【システム開発・アプリ開発】生成AIを活用するために知っておくべきこととは?【前提編】
【システム開発・アプリ開発】生成AIを活用するために知っておくべきこととは?【前提編】という投稿でご紹介した、発注者目線によるシステムやアプリ開発のプロセスで、生成AIを有効活用する方法を探っていく。今回のテーマはこちらです。
システム開発プロセスのステップ2「ビジョンの設定とゴールの定義」2-1 ビジョンの共有をテーマに、ChatGPTで何ができるかを探っていきます。
単にビジョンと表現してしまうと、企業が将来的に目指すゴールや理想像と考えるでしょう。ただここではシステム開発に範囲を限定し、経営層や現場とシステム導入の目的を共有することと受け止めてください。
ではシステム導入のビジョンを伝える方法はどのようにしますか?
それにはシステム企画書が最適です!そしてそのシステム企画書は読み手によって内容を変えるべきです。システム導入において、その導入の目的を経営者・現場担当者・ITベンダーなど、様々な関係者に企画書を共有することになります。
でも皆さんはこう思ったことはありませんか?
経営者に説明する時、技術的な話をすると興味を持ってもらえない。現場の担当者には、経営戦略の話をしてもピンと来ていない。ITベンダーに企画書を見せても、伝えたいことがズレてしまう。
そうです。システムの企画書は読み手によって内容を変えるのが正解なんです。そしてこれを生成AIを活用することで簡単に作り分けることができます!
本投稿では、生成AIを活用してシステム企画書を作り分ける方法を解説しておりますので、ぜひ参考にしてみてください!
※このコラムの内容は動画で公開しています。Youtube版はこちらをご覧ください。
相手によってシステム企画書の内容を変える理由
なぜ、読み手によってシステム企画書の内容を変えるべきなのか。それは相手によって関心事や視点が違うからです。例えばあなたが今、新しいシステムを導入しようとしているとします。その時、経営者・現場担当者・ITベンダーの3人に同じシステム企画書で説明した場合、一体どうなるでしょう。
その内容次第ですが、経営者は、「なぜこのシステムが必要なのか?」ということが伝わらず導入に前向きにならない。現場担当者は「このシステムで何が変わるのか?」それが分からず導入に抵抗感を持つ。ITベンダーは「要件が曖昧すぎて…」と適切な提案ができない。それぞれそのように考えられるかもしれません。
つまり相手ごとに伝えるべき情報を整理してシステム企画書の内容を最適化する必要があるのです。例えばその相手はどのような関心事があるのでしょうか。経営者であれば、事業戦略との整合性・投資対効果・競争優位性の向上かもしれません。現場担当者の関心事は、業務負担の軽減・システムの使いやすさ・既存の業務フローとの適合等々。ITベンダーからすると、要件は明確か・開発予算・スケジュールの妥当性、ということかもしれません。このように伝えるべき相手の立場によって、関心事というのは変わってくるわけです。
相手による企画書の違い
次に、システム企画書の違いを見ていきましょう。まずは伝えるべき相手によって目的自体が変わってきます。
相手別に見る目的の違い
- 経営者:経営判断を促す
- 現場担当者:業務の改善点を理解し、導入への協力を得る
- ITベンダー:システムの要件を伝え適切な提案を得る
では具体的に、相手別にどのような章立てになるのかということの例を挙げてみます。
経営者 | 現場担当者 | ITベンダー | |
---|---|---|---|
1 | はじめに(企画の背景) | はじめに(システム導入の背景) | はじめに(企画の背景と目的) |
2 | 企画の目的と期待効果 | 期待される効果と業務改善点 | システムの全体概要 |
3 | システムの全体概要 | システム概要と主な機能 | 機能要件 |
4 | システム導入による経営効果 | システムの使い方(操作方法と画面イメージ) | 非機能要件 |
5 | 導入スケジュールと実施計画 | 変更点と現場への影響 | インフラ・システム構成 |
6 | 競合との差別化ポイント | サポート体制 | 提案・見積依頼の範囲 |
7 | リスクとその対策 | 導入スケジュール | 見積の前提条件 |
8 | 提出依頼事項 | ||
9 | 契約条件(概略)※RFP形式 |
