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DXはあくまで手段。業務効率の先に待つのは人がより人間らしく生き、他者を思いやれる未来

テクノロジーと集合知で時間と心の余裕を作るDXコンサルタント

林大勇

林大勇 はやしだいゆう

#chapter1

コンサルティングを通じて、全社で共通の目的を達成する「人事×DX」をサポート

 「各企業が、デジタル技術による業務改革に取り組んでいますが、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉だけが踊っているように感じます。その理由は、ホームページの制作や会計ツールなどの導入とは異なり、DX化があらゆる部署を巻き込む全社的プロジェクトだからです」

 そう話すのは、中小企業・小規模事業者に向けてDXに関するコンサルティングや、システム開発などを行う「電源カフェ」代表の林大勇さん。
 「部署ごとに役割があり分業していますが、会社の大もとは一つという意識で連携していかないと、結果の伴わないDX化に陥って、システムも使われなくなってしまいます」と指摘します。

 林さんは、かつて1500人規模の大手人材派遣会社で社内のDX推進を担当し、書庫に保管されている書類のデータ化を遂行。さらに、人事の立場であらゆる部署に身を置き、実務を手伝いながら仕事の仕方を一つ一つ吸い上げて整理。現場に則したシステムを構築し、部署間を調整しながら自ら手本を示して実運用へと導きました。

 「実践を通じてノウハウを体得した経験から、人が介在する『人事×DX』を提言しています。多くの人の知見を活用する『集合知』で、共通の目標を達成していくことが重要です」

 またDX化にあたり、組織内の人間関係や利害関係にも注視。ヒアリングを通じてクライアントの潜在的な課題も抽出します。
 「漠然と『会社がうまく回ってない』とか『従業員の働きをもっと良くできないか』というお話を伺う中で、問題の概要がつかめることも強みになっています」

#chapter2

個人に向けた「個」のDX、企業に向けた「集」のDXで時間と心の余裕を作る

 社名の「電源カフェ」は、林さんが運営するサイトやアプリの名称。リモートワークができるカフェを検索するもので、自分が欲しくて作ったそう。

 「今はスマホもパソコンも、たばこでさえも電子デバイス。充電できないと生活がままならない時代。さくさく探せれば、うろうろしなくて済むなと思いました」

 認知が広がるに連れ、多くの人が自分と同じようにストレスを感じていたことに気づき、物事を自分ごと化して、ソリューションを提供する意義を実感したと言います。

 「年間でカフェ利用者は延べ1200万人くらい、月平均で2回は行くらしいんです。例えば駅前で電源のあるカフェを見つけるとなると、5分も15分もかかってしまう。一つ一つは小さな時間ですが合算していくと、国内では1年で約2億4000万時間がカフェ探しに費やされていることになるんです」

 林さんは自身が手掛ける個人向けサービスを「個」のDX、企業に向けたコンサルティングを「集」のDXと表現します。

 「DXによるオートメーション化で時間や労力といった工数が減り、情報も可視化されるので何かを無くしても痕跡が残り、『言った』『言わない』もなくなります。作業の精度も生産性も上がり、重要な企画や新しいタスクにリソースを回せますし、上司の要望や部下の悩みに耳を傾け、自らのキャリア形成について考えるゆとりも生まれます」

 現場レベルから始める草の根DXもBtoBのDXも、「人の時間と心の余裕を作るという意味でどちらも大事」と力を込めます。

#chapter3

DX化の先に見据えるのはクリエイティビティあふれる社会

 多種多様な業種のクライアントを持つ林さん。一部を例に取れば、飲食業や美容業では、予約システムで新規顧客の獲得やSNSなどを通じた顧客との接点づくりをサポート。運輸業や建設業では、許認可証や委託先との契約書をはじめとする書類や勤怠などの管理ツールで煩雑な事務を軽減しました。

 DXを通して集客力の向上や業務の効率化をかなえてきたことから、その先にある効果についても触れます。

 「時間に追われていたり、やることが多過ぎたりすると精神的にひっ迫して、自意識がなくなるといいますか。強迫観念でただ処理するだけになり、日常生活もイライラして周囲とギスギスしませんか? DXによって今まで人間がやっていたことをショートカットすれば、困っている人を助けようとか、会社のために何ができるかとか、他者や自分に目が向くのではないでしょうか」

 林さんは、相手への気配り、心配りが波紋のように広がり、世の中がより良くなる心の動きを「クリエイティビティ(創造性)」という言葉で表します。

 「例えば、公園を作るにしても『隣町にならってブランコとジャングルジムでいいや』ではなく、子どもを楽しませる何か面白い遊具はないかなと検討する。新しいアイデアはもちろん、人への思いやりを持つことで豊かな世界を創造していくことができます」

 DX化で人はもっとクリエイティブになれると語り、「想像力も働かせることで、無用ないさかいを減らせるのでは」との思いも抱きます。

(取材年月:2023年10月)

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林大勇

テクノロジーと集合知で時間と心の余裕を作るDXコンサルタント

林大勇プロ

DXコンサルタント

電源カフェ株式会社

業務のデジタル化、データの整理、業務の可視化と改善による生産性向上のほか、SaaS同士の連携API開発や独自システムの開発やSaaS、クラウドサービスの運用設計などを通して中小企業のDX化を支援する。

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