個人情報保護法」への適合が重要です。
違い5:セキュリティ対策
ISMSは、情報の機密性、完全性、可用性を守るために、セキュリティ対策を講じることが求められます。ISMSのセキュリティ対策には、物理的なセキュリティからネットワークセキュリティ、サイバー攻撃対策まで幅広い対策が含まれます。
一方で、Pマークは個人情報保護に特化しているため、個人データの不正利用や漏洩防止に重点を置いた対策が必要です。したがって、ISMSは企業全体のリスク管理を行うのに対し、Pマークは個人情報保護のための対策が中心となります。
違い6:審査基準
ISMSは、ISO 27001に基づく国際規格で、第三者認証機関による外部監査が行われます。外部監査では、企業全体の情報セキュリティ対策が評価され、リスクマネジメントや継続的な改善が重要になります。
対してPマークはJIS Q 15001に基づいており、個人情報保護に関する体制が審査の対象となります。審査では、個人データの管理体制や収集・利用・廃棄のプロセスが評価され、特に「個人情報保護法」への準拠が求められます。
ISMS・Pマークそれぞれの取得メリットとは?
ここまでISMSとPマークの違いについて項目ごとに解説してきましたが、それぞれの取得メリットはどのような点があるのでしょうか。
ISMSの取得メリット
ISMSを取得することで、企業の情報セキュリティに対する信頼性が向上します。ISO 27001に準拠したセキュリティ体制を構築することにより、サイバー攻撃や内部不正などのリスクから情報資産を守れるようになります。
また、ISMSは法規制への対応にも役立ち、国内外のセキュリティ関連法に準拠するための証明となるでしょう。
グローバル市場で事業を展開する企業にとって、国際的な信頼性を高めることができるため、競争の優位性につながるでしょう。
Pマークの取得メリット
Pマークを取得することで、企業は個人情報保護に対する信頼性を向上させることができます。特に日本国内では、Pマークの取得が顧客や取引先に対して、個人情報を適切に扱っている企業であることを示す証拠となります。これは、消費者の信頼を得るうえで重要です。
また、個人情報保護法に適合していることを証明できるため、法的リスクの軽減にもつながります。企業や個人データを多く扱う業種にとって、取得のメリットは非常に大きいといえるでしょう。
ISMS、Pマークは対象範囲などが異なる分、取得することで得られるメリットにも違いがあります。それぞれのメリットを踏まえたうえで、検討材料としてください。
ISMSとPマークの取得費用の違い
ISMSとPマークでは取得費用にも違いがあります。
本項では、ISMSとPマークの費用について解説します。
ISMSの取得費用
ISMSの取得費用は、組織の規模やセキュリティ対策の範囲によって違いますが、一般的に50万円から100万円程度が相場です。まず、ISMSを導入するためには、内部でのセキュリティ体制の構築やリスクアセスメントの実施、社員教育など、準備段階で多くのコストがかかります。
加えて、認証を維持するために定期審査や更新審査が必要で、これらの費用もかかります。
ISMSの取得費用については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:【保存版】ISMS認証(ISO27001)の取得費用は?内訳
Pマークの取得費用
Pマークは日本国内の個人情報保護に特化しているため、審査範囲が限定されており、コストが抑えられる傾向にあります。
取得に必要な初期コストには、個人情報保護体制の整備や従業員への教育、書類作成の準備が含まれます。
審査費用は企業規模や取り扱う個人情報の範囲に依存しますが、30万~100万円程度が一般的です。また、Pマークも定期的な更新審査が必要ですが、ISMSに比べて費用は安価であることが多いです。
なお、Pマークの費用相場については、こちらの記事も併せてチェックしてください。
関連記事:Pマークの取得費用は?内訳や費用を抑えるポイントを解説
企業の現状やかかる負担に合わせて検討していきましょう。
まとめ
この記事では、ISMSとPマークの具体的な違いについて紹介してきました。
ISMSとPマークは、情報セキュリティと個人情報保護においてそれぞれ異なる役割を果たします。両者を理解し、企業の状況に応じて適切な認証を選択することが、効果的なセキュリティ対策の第一歩となります。
ISMSとPマークについて認証を検討しているなら専門家に相談することも一つの手です。