製造業における品質方針の具体例とは?設定する際のポイントも解説
品質マネジメントシステム構築にあたり、ISO9001取得を検討している企業も多いでしょう。ISO9001を運用する際、重要となるのがPDCAサイクルです。本記事では、ISO9001におけるPDCAサイクルの重要性や実践方法などを解説します。
なお、ISO9001の概要については、こちらの記事をご覧ください。
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PDCAサイクルとは?
PDCAサイクルとは、ビジネスにおいて広く用いられている改善手法の一つです。
PDCAサイクルは、P(Plan:計画)、D(Do:実行)、C(Check:確認)、A(Action:改善)の4段階に分かれています。
継続的にこのサイクルを回すことで、組織における課題解決や、品質改善に役立てることが可能です。
PDCAサイクルはさまざまなビジネスシーンで活用されている手法ですが、ISO9001においても重要な役割を担っています。
ISO9001におけるPDCAサイクルの重要性
組織の抱える課題や目標の達成のためにPDCAサイクルは重要な役割を果たしますが、なぜISO9001においてPDCAサイクルが重要とされているのでしょうか。
継続的改善に役立つ
ISO9001では、PDCAサイクルによる継続的改善を品質改善や顧客満足度向上といった目標達成の中心に据えています。組織はPDCAサイクルを通じて定期的に現状を評価し、業務におけるプロセスやマネジメントシステムの改善点を特定することで効果的な対策を行えます。
具体的には、計画段階で品質目標とプロセスを設計し、実行段階でその計画を実施。確認段階で結果を評価し、改善段階で必要な修正や調整を行います。このサイクルを回すことで、組織は持続的に品質を向上させ、顧客の要求に応える製品やサービスの提供が可能となります。
また、PDCAサイクルを活用することで、組織内の効率化やコスト削減、リスクの管理強化なども実現できます。ISO9001の掲げる品質改善や顧客満足度向上といった目標を達成するには、PDCAサイクルの適切な運用と継続的な改善活動が不可欠です。
課題解決の手法として活用できる
PDCAサイクルは、組織が直面するさまざまな課題を効果的に解決するための手法として、広く活用されています。そしてこれは、ISO9001を運用している組織においても例外ではありません。
ISO9001の目標は、より良い製品やサービスを提供し、顧客満足度を向上させることです。しかし、製品・サービスの品質向上には、組織が抱えるさまざまな業務課題を解決する必要があります。
PDCAサイクルを活用することで、継続的改善のためのプロセスを繰り返します。そして改善を繰り返すことで、業務課題の解決にも繋がります。
ISO9001ではPDCAサイクルを回すことで、品質向上や顧客満足度向上といった目標達成を目指すことができます。
ISO9001の要求事項とPDCAサイクルの関係とは
ISO9001における要求事項とは、ISO9001を取得するにあたって企業が満たしてくべき必要事項です。では、ISO9001の要求事項とPDCAサイクルにはどのような関係があるのでしょうか。
ISO9001の要求事項
ISO9001の要求事項は、全10章で構成されています。各章の内容は以下のとおりです。
1章 適用範囲
ISO 9001規格の適用範囲について説明しています。規格が適用される組織の種類や、品質マネジメントシステムの目的、範囲、適用可能な制限事項について規定しています。
2章 引用規格
ISO 9001の要求事項を理解するための基本用語や定義についてです。
3章 用語と定義
ISO 9001で使用される重要な用語と規格の要求事項を正確に理解するための共通の言語が確立されています。
4章 組織の状況
組織が置かれている状況を理解し、その状況が品質マネジメントシステムに与える影響を評価する方法について述べています。内部及び外部の課題、利害関係者のニーズと期待です。
5章 リーダーシップ
リーダーシップとコミットメント、品質方針、役割、責任及び権限についての要求事項を定義しています。トップマネジメントから役職者の役割と責任が明確にされています。
