DXと働き方改革の関係性とは?DXで実現できた推進事例をもとに徹底解説
世界的に有名な大企業「マッキンゼー」。そのマッキンゼーが公表したDXに関するレポート「デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ」をご存知でしょうか?本レポートには、DXを推進する上で非常に興味深い内容がいくつも記載されています。
そこで今回は、マッキンゼーが推測する日本のDXが進まない理由、DXを推進する7つの取り組みを解説します。最後までご覧になることで、マッキンゼーが考えるDX推進に重要となる鍵を理解できるでしょう。
マッキンゼーという企業
「マッキンゼー」という愛称で広く知れ渡っている有名企業。このマッキンゼーの正式名称は「マッキンゼー・アンド・カンパニー」といいます。外資系のコンサルティング会社であり、1926年にシカゴ大学経営学部教授の「ジェームズ・O・マッキンゼー」氏によって設立されました。
日本支社の設立日は1971年で、多国籍企業へのコンサルティングやマーケティング、サプライチェーンなど、あらゆる職種・機能をサポートしています。また、マッキンゼー出身の多くの人材が起業で成功していることから、非常に優秀な人材が集まるコンサルティング会社だといわれています。
マッキンゼーが推測する日本のDXが進まない理由
マッキンゼーが公開した「デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ」によると、日本のDXが進まない理由としては以下の3つが考えられています。DXをこれから推進する企業にとっては非常に参考になるはずです。
社内におけるデジタル人材の不足
デジタル変革が進まない理由の1つ目は、社内におけるデジタル人材の不足だとされています。DXという高度で大規模なプロジェクトには、最新テクノロジーを扱うさまざまなデジタル人材が必要です。
新たなデジタルサービスを開発するときには、ミニCEOとして事業成果や開発するサービス・プロダクトに責任を持つ「プロダクトオーナー」、サービス・プロダクトの開発を担う「アジャイルエンジニア」、データ活用における高度な分析を行う「データサイエンティスト」などが必要となります。
しかし、多くの日本企業は高度なデジタル人材を確保できていません。また、これまでの日本企業は社内のITエンジニアを外部サービスに依存していたため、DXを推進できる人材が社内にいないケースがほとんどです。
さらに、企業によってはITシステムの業務要件の定義さえも外部に依存しています。これらの理由から、日本企業の多くがDXを推進できていません。
社長の年齢と在任期間
社長の年齢と在任期間も大きな課題となっています。帝国データバンクの「社長の平均年齢の推移」によると、2020年時点における日本社長の平均年齢は59.9歳であり、1990年以降一貫して上がり続けています。
また、ニッセイ基礎研究所が2019年に発行した「日米CEOの企業価値創造比較と後継者計 画」では、内部昇進するCEOの就任年齢と在任期間を日米間で比較すると、日本は米国に比べて平均年齢が高く、在任期間が非常に少ないことが明らかになりました。
つまり、他国と比べて日本社長の年齢と在任期間が短いことから、デジタル技術を活用して新たな成長に向けた変革を考えようとしても、プロジェクトの実現に踏み出せないケースが多い傾向にあります。
外部の人材が活躍しにくい組織文化
日本のDXが進まない理由3つ目は、外部の人材が活躍しにくい組織文化であるためです。日本企業は働き方の多様化を少しずつ進めていますが、依然として外部の人材の流動性は低く、年功序列といった考え方が残っています。
また、これまでの会社の成功体験が共通言語として語られることが多いほか、社内にデジタル人材が少ないため、会社全体のデジタルリテラシーが低い傾向にあります。
このような環境では外部から優秀なデジタル人材を確保できたとしても、現場で活躍してもらうのは非常に難しいとされます。結果として、自身の裁量で行える範囲だけをデジタル化している企業が多いのが現状です。
マッキンゼーが考えるDXを推進する7つの取り組み
ここまで、マッキンゼーが推測する日本のDXが進まない理由を解説しました。続いて、マッキンゼーが考える7つの取り組みについてみていきましょう。「日本企業はどう変わるべきか?」という具体的な案を定義しているため、DX推進で悩んでいる企業はぜひ確認してみてください。
取り組み①:包括的なデジタル変革
企業のDX推進には、組織の構造変革におけるデジタル活用が必要だとされます。また、デジタルを軸にした戦略と根本的な組織変革の推進も求められます。
取り組み②:顧客体験のデジタル化
デジタル活用による顧客の行動・思考・感情の見える化、再構築が重要だとされます。そのほか、デジタルマーケティングやパーソナライゼーション(顧客に合わせた価値提供)を通じた顧客の囲い込みも必要です。
取り組み③:オペレーションの弾力性
DXを推進する上では、オペレーションでのアナリティクス活用による弾力性の強化が求められます。アナリティクス活用の具体例としては、予防の保全や生産性の改善などがあげられます。また、バックオフィスのプロセスの最適化・自動化も重要です。
