ISO内部監査の流れとは?監査時の注意点も紹介
ISO認証において、文書管理は非常に重要な役割があります。しかしながら、何故文書管理が重要となるのか、どのように作成・保管すればよいのかなど、疑問を持っている方も多いはずです。そこで本記事では、ISOに関連する文書管理の重要性、具体的な内容や効果について解説していきます。
目次
ISO規格における文書管理とは
本項ではまず、ISOにおいて求められる文書管理について解説します。
ISO規格の文書管理
一般的な業務における文書管理とは、発注書や請求書など、日常業務で使用される文書の管理業務です。これは、文書の作成、保管、検索、取得、廃棄までを含む一連の流れを含みます。
一方、ISO規格においては、通常の文書管理に比べ、厳密な文書管理が求められます。具体的には、文書化した情報を適切な形で管理し、必要なときにすぐに取り出せるよう、最適な管理環境を整えることが必要です。
これにより、業務の透明性が向上し、内部統制が強化されます。また、適切な文書管理は、品質管理や環境管理の基盤となり、ISO規格を運用していくうえで欠かせない要素の一つです。
ISO規格の文書管理における要求事項
ISO規格の要求事項には、文書管理について定めている項目が含まれています。本項では文書管理に関連する要求事項を以下で紹介していきますので、参考にしてください。
7.5.3.1:文書化した情報一般
ISO規格では、文書管理に関する具体的な要求事項が定められています。まず、7.5.3.1では「文書化した情報一般」に関する要求事項があります。
これは、文書の識別、保管、保護、検索、取得、配布、保存、および廃棄に関する管理を意味します。必要な情報をいつでも取り出せるようにし、適切に保護し、必要に応じて廃棄する手順を確立することです。
7.5.3.2:作成および更新
7.5.3.2では「作成および更新」に関する要求が記されています。文書は正確かつ最新の情報を維持するため、必要に応じて更新しなければなりません。
これには、文書の作成時、更新時に行うべき見直しと承認の手続きが含まれます。これらの手順を守ることで、組織の文書管理が徹底され、文書が効果的なものになります。
ISOにおける文書管理では、管理における理想的な環境や、そのために必要な取り組みなどが要求事項の中に組み込まれています。
ISOにおける文書管理の重要性とは?
ISOにおける文書管理は、企業が標準化された手順やプロセスを確立し、それを従業員が徹底するために必要です。これにより、業務の一貫性と効率性が向上し、組織の強化にも繋がります。
また、ISOは第三者認証を前提としています。このため、企業が定めたルール通りに業務が遂行されているかを確認するためには、文書化された情報が必要です。これらの文書は、外部の監査員が企業の運用状況を評価する際に欠かせない証拠となります。
なお、ISOにおける文書管理の目的や実施時のポイントについてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、併せてチェックしてみてください。
関連記事:ISO規格における文書管理の目的や実施するポイントを解説
適切なISO文書管理により、企業全体の効率化と品質向上が実現し、ISO規格に準拠した運営が可能になります。
ISOにおいて文書管理を行う3つのメリット
ISOにおいて企業のさまざまな情報を文書化し、管理することで、どのようなメリットを得ることができるのでしょうか。ここでは文書管理のメリットについて詳しく解説します。
業務の標準化
文書管理を通じて業務を標準化することは、一貫性と効率性を向上させる重要な手段です。標準化された手順やプロセスを文書化することで、すべての従業員が同じ基準で業務を遂行できるようになります。
文書管理による業務の標準化を行うことで、ミスや誤解が減り、製品やサービスの品質が安定します。また、新しい従業員の教育やトレーニングを実施しやすくなるなど、スムーズな業務引き継ぎが可能になります。
標準化された文書は、業務の改善や最適化の基礎資料となり、継続的な改善活動を支えるためのものになります。
コンプライアンスの確保
ISOにおける文書管理は、企業が法令や規制を遵守するための重要な手段です。文書化された情報は、内部および外部の監査において、企業が法的および規制上の要求を満たしていることを証明するための証拠となります。
適切な文書管理を行うことで、企業は法令遵守の状況を常に把握し、違反のリスクを最小限に抑えることができます。また、文書管理は、コンプライアンスのための内部プロセスや手順を明確にし、従業員がそれに従うことで、組織全体のコンプライアンス意識を高める効果もあります。
リスク管理の強化
文書管理は、リスク管理を強化するための重要な手段です。リスクに関する情報や対応策を文書化することで、潜在的なリスクを特定し、評価し、適切な対応策を講じることができるようになります。
また、過去のリスク対応の記録を参照することで、類似のリスクに対して迅速かつ効果的な対応が可能となります。
さらに、文書化されたリスク管理プロセスは、従業員全員がリスクに対する意識を持ち、組織全体でリスクを共有・管理することができます。これにより、企業は不測の事態に対する備えを強化することができ、持続可能な経営を支えることができます。
ISO文書管理を徹底することで、業務の標準化、コンプライアンスの確保、リスク管理の強化など、多くのメリットが得られます。
ISOにおける文書管理のデメリットとは
文書管理がもたらすメリットのみではなく、デメリットにも目を向けることは、ISOの認証取得を行ううえで重要です。
本項では、ISOにおいて文書管理を行うことで発生するいくつかのデメリットを紹介します。
コストと時間の負担
ISOにおける文書管理は、徹底した管理体制を築くために多くのコストと時間を要します。文書の作成、更新、保管、廃棄など、各プロセスにおいて専門的な知識、経験、技術が必要となり、これに対応するための教育やトレーニングが必要です。
