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体を動かし、行きたい場所に自由に移動できる自転車でアクティブな毎日を

高齢者、障がい者に合わせた自転車を製作する専門家

堀田健一

堀田健一 ほったけんいち

#chapter1

体の状態や生活環境に合わせ、一人一人に適した三輪自転車をオーダーメード

 「手や足が使えないなど、障がいがあっても自転車に乗ることをあきらめないでください。体を動かし、行きたい場所に自由に移動できるように、ご自身に適した1台をオーダーメードします」

 そう呼び掛けるのは、東京都足立区で「堀田製作所」を営む堀田健一さん。障がいを抱えた人や運動機能が低下した高齢者に向け、車体が安定した三輪自転車を夫婦二人三脚で製作しています。

 「一人一人の体の状態や体格、生活環境などに合わせて手作業で仕上げます。ペダルを回す回転式や踏み込み式、手こぎ式、電動アシスト付きなど、多彩な種類を手掛けています」

 工程は、打ち合わせからサンプル試乗、設計、製造、納品まで。創業から四十余年、2700台以上を届けてきました。

 「特に試乗の段階では細かな調整を繰り返します。例えば、坂道が多い地域ならモーターの出力を強化したり、手の力が弱い方にはハンドルを下に押せばブレーキをかけられるようにしたり。工場に来ていただく必要がありますが、細部までお客さまに合わせて整備します」

 堀田さんが作る自転車を求めて、遠方から訪れる人は少なくありません。中には九州や沖縄、宮古島から足を運ぶ人も。

 「乗りやすさだけではなく、耐久性も十分に考慮しています。使用する中でぶつけて壊れた場合や故障した際は、自転車を配送していただいき修理も行っています」

 障がい者や高齢者の生活を支える姿勢が認められ、「シチズン・オブ・ザ・イヤー賞」や「吉川英治文化賞」など数々の賞を受賞。優れた製品・技術として足立区ブランドにも認定されています。

#chapter2

ものづくりが好きで、息子のために作った自転車をきっかけに本格的に始動

 堀田さんが本格的に自転車製作を開始したのは1979年のこと。それまでは堀田商店という屋号で運送業を営んでいました。堀田製作所を始めるきっかけは、息子のためにこしらえた自転車でした。

 「小学生の息子に足でペダルを押すだけで進む三輪自転車を作ったところ、足に障害がある女性がご覧になり、依頼が舞い込みました。その自転車が評判となり、ご用命が増えて本業の合間に作業するのが難しくなったので、社名を変えて自転車製作1本に絞りました」

 堀田さんの出身は茨城県かすみがうら市(旧安飾村)。幼少期から近くにあった板金屋や車屋、自転車屋といった工場を眺めて過ごし、機械いじりやものづくりが好きだったと言います。工業高校を卒業後はオートバイの製造会社に勤め、金属などを加工し、パーツを組み上げるノウハウを身につけます。

 「子どもの頃からものづくりが身近にあったことが、仕事にも生かされています。お客さまに会ったとき『こういう風にすれば乗れる』というアイデアが浮かんでくるんです。どんな人が来ても当人の思いに立って考える、ご本人にとって一番良いものを完成させるという気持ちで1台1台工夫を凝らしています」

 起業当初は在庫もなかったため、妻が毎日のように部品を仕入れに奔走していたそう。受注数が増えるに従い在庫を持てるようになり、時間のロスが減って製作スピードも向上。「今は長年の経験から自信もついたし、製作への知見も深みが増した」と語ります。

#chapter3

コンパクトで扱いやすい「電動ミニリハ」も開発。買い物や通院を軽やかに

 年齢を重ね体力が落ちてきた人のため、堀田さんは「電動ミニリハ」という製品も開発しています。

 「本体全長は119cm、横幅は50cmとコンパクトなサイズで小回りがきき、扱いやすいのが特徴です。ハンドルのグリップを回しモーターを始動させてゆっくり走行できるほか、足で軽くペダルを踏めば自力で走ることもできます」

 電動のみで軽やかに出掛けたり、自走して足踏み運動をしたり、自在に活用できるのが魅力。しっかりと腰を下ろせるように座椅子型のサドルも設置しています。

 「足元が不安になると外出がおっくうになりますが、買い物や通院を自分でできることは行動範囲を広げ、社会と交流する機会にもなります。シニアの皆さんが健やかな心身を保ち、アクティブに暮らす一助になればと願っています」

 試行錯誤を重ねたオリジナルの自転車で、四季の移ろいを感じながら風を切る日常をかなえてきた堀田さん。誰もが自立した人生を送れるよう、自転車をある程度組み立ててベースを用意するなど、生産体制の効率化も検討。次代に向けて、志のある人に自身の意思と技術を引き継ぐことも考えています。

 「足腰を鍛えるため、またリハビリの一環として自転車に乗り、身体機能の維持に努めてほしいですね。無理をする必要はないけれど、自分の体を動かして生きていくことが大切だと思っています。お客さまの理想に近づくため日々研さんを積んでいますので、私たちと一緒に自分も頑張っていこうと前向きになっていただければ幸いです」

(取材年月:2024年12月)

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専門家プロフィール

堀田健一

高齢者、障がい者に合わせた自転車を製作する専門家

堀田健一プロ

自転車製作

堀田製作所

手や足に何らかの障がいを抱えている人や、運動機能が低下した高齢者の生活に役立つよう、個々の特徴に合わせた自転車をオーダーメード。「自分で乗りこなせる自転車が欲しい」という願いをかなえます。

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