6章 計画
リスク及び機会への取り組み、品質目標及びその達成計画、QMSの変更の計画について述べています。プロセスアプローチとも言われています。
7章 支援
必要なリソースの提供、能力、認識、コミュニケーション、文書化した情報の管理についての要求事項です。効果的なQMS運用を支えるためのサポートプロセスともわれています。
8章 運用
製品及びサービスの実現に関する要求事項です。顧客要求事項の決定、製品及びサービスの設計・開発、外部提供者の管理、製造及びサービス提供、リリース、及び不適合品の管理に関するプロセスを含みます。
9章 パフォーマンス評価
QMSのパフォーマンス及び有効性を評価するためのモニタリング、測定、分析及び評価の方法を規定しています。内部監査及びマネジメントレビューの要求事項も含まれています。
10章 改善
不適合及び是正措置、継続的改善のためのプロセスについてです。QMSの継続的な適合性、有効性及び顧客満足の向上を目指して改善活動を行います。
このように、ISO9001の要求事項の範囲は多岐に渡ります。要求事項のうちPDCAサイクルと関連のある部分だけでなく、全体の内容を理解しておくことも適切な運用においては重要です。
PDCAサイクルが関連する要求事項
ISO9001の要求事項のうち、PDCAサイクルと関連が深い項目は4章から10章です。PDCAサイクルのどの段階に各章が対応しているか、以下を参考にしてください。
- 計画(Plan):4章「組織の状況」/5章「リーダーシップ」/6章「計画」/7章「支援」
- 実行(Do ):8章「運用」
- 確認(Check):9章「パフォーマンス評価」
- 改善(Action):10章「改善」
ISO9001のうち、PDCAサイクルと密接に関連する上記項目を理解して運用をおこなうことで、PDCAサイクルによる継続的改善を実現できます。
実務で役立つISO9001 PDCAの実践方法とは
ISO9001におけるPDCAサイクルの実践方法を4段階に分けて具体的に解説します。
P:計画段階
Planにあたる計画段階はISO9001の要求事項のうち、4章から7章までに該当します。
計画段階では、組織内外の状況、利害関係者、企業を取り巻く状況からリスクへの取り組みを明確にします。そして、トップマネジメントが品質方針、品質目標を明確にして目標達成のための目標計画の設定をします。
D:実行段階
Doにあたる実行段階は、8章が対応する項目です。従業員のスキル向上、効果的な組織のコミュニケーション、文書化した情報の管理などを行い、目標計画に沿って実行をしていきます。
また、リスク管理計画に基づいてリスクを評価し、必要な予防措置を実行していきます。
す。
C:確認段階
Checkにあたる確認段階は9章が対応するISO9001の要求事項です。確認段階では主に、パフォーマンスの有効性を確認します。具体的に実行するタスクとしては測定、分析、モニタリングなどです。
また、内部監査を実施し、品質マネジメントシステムが計画通りに実施されているかを確認します。そして、マネジメントレビューを行い、現状に対する評価を下します。その中で問題点や改善の必要性を特定し、改善のプロセスへと繋げていきます。
A:改善段階
Actionにあたる改善段階は要求事項の10章に当てはまります。改善段階で行うのは不適合及び是正措置、継続的改善です。内部監査、マネジメントレビューで特定した問題や課題の解決を行います。
不適合の是正では、不適合箇所の原因を分析・追及して是正措置を行います。改善段階でこれらを徹底することにより、品質マネジメントシステムの有効性を向上させ、目標の達成に近づきます。
具体的な適用方法を理解し、PDCAサイクルを効果的に回すことで、ISO9001の運用がスムーズになります。
まとめ
ISO9001は継続的改善が軸となるため、改善に向けたプロセスを回すためのPDCAサイクルは、運用において欠かせない要素といえます。PDCAサイクルを回す際は、ISO9001の要求事項に則った形で課題解決に向けた取り組みを行いましょう。
もしISO9001の取得でお困りのことがあれば、専門家に相談するのも一つの手です。