また、文書管理のためのシステム導入や、メンテナンスにもコストが発生します。これらのコストは、特に人的リソースの少ない中小企業にとって大きな負担となり、他の業務に影響を与える可能性があります。
従業員の負担増加
文書管理の徹底は、従業員の業務負担を増加させる可能性があります。日常業務に加えて、文書の作成、更新、管理の手順を遵守する必要があり、業務量が増えていきます。
特に、文書管理が厳格なルールに基づいて行われる場合、従業員はそのルールに従って業務を遂行しなければならず、これが業務効率の低下を招くことがあります。
さらに、文書管理に対する理解度やスキルが不足している場合、追加の教育やトレーニングが必要となり、それがさらなる負担となります。
文書の過剰管理と手続き
ISO規格に準拠するためには、詳細な文書管理が求められることから、文書の過剰管理や手続きの手間が生じることがあります。必要以上に詳細な文書化や頻繁な更新要求を行うと、業務の柔軟性が失われる可能性があるため注意しましょう。
また、過剰な手続きにより、迅速な意思決定が妨げられ、業務の進行が遅れることがあります。このような状況を避けるには、組織の状況を考慮しながら文書管理のバランスを取ることがポイントです。
文書管理の導入により、従業員の負担が増加することがあるため、注意が必要です。
ISOの文書管理を実施する方法【4ステップ】
効果的なISO文書管理システムを構築するためには、以下のステップを踏むことがポイントです。
ステップ1:文書の分類と整理
文書管理の最初のステップは、文書の分類と整理です。まず、必要な文書の種類を特定し、用途や重要性に応じて分類しましょう。
たとえば、規定、手順書、記録など、書類を種別に整理することが挙げられます。この分類にもとづいて、文書の整理体系を構築し、文書を一元管理できるようにします。また、各文書には一意の識別番号やバージョン管理を行い、検索や追跡ができるようにしましょう。
ステップ2:文書の作成と承認
続いて、文書の作成と承認プロセスを確立します。文書を作成する際は、内容の正確性と理解しやすさ重視し、関係者が見やすい形式で作成します。
作成後は、内部レビューを行い、必要に応じて修正を加えます。その後、承認者による正式な承認を得て、文書の有効性を確認しましょう。
その他の手法として、承認者の前に査閲や確認者といった内容を確認する人を設定する場合もあります。
また、承認された文書は、適切なフォーマットで保存し管理体系に組み込むよう注意しましょう。
ステップ3:文書の配布と保管
文書の配布と保管は、関係者全員が必要な情報にアクセスできるようにするための重要なステップです。承認された文書は、適切な部門や担当者に配布します。
電子文書の場合、共有フォルダや文書管理システムを活用し、アクセス権限を設定して情報セキュリティの確保が不可欠です。
また、紙媒体の文書は、ファイリングして保管し、すぐに検索できるようにしましょう。これにより、文書の紛失や誤用を防ぎ、必要なときに取り出せる環境を整えることが可能です。
ステップ4:文書の改訂と廃止
最後に、文書の改訂と廃止プロセスの確立です。ISOに関連する文書は、時間の経過や状況の変化に応じて更新が必要となります。
そのため、定期的なレビューを行い、内容が最新かつ適切であることを確認しましょう。もし改訂が必要な場合は、修正内容を明確にしたうえで、再度承認プロセスを経て更新を行います。
また、不要になった文書は適切に廃止し、保管場所から削除しましょう。廃止された文書の記録を保持することで、トレーサビリティを確保しつつ、最新の文書管理ができるようになります。
効果的な文書管理システムの構築により、文書の正確性と信頼性が向上し、業務の効率化と品質管理が強化されます。
ISOの要求事項を満たして文書管理を行うポイント3選
ISO文書管理を効果的に実施するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
文書の体系図を作成する
文書の体系図を作成することは、ISO文書管理を効果的に行うための基本です。体系図は、文書の構成や関連性を視覚的に示し、どの文書がどの業務プロセスや手順に関連しているかを明確にします。
これにより、従業員は必要な情報にアクセスしやすくなり、業務効率の向上が期待できるでしょう。また、体系図は文書の欠落や重複を防ぎ、文書管理の整合性を確保するのに役立ちます。
定期的な更新を行い、組織の変化に対応した柔軟な文書管理体系を維持することがポイントです。
文書管理の規定を決める
文書管理の組織内規定を明確に定めることは、ISO文書管理の運用をするのには欠かせません。
組織内の規定には、文書の作成、承認、配布、保管、改訂、廃止に関する具体的な手順や基準を含めます。また、責任者や関係者の役割と権限を明示し、文書管理に関する一貫性を保てるようにしておきましょう。
これにより、従業員は各自の役割を理解することができ、文書管理のプロセスがスムーズに進行します。さらに、定期的に規定を見直し改善を行うことで、常に最新の状態を維持することができます。
適切な文書管理を実施する
適切な文書管理を実施するためには、専用の文書管理システムを導入し、電子文書の管理を効率化することが有効です。
システムは文書の検索、アクセス、更新、追跡を容易にし、情報のセキュリティを保つのに役立ちます。
また、従業員に対する定期的な研修を実施することで、文書管理の重要性と具体的な手順の周知徹底が可能です。さらに、文書管理のパフォーマンスを定期的に監査し、問題点を把握し改善することで、ISOの要求事項を継続的に満たすことができます。
これらのポイントをおさえて管理を行うことにより、要求事項を満たしつつ、効率的な文書管理が実現します。
まとめ
ISO文書管理は、企業の品質向上や業務効率化に欠かせないプロセスです。文書管理による業務負担やコスト増といったデメリットはありつつも、組織全体でISOを適切に運用するうえで欠かせない要素の一つといえます。適切な文書管理システムの構築と実施により、企業全体の品質管理が強化され、ISO規格に準拠した運営が可能になります。
なお、ISOの文書管理についてお困りの場合は、専門家に相談するのも一つの手です。