先述した通り、相手によって伝えるべき目的が変わるので、その目的を達成するために必要であろう章立てを挙げてみました。
生成AIを活用して最適なシステム企画書を作成
経営者向けに作成したシステム企画書を現場相手に書き換える、あるいはITベンダー向けに書き換えるというのは大変な作業です。そこで活用すべきなのが生成AIです。
生成AIを活用するメリットは既にご存知かもしれませんが、次のようなメリットがあります。
- 一つのデータから相手に応じた企画書を自動生成できる
- 相手によって言葉のトーンを調整して適切な表現に書き換えられる
- 要点を自動で整理して、簡潔な資料を作れる
今回は、以前こちらの投稿(→「【システム企画書を作る Part2】」)で使用したシステムの企画書を利用して、ChatGPTに相手別のシステム企画書の内容を考えてもらおうと思います。
経営者向けのシステム企画書
このシステムの企画書というものは、システムと言いつつアプリ開発という位置付けで作成しています。元々の企画書は経営者を意識して作成したものです。あえて企画書を添付して、以下のように指示してみました。
<ChatGPTとの応答>
上村「このシステム企画書を経営者向けに考えてまとめてください」
ChatGPT「経営者向けシステム企画原案なまとめ
1.企画の背景と目的
- 背景:コロナ5類移行後、ショッピングセンターの売上が20%増加。来館者増加に伴い、フードコートの手続きが重要となり、顧客満足度の低下が課題。
- 目的:中期計画「VISION2025」の目標である顧客満足度10ポイント向上を達成するため、第一弾としてフードコート座席問題の解決を目指す。
2.課題
- フードコートの座席不足による顧客満足度の低下
- 忙しい時の席探しや不公平感がストレス軽減
- 小さな子供連れの家族の不満が特に高い(9割以上)
3.解決策
- 座席順番待ちアプリを開発
・横浜店で実証実験(3割の席を子連れ専用予約席に)
・アプリで予約・管理(最大40分利用可能)
・いたずら防止策(ショッピングセンター内で登録制限)
- 順番待ちのお客様へクーポン発行
・10分以上待つ場合、当日限定のショップクーポンを発行し、一度を有効活用
4.期待される効果
- 無駄なストレスの軽減&顧客の購買意欲向上
- フードコート満足度を5.9から8以上に
- マーケティングデータの活用(子供の情報をテナント向けに活かす)
5.機能概要
いいえ | 機能名 | 概要 |
---|---|---|
1 | 会員登録 | ユーザー登録(ニックネーム可、お子様情報必須) |
2 | 座席順番待ち登録 | アプリで座席予約 |
3 | クーポン機能 | 順番待ちクーポン発行 |
4 | 管理機能 | 待ち状況把握・通知通知・座席数管理など |
6.プロジェクト体制
- プロジェクト責任者:マーケティング部長
- 開発主導:マーケティング部
- 運用担当:フードコート統括部
7.スケジュール
- 2024年2月〜3月:開発委託先選定・決定
- 4月〜7月:要件定義・設計・開発
- 8月〜10月:テスト・受入検証
- 11月:横浜店でリリース→全店展開予定
8.計画
- 初期開発費:3,000万円(人件費除く)
- 運用コスト:月額60万円
以上の内容から、「なぜやるのか」「何をするのか」「どんな成果が期待できるのか」をシンプルに伝えます。
追加したいポイントがあれば教えてください!」
この資料は最初から経営者向けを意識して作ったものなので、内容は概ね添付した企画書通りのものが返ってきました。ただ強いて申し上げるならば、添付した企画書のスケジュールをうまい具合に解釈してくれたようにも見受けられますが、実はこのスケジュールの内容が間違っていました。しかしそのような点は自分で修正すれば良いという範囲です。
現場担当者向けのシステム企画書
次に、「前の企画書を現場担当者向けにわかりやすく書いてください」と指示を出しました。その結果がこちらです。
<ChatGPTとの応答>
ChatGPT「次に、現場担当者に向けてわかりやすく書き直します。
現場の視点で「なぜこのシステムが導入されるのか」「自分たちの業務にどう影響するのか」「どう使えばいいのか」を明確に伝える形にします。
フードコート座席順番待ちアプリ導入のご案内
1.目的と背景
→なぜこのシステムを導入するのか?