取り組み④:新規ビジネス構築
デジタル技術を活用した新規ビジネスの構築がキーポイントとなります。また、新規顧客のセグメントの開拓も重要です。
取り組み⑤:スキル再教育と組織能力構築
DXを推進する上で必要となる組織能力の構築や、そのための社内人材のスキル再教育が必要不可欠となります。また、優秀なデジタル人材に活躍してもらうための制度や仕組みづくりも大切です。
取り組み⑥:組織全体の敏捷性
アジャイルオペレーティングモデルの導入や、必要な仕組みの構築がDX推進にとって重要です。オペレーティングモデルとは、ターゲット事業における現在の運営状況を明確化し、将来どのように変化するのかを示す枠組みのことです。
なお、アジャイルは「すばやい」「俊敏な」という意味を持つため、アジャイルオペレーティングモデルは、スピード感を持ってターゲット事業の運営状況を明確にする枠組みを表します。
取り組み⑦:コアテクノロジーの近代化
DXを推進する際には、コアテクノロジーの近代化が必要となります。具体的には、クラウド・API技術の活用、ITコストの最適化、データアーキテクチャーやデータ変革の実行などがあげられます。
マッキンゼーが唱える日本企業がDXを成功させるための鍵
マッキンゼーが考える7つの取り組みについては理解できたでしょうか?最後に、日本企業がDXを成功させるための鍵をお話します。
日本企業がDXを成功させるためには、海外の成功事例などをそのまま当てはめてもうまくいきません。そのためマッキンゼーでは、日本企業がいくつもの課題を乗り越えて成功に近づく4つの鍵を特定しています。
経営トップを巻き込んだDXの着火
DXを成功させるための鍵1つ目は、経営トップを巻き込んだDXの着火です。企業を大きく変えるためには、ヒト・モノ・カネといったように大胆な投資が必要となります。
こうした投資の決定権を握るのは経営トップであるため、経営トップを巻き込んでデジタル変革に火をつける必要があります。また、経営トップ自らがDXに対して一歩踏み出すことも重要です。
事業ドリブンでのインパクトを意識した取り組みの設計
事業ドリブンでのインパクトを意識した取り組みの設計もキーポイントとなります。ドリブンとは、仕事上で入手できるデータをもとにし、経営戦略の策定や人事配置に関する意思決定を行うことです。
マッキンゼーが考えるDXは、「事業そのものを大きく変えるもの」として位置づけています。そのためのインパクトをもたらす要素としては、下記の3つがあげられます。
- 事業におけるあらゆるオペレーションの徹底的な効率化
- 顧客体験の再定義
- デジタル新規事業の創出
そして、「どういった事業インパクトを狙ったDXにしていくのか」「ある領域に注力した取り組みにしていくのか」など、それら企業の置かれている状況を踏まえて定義していくことが重要となります。
デジタル組織能力の構築
DXを成功させるための3つ目の鍵は、デジタル組織能力の構築です。持続的に企業のDXを進めるためには、従来のような「ITベンダーに丸投げ」の状態ではなく、能力を有したデジタル人材が社内に必要となります。
しかし、先ほどお話したようにデジタル人材は不足しています。そこで重要となるのが社員の再教育です。現場の1人ひとりが新しい能力を身につけ、新しいプロセスで業務を遂行することが重要だとされます。
また、「消費者にとって何をすべきか」というアイデアが自然に湧き上がってくる環境を構築する必要があります。
文化の醸成とチェンジマネジメント
DXを成功させるための4つ目の鍵として、文化の醸成とチェンジマネジメントがあげられます。DXという大規模なプロジェクトを進行する上では、組織の抵抗が顕著になりやすいです。また、「自分には関係ない」という考えを持った評論家層も一定数現れます。
実は、DXの80%以上がこれら抵抗勢力や評論家層によって潰されてしまうため、関係者の協力を得られる環境をどう作れるのかが、DXの成否を握るといわれています。
そのことから、第一弾試作の選び方や人選、成功の定義については十分に議論を行い、万全の状態でDX推進に望むことをおすすめします。また、慣性によって元の環境に戻ってしまわないように、変革状況の見える化や社員に変化を感じてもらう演出づくりも重要です。
まとめ
本投稿では、マッキンゼーが推測する日本のDXが進まない理由、DXを推進する7つの取り組みを解説しました。
外資系のコンサルティング会社で有名なマッキンゼーが公表した「デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ」では、日本の立ち位置や日本企業がDXに遅れている理由を提言しています。
また、日本企業がDX推進に向けて取り組むべきことや、成功するための鍵なども記載しています。これから企業のDXを推進する方は、ぜひ本記事で解説したマッキンゼーの考え方を参考にしてみてください。
なお、日本や海外のDX推進事例や成功ノウハウを知りたい方は「日本・海外におけるDX成功事例を8つ紹介!失敗しないためのノウハウも公開」をご覧ください。安全にDXを推進するためのヒントが得られるはずです。