ISO審査の流れを徹底解説!審査の種類や事前の準備なども解説
ISO規格の要求事項を適切に満たすうえで、適用範囲の設定は重要な要素の一つといえます。では、適用範囲はどのように決定すればよいのでしょうか。本記事ではISOの適用範囲の決定方法や認証範囲との違い、適用範囲の変更について解説します。
ISOの適用範囲とは?
ISOの適用範囲は、組織が適用するISO規格の範囲を明確にすることです。適用範囲を定めることで規格の要求事項を組織内で運用できるようになります。
運用するISO規格の適用範囲を定めることで、マネジメントシステムの有効性が向上し、継続的改善と管理がしやすくなります。さらに、適用範囲を明確にすることで組織の取り組みや管理体制の透明性が増し、利害関係者からの信頼を得やすくなります。
適用範囲を定めることにより法規制などを遵守できるため、コンプライアンスリスクが低減し、法的トラブルを回避できます。
このように、適用範囲を明確に定義することは、組織全体で正しくマネジメントシステムを運用していくうえで不可欠です。
適用範囲を正確に定義し、文書化することで、組織の認証取得や、持続的改善に繋がります。
適用範囲と認証範囲の違い
ISOの適用範囲と認証範囲はしばしば混同されますが、それぞれ異なる意味を持ちます。では、両者の違いはどこにあるのでしょうか。
適用範囲と認証範囲は、ISO規格の適合において重要な役割を担っています。
適用範囲は、組織が規格を適用する業務や活動の領域を指し、プロセスが規格の要求事項に従うかを定義します。つまり適用範囲は、ISO規格を組織内で管理するために設定されるものです。
一方認証範囲は、認証機関が審査を行い、実際に認証を付与する対象範囲を指す言葉です。認証範囲を明確にすることで、審査がスムーズに進み、組織の認証取得が可能となります。言い換えると、認証範囲はマネジメントシステムを運用する組織が「規格に準拠していること」を外部に向けて示すために設定します。
ISOの適用範囲と認証範囲には明確な違いがありますが、これらの範囲を明確に区別することで、ISO認証取得に対する理解を深めることができます。
ISOの適用範囲を決める方法とは?
ISOの適用範囲はどのようにして決定されるのでしょうか。
本項では、適用範囲の決め方や、適用範囲を限定すべき場合について解説します。
適用範囲は原則全社
ISOの適用範囲は組織によって決定できるとはいえ、原則全社です。例えば、ISO9001の要求事項には、以下の記載があります。
決定した品質マネジメントシステムの適用範囲内でこの規格の要求事項が適用可能ならば,組織は,これらを全て適用しなければならない。 組織の品質マネジメントシステムの適用範囲は,文書化した情報として利用可能な状態にし,維持しなければならない。適用範囲では,対象となる製品及びサービスの種類を明確に記載し,組織が自らの品質マネジメントシステムの適用範囲への適用が不可能であることを決定したこの規格の要求事項全てについて,その正当性を示さなければならない。
上記はつまり、運用する規格の要求事項が全て適用可能であれば、組織は全ての領域で適用する必要があるということになります。しかしながら当然、組織の状況は一様ではありません。ISOの適用範囲については、組織が内外で抱える課題や、利害関係者のニーズ及び期待、組織が提供する製品・サービスなど、さまざまな要素を加味したうえで、決定される必要があります。
そして場合によっては、適用範囲を全社とすることで、業務の進行に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。上記のような状況が想定される場合、柔軟に適用範囲を決定することは問題ありません。その代わり、適用範囲を限定する正当性を説明する文書を残しておく必要があります。
適用範囲を絞った方が良い場合とは
では、ISOの適用範囲を絞った方が良い場合とは、具体的にどのような状況を指すのでしょうか。具体例としては、次の状況が挙げられます。
- 複数の事務所を運営している
- 多種多様なジャンルの製品・サービスを取り扱っている
まず複数の事業所を運営している組織を例にとってみましょう。
全ての事業所に同じ規格を適用した場合、一部事業所で業務効率が低下するといった問題が発生する可能性があります。このような場合には、特定の事業所を適用範囲から除外することで、マネジメントシステムの効果的な運用に繋がることがあります。
また、ジャンルの異なる製品やサービスを手掛けている企業の場合、全ての部門や業務セクションにマネジメントシステムを適用してしまうと、特定の部門やセクションで、業務の進行や効率に支障をきたすといった可能性もあるでしょう。取り扱う商材の範囲が広い場合、適切な領域に適用範囲を設定することで、品質向上やリスク管理を強化できます。
このように、適用範囲を適切に調整することで、組織全体の効率性が向上し、ISO規格の遵守がより効果的になります。
ISOの適用範囲は原則的に全社となりますが、場合によっては自社の業務や組織の体制に適した適用範囲を決定する必要があります。なお、ISOの適用範囲についてはこちらの記事でも解説していますので、併せてご確認ください。
関連記事:知っておきたい!ISOマネジメントシステム認証の適用範...(ISOプロのサイトへ)
ISOの適用範囲は変更できる?
ISOの適用範囲を決定した後、組織内の体制変更などさまざまな事情によって適用範囲の変更が必要になる場合もあるでしょう。
ここではISOの適用範囲の変更の可否や、変更した場合に必要な対応について解説します。
適用範囲を途中で変更することは可能
ISOの適用範囲は、途中で変更、拡大、縮小することが可能です。組織の業務状況や戦略的な変化に応じて、適用範囲を柔軟に調整することが推奨されます。
例えば、新しい事業所の開設や既存事業所の閉鎖、新製品や新サービスの導入、顧客要求の変化など、適用範囲の変更が必要な場合にはさまざまな状況が挙げられるでしょう。
なお、適用範囲を変更する際は、変更の理由や変更後の適用範囲を明確にするために、マネジメントレビューでの報告が必要です。これにより、適用範囲の変更について、変更後の適用範囲が組織の目的や目標にどのように影響するか組織全体で理解を深めることにも繋がります。
さらに、大幅な適用範囲の変更は、外部の利害関係者にも伝達することが求められます。適用範囲を柔軟に調整することで、組織は内部・外部状況の変化に適応できます。
適用範囲の変更を文書に反映する必要がある
ISO規格の適用範囲を変更した場合には、変更後の適用範囲をマニュアルなどに文書化しておく必要があります。
変更後の適用範囲を文書化することで、組織内の全関係者で同じ情報を共有したうえで規格の遵守と運用ができるため、透明性が確保されます。文章化により、内部監査やレビューをする際の確認も容易になるでしょう。
なお、審査時には必ず、はじめに適用範囲の変更の有無を確認されるため、文書化した情報には変更記録を残すようにしましょう。
ISOの適用範囲を変更する際は、組織の状況に合わせ慎重に検討する必要があります。
まとめ
本記事では、ISOの適用範囲の定義や認証範囲との違い、適用範囲の決め方について解説しました。ISO規格の適用範囲は組織がマネジメントシステムを適切に運用していくうえで不可欠な要素です。また、適用範囲に変更を加える場合は、必ず変更箇所を文書化し、記録として残す必要があります。
もしISO規格の適用範囲でお困りのことがあれば、専門家に相談するのも一つの手です。