最近、お客様がフードコートで**「席が無い」「席を探すのが大変」「子供連れで待つのが辛い」**という声が増えています。
特に、お昼時には多くの人が空席を探して歩き回り、満足度が下がっている状況です。
ところで、**「座席をスマホで予約できるアプリ」**をし、お客様の快適なストレスを減らすことになりました。
2.システムの概要
→どういうシステムなのか?
フードコートの座席をスマートフォンで予約し、順番待ちができるアプリです。
【主な仕組み】
1.お客様がアプリで座席の順番待ちを登録
2.空席ができたら通知が届きます
3.順番が来たら案内され、指定席に座れる
4.長時間の席占有を防ぐため、利用時間は最大40分
【特別な機能】
・子供連れ専用席を3割導入(実証実験として横浜店で実施)
・10分間の一斉でクーポンを配布し、ショッピングを楽しめる仕組み
3.現場の業務への影響
→どう変わるの?
- お客様対応がスムーズに!
→「どこに座れるの?」と聞こえる回数が減り、案内の手間が軽減されます。
- →事前に順番が
わかるため、「並ぶが長い!」と怒るお客様が少なくなります。
- 席取りの問題が解決しない!
→予約制になることで「後から来た人が先に席に着く」問題が解消されます。
4.操作方法と管理方法
→どうやって使うのか?
現場の担当者は管理画面を使って、座席の予約状況を把握し、必要に応じてお客様へご案内します。
【管理者の主な操作】
・座席の待機状況を即座に確認できる
・お客様への通知を手動で送信することも可能
・順番待ち可能な座席数を変更することができる
→何か時に操作が必要ですか?
- 「順番待ちのお客様をお呼びします」
- 「長時間席を離れているお客様を確認する」
- 「特別対応(例:ベビーカー対応が必要なお客様)」
5.サポート体制とお問い合わせ先
→困ったときは?
アプリの導入後、実際の操作研修やマニュアルをご用意しています。また、システムに関するお問い合わせは、専用のサポート窓口を設置していますので、トラブル時はすぐにご相談いただけます!
【お問い合わせ先】
サポート窓口:○○○-○○○-○○○
メール:support@○○○.jp
6.スケジュール(導入までの流れ)
時期 | 実施内容 |
---|---|
2〜3月 | システムの最終調整・運用準備 |
4〜7月 | 社内テスト・運用研修 |
8〜10月 | 横浜店での実証実験(導入テスト) |
まとめ
このシステムを導入することで、
・お客様の座席探しのストレスが軽減します!
・現場の案内業務がスムーズになります!
・クレームが減り、フードコートの満足度が向上!
ぜひ、システム導入にご協力お願いいたします!
詳しい説明会も予定しておりますので、質問がありましたらご遠慮なくお知らせください。
これなら現場の方にも「なぜやるのか」「どう業務に影響するのか」が伝わりやすいかと思います。
追加したいポイントがあれば教えてください!」
まず気がつくのは、先ほどの経営者向けと比較すると表現のトーンが変わっています。そして具体的にどのようなシステムなのか、主な仕組みが分かりやすく記載されています。現場の業務へどう影響されるのか、操作方法、サポート体制、そしてまとめも変わっています。
ITベンダー向けのシステム企画書
さらに今度は伝えるべき相手をITベンダーに仮定してみます。ITベンダー向けのシステム企画書・見積もり依頼書やRFPという表現に変わるかと思います。
<ChatGPTとの応答>
上村「前の企画書をITベンダー向けにわかりやすく書いてください」
ChatGPT「ITベンダー向けシステム企画書(見積依頼書)
「フードコート座席順番待ちアプリ」開発プロジェクト
1.プロジェクト概要
→目的:顧客満足度向上のための座席予約・順番待ちアプリ開発
- フードコートのくつろぎと顧客満足度向上を目的としています。
- アプリお子様座席の順番待ち登録を可能にし、空席時に通知する仕組みを導入します。
- 横浜店での実証実験後、全国展開を予定。
→開発の背景
- フードコートの座席不足による不満が増加(特に子供連れの不満が9割超)。
- お昼の席探しの混乱と不公平感を解消したい。
- どこのフードコート満足度(5.9ポイント)を8ポイント以上に向上させます。
