人間関係の“ありがた迷惑”をなくすコミュニケーションスキル・「収集」とは?【後編】
株式会社Hitofuriの山田です。
「明日使えるコミュニケーションのヒント」をお届けするTipsシリーズ、今回は『収集』がテーマです。
いきなりですが、こんな経験はありませんか?
部下の田中さんを大きなプロジェクトのリーダーに推薦した。
昇進のチャンスだと思ったのに、彼の表情は曇っている。
『ありがとうございます』と言いながらも、なぜか嬉しそうじゃない。
何が間違っていたのだろう?
今回の「収集」は、このような善意のすれ違いを解消するヒントになるかもしれません。
最後にはセルフコーチングの実践方法もお伝えするので、最後まで読んでいただけるとうれしいです。
相手を理解するために、まずは「収集」してみよう
一般的に「収集」にはこんな意味があります。
1.寄せ集めること。
2.趣味・研究などのために集めること。また、そのもの。コレクション。
私の考える「収集」は、相手に関心を持って人となりを知るためのコミュニケーションです。
この「収集」はコーチングに欠かせない「個別対応(テーラーメイド)」
という手法に深く関わっています。
我々コーチは一律ではなく、目の前の方に合わせて質問や対応をカスタマイズしています。その人専用の言葉だからこそ心に響き、成長を支援できるのです。
そのために「光栄です!」「楽しみです!」といった“よそ行きの言葉”(もちろん本心の可能性もありますが)の奥にある、本音を知る必要があります。
好き嫌い、価値観、信念、夢。
これらの情報を集めることを、私は「収集」と呼んでいます。
「収集」してもすれ違う?ありがた迷惑のメカニズム
他者に関心を持ち、自発的にコミュニケーションを図れる方もいます。
ですが、本当に難しいのは「収集」で得た情報を、適切な“行動”にブラッシュアップすることです。
私たちは誰かに対しても「自分がされたように」したくなるものです。
・「褒めて育ててもらったから自己肯定感が高まった」
→だから自分もそうやって人を育てよう
・「プロジェクトに抜擢してもらったことで、数段飛ばしで成長できた」
→だから自分も部下を推薦しよう
でも、あなたの成功体験が他者の成功体験になるとは限らない。
これが「ありがた迷惑」のメカニズムなんです。
あなたはできている?4つの「収集」ポイント
良かれと思ってやったことが裏目に出るのを避けるには、相手の価値観を見極めることが大切です。
「でも、相手の価値観なんてどうやって知るの?」
そんな方のために4つの「収集」チェック項目を用意してみました。
周囲の人々のこんな情報にアクセスできているか?と日々のコミュニケーションの振り返りに活用してください。
①ビジョン(未来)
・人生で実現したいこと
(理想の人生/憧れる人/5年後のビジョン など)
・仕事を通して実現したいこと
(目指している役職/習得したいスキル など)
この項目は「知った気になっているポイントNo.1」。
キャリアに関する面談や研修を行っている組織ほど、擦り合わせができていると思いこみがちです。人は変わり続けるものなので、定期的に確認しましょう。
②リソース(経験)
・これまでの経験で得たこと
(学生時代に取り組んだこと/前部署で得たスキル/特技/強み など)
ここでいう「特技」や「強み」は本人が認識していることに限定しましょう。
周囲と主観の「強み」のズレが、与えられる仕事とやりたい仕事とのミスマッチを招く恐れがあります。
③タスク(現在)
・現在の状態
悩み/不満/健康状態/注力していること など
成果を切り離し、今の“その人の内面”に目を向けます。
仕事が好調=充実していると決めつけると、その裏にある葛藤には気付けません。
④パーソナル
・仕事以外のトピックス
誕生日/家族構成/趣味/休日の過ごし方/前職を辞めた理由 など
少し聞きにくい話ですが「前職を辞めた理由」は他者理解の大きなヒントです。
辞める決断には、その人の「人生の優先順位」が見えてきます。
この4つのポイントを網羅的に触れられているか振り返ってみましょう。
(私の体感では、後半の「タスク」「パーソナル」は、そもそも聞く必要がないと考えている人が多いように思います。)
これだけの情報は1日で収集できるものではありませんから、常にアンテナを立てておく必要があります。
そして、一度聞いたことはきちんと覚えておく。これも「収集」の一部だと思います。
ちなみに、「収集」で得た情報を生かすコミュニケーションのポイントは、前回のTips「承認」で詳しく解説しています。気になる方はぜひこちらもチェックしてみてください。
人間関係の“ありがた迷惑”をなくすコミュニケーションスキル・
(後編に続きます)



