ISO14001の環境側面の例は?環境側面の管理方法やメリットについて解説
環境マネジメントシステムを比較検討していくなかで、ISO14001とエコアクション21の違いがどこにあるのかよく分からない、という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ISO14001とエコアクション21の違いをそれぞれの概要、取得メリットや費用相場など、さまざまな点から徹底比較していきます。
ISO14001とエコアクション21の基本概要
ISO14001とエコアクション21は、企業の環境マネジメントシステムとして広く利用されている認証規格です。
ISO14001は国際規格として、環境マネジメントシステム(EMS)の枠組みを提供し、企業の環境経営をサポートします。
一方、エコアクション21は、日本独自の環境マネジメントシステムであり、中小企業に特化したガイドラインを提供しています。
ISO14001とは?
ISO14001では、企業が事業のなかで及ぼす環境への影響を可視化し、環境パフォーマンスを向上させ、環境負担を軽減させるためのシステムを構築します。また、法令遵守も目的の一つです。
ISO14001を認証取得することにより、取得企業は「環境に配慮した企業」として認められることになります。
なお、ISO14001に関してはこちらの記事でも詳しく解説していますので、併せてチェックしてみてください。
【初心者向け】ISO14001とは?導入企業や取得メリ...
エコアクション21とは?
エコアクション21は、日本の環境関連の法令に則った形で構成されており、企業や組織が環境負荷の削減、環境保護活動を法的基盤に基づいて行うことを支援しています。
また一部の自治体では、エコアクション21の認証取得にかかる費用の一部を補助する補助金制度を設けています。この補助金制度により、中小企業や地方自治体も積極的にエコアクション21を取得しやすくなっています。
ISO14001とエコアクション21の違い
ISO 14001は国際標準化機構による国際規格で、全世界の組織が対象です。また、認証取得には外部機関の審査が必要で、年に1回の定期審査と3年に1回の更新審査があります。
一方、エコアクション21は日本の環境省が制定した国内規格で、中小企業や公共機関、非営利団体を対象にしています。認証は年次審査、毎年更新が必要です。
また、ISO 14001は国際的に認知度が高いのに対し、エコアクション21は日本国内のみで適用できる認証規格です。
このように、両者の基本的な概要や違いを理解しておくことで、認証取得の検討に役立ちます。
ISO14001/エコアクション21の認証取得を行うメリットとは
ISO14001とエコアクション21では、それぞれ認証取得を行うメリットが異なります。
ISO14001は国際規格となるため、取得することで国際的な取引先からの評価も高まります。一方、エコアクション21は国内規格となるため、自社と結びつきの強い地域の企業をはじめ国内企業との取引において有効性があります。ただし、認証取得にはそれぞれに応じたコストやリソースが必要です。
ISO14001の認証取得を行うメリット
ISO14001の認証取得のメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- 環境リスクを低減できる
- 業務効率や生産性を向上できる
- 従業員のモチベーション向上につながる
マネジメントシステムを構築するなかで、企業組織が内包している環境リスクの要因を低減できるよう、業務の見直しを行うことができます。さまざまな「ムダ」を発見するきっかけになるため、業務効率や生産性の向上といったメリットも見込めます。
昨今、環境問題は国際的な社会問題とされています。そのため、環境問題に取り組んでいる企業で働いていることが従業員のモチベーション向上につながるでしょう。
エコアクション21の認証取得を行うメリット
ISO14001を認証取得するメリットに加え、エコアクション21を認証取得するメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 中小企業に適しており、費用対効果が高い
- 金融機関の低利融資制度を活用できる
- 文書や様式が定められているため、構築しやすい
エコアクション21は国内規格で、取得している企業は環境負荷の大きい製造業や建設業など、特定領域の中小企業が目立ちます。また、認証取得をはじめ、かかるコストもISO14001と比べて低い点もメリットの一つです。
また、エコアクション21では認証・登録事業者に向けて低利融資制度を設けているため、こうした点もISO14001にないエコアクション21の取得メリットといえます。
マネジメントシステム構築の面においても、エコアクション21は文書様式や基準が定められているため、比較的簡単に構築できます。
認証取得する際は、ISO14001とエコアクション21のメリットをそれぞれ踏まえたうえで検討することが重要です。
ISO14001/エコアクション21の認証取得を行うデメリット
ISO14001/エコアクション21の認証取得を検討するにあたって、デメリットについても理解しておくことは重要です。
前提として、認証取得に際して書類作成が増える、認証取得まで時間を要するといったデメリットは両者に共通しています。本項では、ここで挙げた以外のデメリットについて解説します。
ISO14001の認証取得を行うデメリット
ISO14001の認証取得するデメリットとしては、認証取得にかかるコストがエコアクション21と比較し、高額であることが挙げられます。
また、エコアクション21には文書作成の専用フォーマットがあるのに対し、ISO14001の場合は文書様式や基準を独自で作成する必要があります。
エコアクション21の認証取得を行うデメリット
エコアクション21の認証取得におけるデメリットとしては、取得されている業界が限定的な点が挙げられます。
エコアクション21を取得しているのは、主に製造業や建設業などの産業です。ISO14001も製造業、建築業をメインに取得されてきましたが、昨今は環境意識の高まりも影響し、小売業やサービス業など、幅広い業界で取得されています。
また、エコアクション21では、環境経営レポートの作成を行う必要があります。この環境経営レポートには、3年間分の二酸化炭素削減、廃棄物削減、化学物質削減、節水などの具体的な実績報告が含まれます。このため、定期的なデータ収集や評価、報告書の作成にかかる手間や時間が必要となります。
メリットのみではなく、両者の認証取得におけるデメリットと違いを把握することで、自社に適した認証取得の判断に役立ちます。
認証取得の費用相場はどれくらい?