2.システム要件(概要)
→機能要件(ユーザー向け)
いいえ | 機能名 | 概要 |
---|---|---|
1 | 会員登録 | ユーザー登録(ニックネーム可、お子様情報必須) |
2 | 座席順番待ち登録 | アプリで座席の順番待ちを登録 |
3 | クーポン機能 | 順番が一定時間以上になると、店舗クーポンを自動配布 |
4 | プッシュ通知 | 順番が来たらアプリ通知 |
→機能要件(管理者向け)
いいえ | 機能名 | 概要 |
---|---|---|
5 | 会員登録 | 会員情報の検索・編集 |
6 | 座席待ち状況管理 | 座席の待機状況を入って確認 |
7 | お呼び出し | 空予定の数分前に意見席通知を送信 |
8 | 座席設定管理 | 順番待ち可能な座席数の調整 |
9 | クーポン管理 | 発行するクーポンの内容・適用条件管理 |
→非機能要件
- 同時接続ユーザー数:500〜1000人を想定
- 対応デバイス:iOS・Android(ネイティブアプリまたはPWA)
- セキュリティ:会員情報の暗号化、認証機能(SNS・メール)
- 可用性:99.9%以上の稼働率を目標
3.技術要件(希望)
- サーバー環境:AWS/GCP/Azureいつか
- 開発言語:Java/Koklin/Swift/Flutter/React Nativeなど提案可能
- データベース:My SQL/PostgreSQLなど提案可能
- APL設計:REST/GraphQLいつか
4.開発スコープと役割分担
→ITベンダーに求める業務範囲
・アプリ開発(iOS・Android対応)
・管理者向けWebシステム
・クラウド基盤設計・構築
・UI/UX設計・デザイン
・システムテスト・ユーザーテスト
・運用設計(ログ管理・障害)対応フロー設計)
→クライアント側の役割(当社)
・ビジネス要件定義・仕様策定
・データ連携仕様の整理
・ユーザー受入テスト(UAT)
5.提案・見積依頼の内容
→ITベンダーに提案を求める資料
・見積書(詳細な内訳を記載)
・開発スケジュール案(マイルストーン含む)
・技術提案(開発言語・フレームワーク・インフラ構成案)
・開発体制(担当者・リソース配分) )
→提出期限:2024年3月○日まで
→対話応答期間:2024年2月〜3月(オンラインミーティング可)
6.開発スケジュール(予定)
時期 | タスク |
---|---|
2〜3月 | 開発委託先選定・契約締結 |
4〜6月 | 要件 定義・設計 |
7〜9月 | アプリ開発・テスト |
10月 | 受入れテスト・修正対応 |
11月 | 横浜店での実証実験開始 |
12月 | 全国展開(段階導入) |
7.予算・契約条件
・初期開発費:3,000万円(人件費除く)
・運用コスト:月額60万円(サーバー・保守・監視含む)
・契約形態:準委任契約または請負契約(応相談)
・知的財産権:原則当社全員(共同開発も検討可)
8.お問い合わせ・担当窓口
株式会社HMマーケティング部
Email:Procurement @hm -corp.jp
TEL:03-XXXX-XXXX
担当者:鈴木一郎(プロジェクトマネージャー)
まとめ
・フードコートの気軽を解消し、顧客満足度を向上させるアプリを開発
・横浜店で実証実験後、全国展開を予定
・ITベンダーには、アプリ・管理システムの開発・運用設計を依頼
・3,000万円の予算で2024年11月リリースを目指す
ぜひ、貴社のご提案をお待ちしております!
この構成なら、ITベンダーが必要な情報をスムーズに把握し、正確な見積もりができるようになります。
追加したいポイントや強調したいポイントがあれば教えてください!」
またこちらも、先ほどの現場向けのトーンとは違ったトーンで書かれていることが分かります。
このように、一つのシステム企画書から目的を共有すべき相手ごとに最適な企画書案を生成AIが作成してくます。
まとめ
今回はシステム企画書を相手によって内容を変えるべき理由、そして生成AIをどのように有効活用するかということについて解説をしました。
もし自社のシステム企画書をもっと効果的に作成したい!と思われた方は、是非ChatGPTなどの生成AIを試してみてはいかがでしょうか。