ISO14001とエコアクション21の違いとは?取得メリットや費用相場も比較
ISO14001には環境側面という言葉があります。あまり聞きなれない言葉のため、難しく感じるかもしれません。本記事ではISO14001の環境側面の例や、環境側面を管理する際のポイントなどを詳しく解説をしていきます。
ISO14001の環境側面とは?
本項ではまず、環境側面の概要や環境影響との違いについて紹介していきます。
環境側面とは?
ISO 14001における「環境側面」とは、企業や組織がその活動を通じて環境に与える影響の可能性がある要素を指します。
例えば、製品の製造プロセスで発生する排出ガスや、エネルギー使用量などは環境側面に該当します。環境側面は、組織が環境パフォーマンスを評価し、管理する際の重要な基準です。
企業が自社の活動における環境側面を正しく把握し、管理に取り組むことで、環境に対する負荷を最小限に抑え、持続可能な運営を目指すことができます。
JISQ 14001:2015の定義に基づき、環境側面は管理すべき対象として位置づけられ、適切な対策を行う必要があります。
なお、ISO14001の環境側面についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひ併せてチェックしてみてください。
関連記事:ISO14001における環境側面とは?分かりやすく解説(ISOプロのページへ)
環境影響との違い
環境側面が「環境に影響を与える(組織側)要素」を指すのに対し、環境影響とは環境側面によって発生する環境への変化です。
たとえば、工場での廃水の排出は環境側面に該当し、その結果として水質が悪化することが環境影響にあたります。このように、環境側面と環境影響は、「原因」と「結果」の関係性にあるといえるでしょう。
大前提として環境側面と環境影響の違いを理解することは、適切な環境管理を行っていくうえで重要です。
著しい環境側面とは?
著しい環境側面とは、環境側面の中でも特に重大な環境影響を引き起こす可能性が高い要素です。
例えば、大量のエネルギー消費や有害物質の排出などがこれに該当します。企業の抱える著しい環境側面に対策を行う場合、どの環境側面が「著しい」と判断されるかを特定し、どうすればそのリスクを最小限に抑えられるか検討することが求められます。
これにより、環境への悪影響を減らし、持続可能な活動を促進することが可能になります。
ISO14001における環境側面の例とは
本項では、実際にISO14001を運用する企業における環境側面の具体例を解説します。
例1: 製造業におけるエネルギー消費
製造業では、生産プロセスで大量のエネルギーが消費されることが環境側面となります。
工場では電力や天然ガスなどのエネルギー資源が多量に使用され、これに伴い温室効果ガスの排出量が増加します。このような環境側面は地球温暖化に影響し、気候変動の進行を加速させる可能性があります。
ISO14001に基づき、企業はエネルギー消費を削減するための対策を行い、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーの導入を推進することが求められます。
例2: 化学工場における廃水の排出
化学物質を使用する工場では、化学物質を含む廃水が発生します。これが環境側面となり、適切な処理が行われない場合、水質汚染が発生し、河川や海洋の生態系に悪影響を与える可能性があります。
ISO14001を導入する企業は、廃水処理施設の適切な運用や汚染物質の削減を徹底し、環境への影響を最小限に抑えることが求められます。
例3: 建設業における廃棄物の処理
建設業では、建築物の解体や新築工事に伴い、建設資材や解体廃棄物が大量に発生します。これらの廃棄物が適切に処理されない場合、不法投棄が問題となり、資源の無駄遣いといった環境影響を引き起こします。
このような廃棄物管理が環境側面となり、ISO14001を導入する企業には、廃棄物の適切な処理やリサイクルの推進が求められます。資源の有効利用や廃棄物の削減は、環境保護における重要な課題です。
本項で紹介した環境側面の例を自社の環境側面と照らし合わせつつ、考えてみることが重要です。
ISO14001における「著しい環境側面」はどのように決定すべき?
