ISO審査機関(認証機関)とは?認定機関と認証機関の違いや選定のポイントを解説
こんにちは。ISOプロの岡です。
近年はISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を取得している企業も多く、そのため自社でも取得を考えているという方も多いです。
しかし、そもそもISO認証とはどのようなもので、具体的にどのようなメリットがあるのかイマイチ分かっていないという方も多いでしょう。
そこでこの記事では、ISO認証とは何か、認証の種類、取得方法や取得後の維持管理、取得のメリットについて詳しく解説します。
ISO認証は、組織活動の管理の仕組みが国際基準を満たしていることを証明するものです。その取得は企業の信頼性を高め、ビジネスの拡大につながるため、ぜひこの記事を読んで理解を深めていただければと思います。
ISO認証とは
まず、ISO認証とは何かについて解説します。
スイスのジュネーブに本部を置く国際標準化機構
ISO認証を理解するために、まずはISOとは何かということから解説します。
ISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称であり、スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関・非営利組織のことです。
この組織が定めた規格のことを「ISO規格」と言い、製品、サービス、プロセス、材料、システムに関する国際規格を制定しています。
>>関連記事:ISOとは?ISOをわかりやすく解説【図解】(ISOプロのページ)
ISO規格の種類はモノ規格とマネジメントシステム規格の2種類
ISO規格には「モノ規格」と「マネジメント規格」の2種類があります。
「モノ規格」とはカードのサイズなどのモノに対する規格を指し、質量や長さ、時間の単位、案内標識、コンセントやプラグなどの基準を定めています。
「マネジメントシステム規格」とは、品質や環境などの組織活動を管理するための仕組み(マネジメントシステム)に対する規格です。
マネジメントシステム規格認証の審査はISO本体ではなく、ISO認定機関から認定されたISO審査機関(認証機関)が行います。
ISO認証とは何か
ISO認証とは、ISOのマネジメントシステム規格の第三者認証制度のことです。ISOの要求事項に適合したマネジメントシステムであると、認証審査で審査機関から認められISO認証を取得している状態を指すこともあります。
国際的な基準をクリアしていることの証明となるため、国内の取引や官公庁案件の入札に参加できるだけでなく、グローバル進出がしやすくなるといったメリットがあります。
ISOマネジメントシステム規格の種類
ISO規格には様々な種類があります。
ここでは、一例をご紹介します。
ISO9001
品質マネジメントシステム規格と呼ばれており、商品やサービスの品質向上について定めた規格です。
>>関連記事:ISO9001とはなにか?導入企業や他の規格との違いを...(ISOプロのページ)
ISO9100
航空宇宙マネジメントシステム規格と呼ばれており、航空宇宙・防衛産業に特化した規格です。
ISO13485
医療機器・体外診断用医薬品マネジメントシステム規格と呼ばれており、医療機器産業に特化した規格です。
>>関連記事:ISO13485とは?ISO9001との違いや要求事項を解説(ISOプロのページ)
ISO14001
環境マネジメントシステム規格と呼ばれており、自社の活動による環境への負荷を最小限にすることを定めた規格です。
>>関連記事:【初心者向け】ISO14001とは?導入企業や取得メリ...(ISOプロのページ)
ISO17025
試験・校正マネジメントシステム規格と呼ばれており、試験所や校正機関が正確な測定および校正結果を提供する能力を認定するための規格です。
ISO20000
ITサービスマネジメントシステム規格と呼ばれており、ITサービスの内容とリスクを明確にし、効率的な管理と改善の実現について定めた規格です。
ISO22000
食品安全マネジメントシステム規格と呼ばれており、安全なフードサプライチェーンの展開のために食品安全のリスク低減について定めた規格です。
>>関連記事:【初心者向け】ISO22000とは?わかりやすく概要や...(ISOプロのページ)
ISO27001
情報セキュリティマネジメントシステム規格と呼ばれており、情報セキュリティリスクの管理について定めた規格です。
>>関連記事:【初心者向け】ISO27001とは?ISMS・Pマーク...(ISOプロのページ)
ISO27017
クラウドサービスセキュリティと呼ばれており、その名の通りクラウドサービスのセキュリティについての規格です。
>>関連記事:ISO27017とは?要求事項や管理策をわかりやすく解説(ISOプロのページ)
ISO22301
事業継続マネジメントシステム規格と呼ばれており、自然災害やシステムトラブル、感染症流行などの脅威に備え、効果的な対策を提供する包括的な枠組みについて定めた規格です。
>>関連記事:ISO22301(BCMS)とは?概要やメリット、取得...(ISOプロのページ)
ISO39001
道路交通安全マネジメントシステムに関する規格で、道路交通安全のために組織が取り組むべきマネジメントシステムの要求事項を定めています。
ISO45001
労働安全マネジメントシステムに関する規格で、安全な労働環境を整えるための枠組みについて定めています。
>>関連記事:【初心者向け】ISO45001とは?取得企業数や要求事...(ISOプロのページ)
ISO50001
エネルギーマネジメントシステムに関する規格で、組織のエネルギーパフォーマンスを可視化し、コスト削減を実現するための規格です。
ISO55001
アセットマネジメントシステム規格と呼ばれており、資産の適切な管理と組織の目標達成をサポートする経営の仕組みに関する規格です。