ISO14001とエコアクション21の認証取得にかかる費用について比較してみましょう。
ISO14001は初期導入費用や継続的な審査費用が比較的高くなる傾向があります。一方、エコアクション21は中小企業向けに設計されているため、費用負担が軽減されています。費用の詳細は企業の規模や事業内容によって異なります。
ISO14001の認証取得にかかる費用相場
ISO14001の認証取得には「登録審査費用+マネジメントシステムの構築・運用費用」がかかります。
ISO14001の登録審査費用は、適用範囲によって異なるものの50万円から100万円程度です。
また、マネジメントシステムの構築、運用にかかる費用は、自社で取得する場合とコンサルティング業者に依頼する場合で異なります。
なお、ISO14001のマネジメントシステム構築、運用については、自社取得とコンサルティング業者への依頼とで大きく費用が変わるため注意しましょう。一般的に、自社取得の場合のコスト計算は「取得期間×関係者の人数×給与」で算出できます。
エコアクション21の認証取得にかかる費用
エコアクション21にかかる審査費用、審査員1人日当たり約5万円です。
なお、認証、登録料は従業員数によって異なるため、下記を参考にしてください。
- 従業員数が10人以下の場合:約5万円
- 従業員数が11人から50人の場合:約10万円
- 従業員数が51人から100人の場合:約15万円
上記を見ると、エコアクション21はISO14001に比べ、コスト面では大幅なメリットがあることが分かります。
このように、ISO14001、エコアクション21の認証取得時にかかる費用面の比較を行うことで、自社にとって検討材料の一つにできます。
ISO14001/エコアクション21に適した企業の規模や業種とは?
ISO14001とエコアクション21では、それぞれ適する企業の規模や業種に違いがあります。
ISO14001に適した企業とは
ISO14001に適した企業は国際取引を行う企業や大企業に適しています。
特に大手企業は規模が大きく、多くの資源やエネルギーを消費するため、環境に大きな影響を及ぼす可能性があります。
そのためISO 14001を導入することで、環境負荷の管理や改善を効果的に行い、持続可能な経営を実現できます。また、国際取引を行う企業は、多様な国や地域の環境規制に対応することもできます。
エコアクション21に適した企業とは
エコアクション21に適した企業は、中小企業や自治体などです。エコアクション21は、ISO 14001に比べてコスト面での導入ハードルが低く設定されています。そのため取得維持にかけられる予算を抑えたい企業と相性の良い規格です。
また、エコアクション21を取得することで、地元のコミュニティや取引先からの信頼を得るためにも役立ちます。具体的には、地元の中小企業や団体がエコアクション21を採用することで、地域社会に密着した環境保全活動が実現できます。地元の取引先は、地域社会への貢献を重視する傾向があるため、信頼を獲得しやすくなります。
適用される企業の特性を考慮して、どちらの認証が最適かを検討することが重要です。
自社に最適な認証を選ぶためのポイントとは
自社に最適な認証を選ぶためには、どのようなポイントに注意すべきでしょうか。
費用対効果で考える
自社にとって最適な認証を選ぶ際に重要なポイントは費用対効果です。認証取得にはISO14001、エコアクション21のどちらも費用がかかるため、長期的な視点での費用対効果を考えることが重要です。
また、企業の規模や業種、取引先との関係、地域社会への影響などを考慮しながら、将来的な効果を判断することも不可欠といえます。
自社の環境目標やビジョンを明確化する
自社の環境目標やビジョンを明確にすることによって、ISO14001とエコアクション21のどちらを選ぶべきかが見えてきます。
ISO14001は国際的に認められている規格となるため、「3年以内にCo2排出量を40%削減する」「生産工程から発生する廃棄物量を20%削減する」「環境に関する社内研修の受講率を90%以上にする」など幅広い環境目標に対応可能です。例えば、自社では海外企業との取引も多いため、取引先から信頼を得たい、環境負荷の軽減など実績をアピールしたい場合には、ISO14001の方がマッチするでしょう。
一方で、エコアクション21は国内規格となるため、地域社会への貢献度が期待できます。地域企業と取引が多い、結びつきが強い場合には、エコアクション21を取得した方が得られるメリットは大きいでしょう。
どちらの認証も企業の信頼性向上や法令遵守に役立つうえ、環境負荷の低減や環境パフォーマンス向上を促進します。
取引先からの要求事項を考慮する
認証取得を考える際には、取引先からの要求も重要な視点です。
取引先が特定の環境マネジメントシステム認証を要求する場合、それに適合する認証を取得することが取引の円滑化や新規顧客獲得につながります。例えば、国際的な取引を行う場合はISO14001が有利であり、取引先の国内規制や国際基準を満たす必要があります。
一方、地域密着型の取引や中小企業間の取引では、エコアクション21の認証取得が相手先との関係強化になります。取引先からの要求事項を明確に把握し、認証選択に反映させることで、取引先との信頼関係を築きながら、持続可能な環境負荷を削減できます。
これらのポイントを総合的に判断することで、自社にとって最適な環境マネジメントシステムを選択できます。
まとめ
ISO14001、エコアクション21は両方とも環境に関する認証規格ではあるものの、費用面をはじめ、さまざまな点で違いがあります。そのため、両者の違いを把握したうえで、慎重に比較検討することが重要といえます。
もしISO14001の取得でお困りのことがあれば、専門家に相談するのも一つの手です。