任意売却の物件は安い!?

山口剛平

山口剛平

テーマ:解説|任意売却に関して

結論から申しますと、任意売却物件だから安いという事は一切ありません。

こんにちは。
任意売却Dr.の山口です。

任意売却の物件だから安いのか?
本日はこのテーマ、というかイメージについて、専門家としてお答えしたいと思います。

任意売却だから安いというのは、結論から言えば、全くの誤解であり、世間の勝手なイメージです。

任意売却というのは、簡単に言えば売主様の住宅ローンの問題が理由で、家を売却をするということなので、不動産つまり物件そのものには何ら問題は無く、ごく一般的な中古不動産と全く同じです。

具体的には、以下のようなお問合せやご質問が多いです。


エンドユーザーのお客様

  • この物件は任意売却ですか?任意売却だとすれば買うと何か問題はありますか?
  • 任意売却の物件を買うことのデメリットはありますか?
  • 任意売却の物件は訳アリ物件ですか?


投資家のお客様

  • 任意売却を扱っていれば安く買える物件ありますか?
  • 任意売却だったら債権者と交渉して値段を叩けますか?(安くさせることは出来ますか?)

任意売却は安いという世間イメージ

任意売却は安いというイメージは年々減ってきておりますが、では何故このようなイメージが定着してしまったのでしょうか?

「任意売却=安い」という嘘のイメージが定着してしまった理由、そして「任意売却=安い=嘘」の理由をそれぞれ見ていきましょう。

まず「任意売却=安い」のイメージの根源は任意売却と競売が同じイメージだからです。

予め付け加えると、任意売却と競売は、これも全く異なる別物ものです。

「競売=安い」は理論上の事実。

不動産の「競売」とは裁判所がオークション形式のような形で不動産を強制的に売却することです。

例えば、住宅ローンを一定期間滞納してしまうと競売にかけられてしまったり、住宅ローンだけではなく他のローンを一定期間滞納したり、マンション管理費を長期間滞納した場合でも、競売にかけられてしまいます。

(例)住宅ローン滞納による競売までの時系列図

図のように、例えば住宅ローンを滞納した場合には、7か月目に債権回収会社や保証会社に移行され、次の3つの選択に迫られます。

  • 残金の一括返済
  • 任意売却による返済
  • 競売による返済


多くの場合、残金の一括返済は不可能です。

任意売却を選択すれば、不動産会社を通じて「一般的な中古不動産」として販売する為に「任意売却=価格が安い」ということはありません。

一方、競売では裁判所を通じてオークションのような仕組みで不動産が競り落とされるのですが、入札する人は実際に不動産を現地確認することは不可能です。
あくまでも、裁判所が事前に調査した資料(通称:三点セット)を見て、いくらで入札をするか判断しなければなりません。その為に、競売では一般的に市場相場のおよそ70~80%程度の価格で落札される事が多いので「競売=安い」というのは理論上の事実なのです。

債権回収会社や保証会社も市場価格での販売を指示する

(例)債権回収会社や保証会社で物件査定会議のイメージ図

さて次に「任意売却が安い=嘘」の理由に、不動産の販売価格は債権回収会社や保証会社で取り決めるという事実があります。

正に私の経験談・・・
既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私自身も元々は、大手債権回収会社の職員として任意売却の審査や競売の手続きなどを担っておりました。
上記図のように、現場では毎日毎日毎日毎日・・・任意売却の物件査定や審査に追われる日々でした。

全国の膨大な不動産データを保有

「少しでも高く売って住宅ローンを回収したい」と債権回収会社や保証会社の人は考えている、といった間違った印象を持っている不動産会社や任意売却専門業者をよく見かけますが、まず大前提として、これも全くの嘘です!

債権回収会社や保証会社では、住宅ローン契約者の方が任意売却して住宅ローンを返済をするという決断に対し、ご契約者の方が、例えば悪質な不動産会社などに騙されてしまって不利益となってしまわないように、全国の膨大な不動産データを駆使して適正な不動産価格・価値を見極めて販売価格を指示しているのです。

もちろんその結果、会社としても損のない住宅ローン回収を実現できるのですが、それはハッキリ言って2の次に考えることなのです。

適正な不動産価格で売却が実現できれば、ご契約者の方のより良い再スタートに繋がる。
これが債権回収会社や保証会社による最優先事項なのです。

「任意売却が安い=嘘」の大きな理由、ご理解頂けましたでしょうか。

逆に、高く売れないの!?


余談ですが、ここまでのお話しをすると「では逆に、高く売れないのか?」というご質問を頂くケースもあります。
結論から申しますと、それも不可能です。

(例)エンドユーザー様と銀行員のイメージ図

上記図は、これから不動産を購入しようと検討している「エンドユーザー様」のイメージと、住宅ローンの審査を行う銀行員のイメージです。

「高く売る=不可能」の理由は、実はこちらのイメージ図の通りなのです。

エンドユーザー様だって市場調査をしている

これから、何千万円もしくは億もするマイホームを手に入れようとする時、当たり前だと思いますが沢山の不動産サイトを見比べて吟味します。

  • ご自身の予算
  • 住みたいエリア
  • 希望の広さ・間取り
  • 築年数
  • 駅からの距離

suumo、athome、HOME’S など様々な不動産サイトで探したり調べたり、あちこちの不動産会社に足を運んでみたり、不動産を購入する時には沢山の情報を収集した上で物件を決めますので、昔とは違ってエンドユーザー様も市場相場を概ね把握いたします。
つまり市場相場よりも高い価格で販売しても誰も買ってくれないのです。

銀行員だって地域の膨大な不動産データを保有する

次に、住宅ローンを融資する側の銀行員だって同じです。

(例)エリア相場3,000万円の中古マンション

  • 2,500万円の融資:◎
  • 2,750万円の融資:◎
  • 3,000万円の融資:〇
  • 3,500万円の融資:△
  • 4,000万円の融資:×


例えば、3,000万円しか価値のない中古マンションの購入にあたって「4,000万円の住宅ローンを貸してください」と言われても、お断りしたくなりますよね。
万が一、相場以上の融資をして、先々で返済困難になってしまった場合、任意売却しても回収率が下がるし、ましてや競売になってしまった場合には、多くの損失を生みかねない為です。

高く売りたいという気持ちは非常に理解できますが、こういった2つの理由から、現実的には不動産を相場以上の価格で売却することは困難なのです。

適正な不動産価値・価格を見極める!
これが非常に大切だということも、是非覚えておいてください。


いかがでしたか!
任意売却は、家(建物や土地)に何らか問題がある、というイメージは全くの嘘で関係なくあくまでも物件は、ごく一般的な中古不動産です。その為「任意売却=安い」は間違ったイメージに過ぎず、任意売却であっても不動産価値は一般的な中古不動産と同じであるということをご理解頂けたのではないかと思います。

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山口剛平
専門家

山口剛平(住宅ローン返済・滞納に関するコンサルタント)

株式会社クラフトレジデンス

親族の住宅ローン返済・滞納に伴う任意売却、任意売却専門業者および大手債権回収会社での勤務という、任意売却に関わる3者の立場を全て経験。豊富な知識とノウハウを元に、最適なソリューションを提供する。

山口剛平プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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