ISO認証は不要?取得のメリットや必要性とは
ISO認証を取得することでどのようなメリットがあるのかをご紹介します。
企業の価値や信頼性が高まる
ISO認証は国際的な認証であり、国際規格で定めている要件を満たしているということになります。そのため、ISO認証の取得を公表することで、顧客や取引先から信頼を得やすくなります。
ビジネスチャンスが増える
取引条件として「ISO認証を取得している企業」という条件を設けている企業が一定数います。また公的建設事業などではISO認証取得が必須条件となっている案件もあります。
そのような機会を活かす必要はありますが、ISO認証を取得することで、ビジネスチャンスは増えるでしょう。
競争力の向上につながる
ISO認証を取得することによって企業の価値や信頼性が高まると先述しましたが、それによってISO認証を取得していない競合と比べて優位に立てる可能性が高まります。
また、取引条件としてISO認証の取得を条件としている場合、ISO認証を取得していない企業はそもそも取引が出来ないためそういった意味でも優位に立つことが可能になります。
責任・権限の明確化でトラブル時の対応がスムーズに
ISO認証の要求事項のひとつとして、責任や権限の明確化があります。
責任や権限を明確化しておくことで、トラブルが発生した際にスムーズに対応することが可能になります。
ISO認証を取得する際のデメリットや注意点
反対にISOのデメリットとはどのようなものがあるのか解説します。
ISOの取得に費用と手間がかかる
ISOの取得には、マニュアルの作成や記録などの作業、マネジメントシステムの運用や改善といった作業にリソースがかかるため費用や手間がかかります。
ISO認証の維持や更新に手間がかかる
ISO認証は取得するだけではなく、それを維持するための運用が大切です。
また、取得した後は毎年の維持審査や、3年に1度の更新審査が必要になるため、維持や更新に手間がかかります。
効果が表れるまでに時間がかかる
マネジメントシステムを構築・運用を開始したからと言ってすぐに効果が表れるわけではありません。
効果が実際に現れるまでには時間がかかり、長期的な運用が必要になってきます。
以上のように、ISO取得にはデメリットもあるため、取得する際には意識しておく必要があります。
ISO認証の取得方法と維持管理
ISO認証を取得する方法と維持管理のポイントについて解説します。それぞれの手順やポイントをしっかりと覚えておきましょう。
取得方法
ISOの審査を受けるためには以下を行う必要があります。
- 取得するISO規格や取得範囲を決める
- ISO取得を担当する人を決める
- 審査機関を選定する
- 要求事項を満たすマネジメントシステムを構築する
- マネジメントシステムを運用する
- 内部監査とマネジメントレビューを実施する
- 取得審査を受ける
取得をする際にはしっかりと準備し、進めていきましょう。
維持管理
ISO認証は取得後の維持管理が重要になります。
維持管理のポイントについていくつかご紹介します。
ISOの構築とスリム化
ISO構築の際に、要求事項を満たすためだけのルールや文書類をマニュアルに加えることで運用しづらく、従業員に浸透しづらいISOとなります。
実業務に沿わせてマニュアルを構築することで、従業員への浸透を促進し、運用しやすいスリムなISOとなるため、初期構築は維持管理においても非常に重要なポイントです。
内部監査員の育成
内部監査は、構築したISOが実際に機能しているか、どんな問題点・課題があり、どんな改善の可能性があるかなど、企業の成長に関わるISOにおいても重要なポイントです。
当然、ただチェックリストにチェックするだけでは力不足です。より良い内部監査を行うためにも、内部監査員の育成は必要になります。外部の内部監査員講習などもあるので積極的に活用しましょう。
従業員の教育
ISOを取得しても、従業員への浸透に時間がかかることは少なくありません。また浸透したあとも、形骸化するケースはよく見受けられます。定期的に教育することで意識を向上させることが大切です。
目的の明確化
ISOの実施目的を明確にし、経営者目線で考えることが重要です。それによって、より効果的なマネジメントシステムの構築が可能になります。
ISO認証にかかる費用とは
ISOの取得および維持管理費用は、企業規模と取得する種類によって異なることを解説します。
取得審査費用
費用としては、ISO登録料や文書審査料、現地審査料があり、また規模や審査機関によって変わります。
相場としては、30万~100万円程度です。
また、これに加えてコンサルタントに依頼する場合にはさらに費用が掛かってきます。
維持管理費用
ISO認証は取得後にも費用が掛かります。
具体的には、1年目と2年目に実施される「定期審査」と、3年目の「更新審査」があります。
「定期審査」の費用は取得審査の約1/3、「更新審査」の費用は取得審査の約2/3です。
また、コンサルタントに継続してサポートをもらっている場合はその費用も掛かります。
以上のように、ISO認証にかかる費用は会社規模や審査機関、コンサルタントの有無によって変わるため、取得の際には実際にどれくらいの費用が掛かるのか確認しておきましょう。
>>関連記事:【業種別】ISOの取得費用や維持費用は?税務処理につい...(ISOプロのページ)
まとめ
ISO認証を取得することで、企業の信頼性が高まり、ビジネスチャンスも拡大するなど、様々なメリットがあります。
しかし、ISOの取得・維持には社内体制を整えて審査に臨む必要があります。また、その過程でかかる費用も考慮しなければなりません。
要求事項への深い理解も必要となるため、現在多くの企業がコンサルティング会社に依頼をする傾向にあります。
もしISO取得を目指しているならば一度専門家に相談するのも一つの手です。