環境側面のうち、重大な環境影響を発生させ得るものが「著しい環境側面」と呼ばれることは前項で説明しました。
「著しい環境側面」を決定するためには、まず企業が抱える「環境側面」と、それがもたらす「環境影響」について、一つ一つ評価していく必要があります。
自社の環境側面について洗い出しが完了した段階で、次のステップとして、「著しい環境側面」の決定に移りましょう。自社の環境側面のうち、大きな環境影響を発生させ得る環境側面を「著しい環境側面」として位置づけ、管理に移っていきます。
企業のリソースが有限である以上、全ての環境側面を管理・コントロールすることは容易ではありません。そのため、特に大きな影響を及ぼす「著しい環境側面」を特定し、管理に注力する姿勢が重要です。
環境側面を管理する4つのポイント
では、実際に環境側面を管理するにはどのような方法を講じればよいのでしょうか。
環境側面の分析
環境側面の分析は、企業が行う活動がどのように環境に影響を与えるかを評価するための最初のステップです。製品、サービスが環境に与える影響を体系的に洗い出し、その影響の範囲や重要度を明らかにします。
例えば、エネルギーの使用量、廃棄物の排出量、水や空気の汚染などが考えられます。これらの要素をリスト化し、それぞれが環境に及ぼす潜在的なリスクを評価します。
分析により、環境保護のために優先的に管理すべき「著しい環境側面」が特定されます。分析結果を基に、企業は改善すべき環境側面を明確にし、管理方法を検討する必要があります。
環境影響の分析
環境影響の分析は、特定された環境側面がどの程度環境に影響を及ぼすかを評価するプロセスです。企業の活動が環境にどのような影響を与えるかを、影響の大きさ、発生頻度、などの基準で評価します。
例えば、化学工場での廃水排出が水質汚染につながるかどうか、その影響が地域の生態系にどのような影響を及ぼすかを評価することが含まれます。
環境影響の分析は、リスクを最小限に抑えるための対策を講じる基礎となり、持続可能な環境管理ができます。
環境目標の設定
環境目標の設定は、特定された著しい環境側面やその影響を効果的に管理するために、具体的で測定可能な目標を策定するステップです。
企業は環境側面に関連するリスクを削減するために、目標を設定します。例えば、二酸化炭素排出量の削減、廃棄物のリサイクル率向上、エネルギー使用効率の改善などが挙げられます。
これらの目標は、実現可能であると同時に、組織全体で共有され、日々の業務に反映される必要があります。環境目標は、定期的に見直し、達成度を評価することで、持続的な改善が促進され、企業の環境パフォーマンスが向上します。
環境マネジメントプログラムの実施
環境マネジメントプログラムの実施は、設定した環境目標を達成するための具体的なアクションプランを実行するプロセスです。このプログラムには、目標達成のための資源配分、責任者の明確化、スケジュールの策定、従業員の教育・訓練などが含まれます。
例えば、エネルギー消費削減のための効率的な設備投資や、廃棄物の適切な処理方法の導入などがプログラムの一部です。また、実施後はプログラムの効果を定期的に評価し、必要に応じて改善を加えます。
環境マネジメントプログラムを通じて、企業は持続可能な形で環境目標を達成し、環境保護と経済活動の両立を図ります。
環境側面管理を行うことで得られるメリット
本項では、環境側面管理を行うことによって得られるメリットについて解説します。
コスト削減
環境側面管理を行うことで、企業はコスト削減を実現することができます。
例えば、エネルギー消費の効率化や廃棄物の削減を図ることで、エネルギー費用や廃棄処理費用を削減することが可能です。
また、リサイクルやリユースを促進することで、資源の無駄遣いを減らし、材料費の削減にもつながります。さらに、環境管理の改善によって、将来的な環境事故や法的トラブルを未然に防ぐことも可能です。
これにより、企業は長期的に見て安定した経営を維持することができ、持続的な競争力を高めることができます。
社会的信用の向上
環境側面管理を適切に行うことで、企業は社会的信用を向上させることができます。環境に配慮した企業活動は、顧客や投資家、地域社会からの信頼を得る重要な要素です。
企業が環境保護に積極的に取り組んでいることを示すことで、消費を重視する消費者の支持を得ることができます。
また、環境への取り組みを評価する各種の認証を取得することで、企業のブランドイメージが向上し、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性も高まるでしょう。
さらに、環境に配慮した企業活動は、優れた人材の確保にもつながり、社員のモチベーション向上にも繋がります。
法規制の遵守
環境側面管理を徹底することで、企業は関連する法規制を確実に遵守することができます。環境保護に関する法規制は年々厳しくなっており、これらに違反すると罰則や業務停止などの重大なリスクが生じます。
環境側面を管理することで、企業は法的要件を満たすための具体的な対策を講じることができ、違法行為のリスクを低減します。
また、定期的な内部監査やマネジメントレビューを通じて法規制の遵守状況を確認し、必要に応じて改善措置を取ることで、継続的な法令遵守が可能となります。これにより、企業の社会的責任を果たし、信頼性を維持することができます。
持続可能な運営の実現
環境側面の管理を行うことは、企業の持続可能な運営を実現するための重要な手段です。持続可能な運営とは、環境負荷を最小限に抑えながら、経済的にも社会的にもバランスの取れた成長を目指すことです。
環境側面を適切に管理することで、企業は資源の有効活用やエネルギー効率の向上を図ることができます。またそれだけに留まらず、長期的な経済的利益を確保しつつ、環境保護への貢献にも繋がるでしょう。
また、環境負荷を低減することで、将来的な環境リスクを減らし、持続可能な経営基盤を確立することができます。
このように、環境側面管理は企業の未来を見据えた戦略的な取り組みとして重要な役割を果たします。
まとめ
この記事では、ISO認証取得における環境側面について具体的に解説しました。
環境側面の評価と管理を通じて、企業は持続可能な運営を実現し、社会的信用を向上させることができます。一方で、継続的な改善や社内教育、コミュニケーションの重要性も忘れてはなりません。ISO14001を取得し、環境への影響を最小限に抑えるための取り組みを進めることが、企業の成長と社会的責任の両立に繋がります。
なお、ISO14001の環境側面について詳しく知りたい場合は、専門家に相談するのも一つの手です。